「カメルーン戦は前半、攻守にバランスを欠いていた。前線とバックラインが間延びし、相手にペースを渡すことになった。コートジボワール戦も、後半はやや改善したが、前半は中盤の守りが不安定で、主導権を渡していた。あらためて、『攻撃の自由は、守備の安定が基礎にある』という基本を忘れてほしくはない」

 スペインの慧眼、ミケル・エチャリは、日本代表のカメルーン戦、コートジボワール戦を総括して語っている。

 エチャリはこれまで、ホセバ・エチェベリア、フランシスコ・デ・ペドロ、シャビ・アロンソなど名選手の発掘、育成、指導に関わってきた。選手を見る目とアドバイスには定評がある。久保建英の所属するビジャレアルのウナイ・エメリも、レアル・ソシエダB時代に選手として指導していた。


カメルーン戦は後半20分から途中出場、コートジボワール戦は先発し後半16分までプレーした久保建英

 では、エチャリは今回の日本代表の選手たちをどのように見たのか。2試合を分析し、気になった6人をピックアップした。ポジティブな面もあれば、ネガティブな面もある。サッカーだから当然だ。改善や成長につながる提言となれば――それがエチャリの望みである。

原口元気(ハノーファー)

「ロシアワールドカップでも証明したように、攻撃センスに長けた選手だ。2列目からゴール前に入っていくプレーは特筆に値する。一方で、守備のクオリティも高いのが特長だ。攻守両面で能力に恵まれた選手だけに、ウィングバックもひとつの選択肢だろう。体力的な強さもあって、球際で戦い、ボールも奪い返せる。低い位置から飛び出す馬力も持っている。

 しかし、カメルーン戦の後半のウィングバック起用のように、ディフェンスに専念させる状態にするべきではない。宝の持ち腐れだ。ゴールに近いポジションでプレーすることによって、より効果的な貢献ができる。

 コートジボワール戦は、後半途中からの出場で左サイドアタッカーとしてプレー。持ち前の攻守の強度によって、サイドを支配した。見事に、チーム全体を改善させた。個人的に好みの選手である」

南野拓実(リバプール)

「シューターとしての才能に恵まれ、トップに近い位置でプレーすることで存分に力を発揮することができる。

 カメルーン戦でも、前半は酒井宏樹の折り返しをシュートに持ち込むなど、非凡さを見せている。終了間際にも、エリア内で強引にシュートを打った。しかし後半に中盤での仕事が多くなって、怖さがやや半減していた。プレーメイクする仕事よりも、ゴールに近いところにいるべき選手だ。

 コートジボワール戦は、後半途中から左サイド、トップでプレー。ゴール近くでのプレーの質はやはり高い。鎌田大地とのコンビネーションも抜群によかった」

◆「ミケル・エチャリのコートジボワール戦分析」>>

吉田麻也(サンプドリア)

「2試合とも、センターバックとしての安定感が出ていた。

 カメルーン戦は、冨安健洋と組んだセンターバックで、前半は慎重にプレーしていた。堂安律に送ったロングパスは際立っていた。前半22分には、右CKからポジションを取って、技術的に高いヘディングシュートを放ち、GKを脅かしている。守りのCKでも際どいボールをクリアするなど、セットプレーにおいてキーマンと言えるだろう。

 コートジボワール戦も、前半はチームが劣勢の中、堅固な対応を見せていた。2010年から彼を見てきたが、センターバックとして成熟したと言える。高さでも強さを見せつけ、勝利の殊勲者のひとりだろう」

柴崎岳(レガネス)

「ボランチに入ったが、ポジショニングは適切だっただろうか。

 カメルーン戦は、前線とバックラインが間延び、バランスを欠いた。後半には、自陣内でボールを奪われ、決定機を作られてしまった。ニアサイドを狙った強烈なシュートはGK権田修一が防いだ。左利きの中山雄太と組んだにもかかわらず、左のボランチを担当していたが、立ち位置が逆だった。

 コートジボワール戦は、中盤で遠藤航とのコンビだった。前半はポジションが前過ぎて、攻守のバランスを悪くしていた。後半、横並びになってカバーする態勢を作り、やや改善したが、柴崎自身は自陣で不用意なバックパスを相手に奪われ、シュートに持ち込まれる場面もあった。最後はすばらしいFKから植田直通の決勝点をアシストしている。

 前のポジションで、クリエイティブな能力を発揮できるMFだが......」

久保建英(ビジャレアル)

「カメルーン戦は、後半20分に堂安律との交代出場だった。短い時間だったが、多くのプレーに関与し、攻め手になっていた。一方で不用意にボールを失うこともあった。左サイドの突破から送ったクロスも合わず、伊東純也から受けたパスでオフサイドにかかる場面があった。最後は左足でFKを直接狙い、GKのセービングを引き出している。

 コートジボワール戦は、左サイドで先発出場。中寄りにポジションをとることが多く、ボールを失う危うさがあった。鈴木武蔵に折り返したクロスは目を引いたが、惜しくも合っていない」

鎌田大地(フランクフルト)

「コートジボワール戦の後半はベストプレーヤーだった。右サイドの崩しからボールを受け、エリア内に侵入するも、2度のシュートチャンスは決まらなかった。しかし、適時に中盤に落ち、ボランチを的確にサポート。ボランチと前線のふたつのラインをつなげる仕事のクオリティは高かった。卓越した技術でコンビネーションの核となって、攻撃の渦を生み出していた」