東野圭吾原作のラブミステリー「危険なビーナス」。主人公の獣医師・伯朗(妻夫木聡)のもとに、「弟の妻」を名乗る謎の美女・楓(吉高由里子)が現れ、弟・明人(染谷将太)が失踪したことを聞かされる……。どうやら、母が嫁いだ「八神家」の面々が失踪に関わっているのではないかという。複雑な矢神家の面々がつぎつぎと登場し、頭が混乱してしまった人も多いのでは?そこで今回は、まずはややこしい家系図を簡単に説明することから始めてみます。

新たにスタートした日曜劇場は、主演に妻夫木聡、ヒロインに吉高由里子を据えた東野圭吾原作の「危険なビーナス」。「半沢直樹」の後釜ということで注目されたが、そこは日曜劇場、あれだけアクの強いドラマの後にしっかりと地に足のついたドラマを持ってきた。

イケメンなのになんか頼りなく見せる妻夫木聡、キャピってるのにちょっと影をチラつかせる吉高由里子などなど、半沢ほど派手ではないが、ひとつ引っ掛かりを持ったキャラクターの構成も楽しい。演出も展開も落ち着いて横綱相撲といった印象だ。

ややこしい家系図を簡単に説明します

連ドラの初回放送といったら、早めに何か大きなインパクトを与えて視聴者の心を掴みたいところ、だが、このドラマはかなりのスロースタートだった。原作が遺産相続をめぐるミステリーのため、人間関係や人物構成が複雑で説明しなければならない部分がちょっと多いからだ。

まず、物語の主軸となる名家・矢神家の家系図がなかなかに難解だ。故人の矢神康之介(栗田芳宏)には、前妻に長男の康治(栗原英雄)と長女の波恵(戸田恵子)、後妻に次女の祥子(安蘭けい)と矢神牧雄(池内万作)、養子に佐代(麻生祐未)と勇磨(ディーン・フジオカ)と6人の子供。しかも、この中に結婚している奴がいたり、現当主である康治が危篤だったり、姉妹なのに年齢が逆だったりと、かなりグチャグチャだ。せめてもの救いは、孫が明人(染谷将太)と百合華(堀田真由)の2人ぐらいしかいないことだろうか。

さらに、主人公の伯朗(妻夫木聡)の生い立ちもややこしい。現在は動物病院に勤める伯郎は、幼い頃に売れない画家の父・一清(Creepy NutsのR-指定)を亡くし、母の禎子(斉藤由貴)は矢神康治と再婚。矢神家で肩身の狭い思いをしながら育つも、母・禎子が謎の死をきっかけに、矢神家とは縁を切っている。

伯郎の前に現れた謎の美女・楓(吉高由里子)に至っては、正体が不明だ。明人の妻を名乗るも肝心の明人は行方不明だとし、全てを疑わざるを得ない。ちなみに、伯郎と明人は異父兄弟という関係だ。

複雑な家系図に、突然現れた謎の美女、主人公の生い立ちすら難解、これを説明っぽくなりすぎずに、ゆる〜くコメディを混ぜつつ消化したのだから、さすがTBS日曜劇場ドラマ班といった感じだ。もちろん製作側としては「良かったら顔と名前だけでも覚えていってくださいね〜」ぐらいのスタンスだろう。全部しっかり覚えなきゃドラマを楽しめないなんてことはないはず。前半に無理をして山場を作らない横綱相撲的な第1話。日曜劇場という絶対の信頼を得ている枠ならではの原作チョイスと言えるかもしれない。

顔と名前だけでも覚えていってください

気弱な妻夫木聡は最高です

妻夫木聡の伯朗がハマっている。原作では看護師の蔭山元美(中村アン)や楓をスケベな目で見るセクハラまがいのおっさんといった印象だったが、今作では女性の尻に敷かれる気弱なスケベとドラマっぽく昇華。優しくてこんなにイケメンの獣医なんてモテねー訳ねーだろとも思うが、ほんの少しだけ、不遇な女性関係を送ってきた雰囲気を醸し出すからさすがだ。恐ろしくカッコイイのに、どこかダサく見せてくれる。

等身大のアラサー女子、現代女性の象徴、そんな明るくて活発な役の多い吉高由里子だが、そこに影を差し込めるのが彼女の真骨頂だと思う。あくまで表面上はとっつきやすい自然体だが、どこかに謎な部分を残す。寡黙でミステリアスに見せるのは簡単だが、“ベラベラとお喋りなのにミステリアス”という絶妙なバランスを保っている。また、矢神家に取り入るために猫を被ってしたたかな部分を見せ、明人の妻であることを強調しながらも伯郎を半ば誘惑するなど、知れば知るほど掴めない存在になっていく。

他にも、クールなのにしっとり優しい一番モテる感じの中村アン、1人だけ立ち振る舞いがヨーロッパ貴族のディーン・フジオカ、絶対に名言を残しそうな優しい方の小日向文世などなど。原作から話が面白いのは保証されているが、役者たちもかなり楽しませてくれそうだ。