「7人前後の選手が攻撃に関与してしまい、非常に危険だった。守備の準備が不足し、敵にスペースを明け渡していた。その点については以前も指摘したことがあるが、懸念される戦い方だった」

 スペインの目利き、ミケル・エチャリは日本代表のオランダ遠征、スコアレスドローに終わったカメルーン戦を分析している。

 2014年のブラジルワールドカップに向け、エチャリは日本について同じ不安を指摘していた。アルベルト・ザッケローニ監督が率いる代表は「自分たちらしさ」というお題目でひとつの形を作り上げたが、その過程で変質があった。攻撃ばかりで前がかりになって、手数を掛け過ぎ、守備がおろそかになった。そして警鐘を裏付けるように、本大会では攻守のバランスが崩れ、脆くも敗れ去った。

「言いにくいことだが、あえて言わせてもらいたい」

 そう語ったエチャリは、カメルーン戦をどのように見たのか?


柴崎岳とともにカメルーン戦でボランチを務めた中山雄太

「日本は前半、4−2−3−1の布陣で挑んでいる。だが序盤、堂安律がクロスを送るまで、ほとんど攻め込めていない。冨安健洋がいいカットを見せるなどしたが、攻撃はノッキングしていた。

 カメルーンは前半、4−1−4−1のフォーメーションで試合を優勢に進めている。サイドバックが幅を取ってボールを引き出し、サイドの選手が労を惜しまずに動いてそのサポートに入った。ディフェンスラインから丁寧にショートパスをつなぎ、ビルドアップができていた。中盤も数的優位を作って、長いボールで日本を脅かすシーンがあった。

 一方、日本は攻撃への意欲を見せたものの、7人前後の選手が攻撃に関与し、バランスの悪さが見えた。敵にスペースを明け渡してしまい、ポジション的な不利が濃厚に出ていた。不用意に攻め込まれて、クロスやシュートに持ち込まれる場面があった。そして、こぼれ球を拾われて波状攻撃を食らうなど、危惧すべき戦い方だった。

 日本は、いつものようなコンビネーションを使ったビルドアップができていない。セーフティファーストだったのか、縦に単純にボールを蹴り込む機会が多かった。それが攻め急ぐ印象を与えた。率直に言って、攻守のバランスが悪かった」

 エチャリは率直に苦言を呈している。しかし、プロフェッショナルの世界で生きてきた男は、批判するだけでは終わらない。その提言にこそ、本質はあるだろう。

「後半、日本は3−4−3(3−4−2−1)に布陣を変更した。この森保一監督の試みは高く評価できる。プレスを受けたカメルーンは、前半のように自由にプレーできなくなり、日本は試合の流れをやや有利に引き寄せることができた。カメルーンのビルドアップを戦術的に封じ、イニシアチブを取り返し、何度か敵陣に攻め入った。49分には右サイドを伊東純也が破り、クロスを大迫勇也の頭に合わせた。このシーンが、日本の一番の決定機だったか。

◆「日本代表、オール国内組なら誰を呼ぶ?」>> 

 しかし、劇的な改善とはいかなかった。システム的には適応したものの、いくつかのポジションにズレが生じていたのだ。

 例えば、南野拓実はポジションが低すぎた。もっと大迫に近い位置、もしくはゴール前で仕事をさせるべきだろう。前半、酒井宏樹の折り返しから決定機を得たように、ペナルティエリアの付近で自由を与えた時、とても危険な選手になる。

 また、原口元気は後半から左ウィングバックに入ったが、あまりにもディフェンシブな役目を託されていた。結果、ゴール前で仕事ができる選手が、ディフェンダーになってしまった。個人的に好きな選手だけに、宝の持ち腐れだ。

 そして改善すべきは、ボランチの位置だろう。右利きの柴崎岳が右、左利きの中山雄太が左に入るべきだった(実際には逆だった)。それによって、簡単にサイドをケアすることができて、守備の負担を軽くできたはずだ。また、原口も前のポジションでプレーできただろう」

 エチャリは、端的に改善策を語った。そして最後に、こう総括をしている。

「日本は、本来の力を出し切ることができていなかった。日本のよさは、技術とスピードを融合させたコンビネーション能力の高さにある。多くの選手が、ともにプレーしてきた経験があるはずだが、カメルーン戦は後半になってようやくその片鱗が見られたに過ぎない。

 どちらかに1点が入ってもおかしくはない試合だったが、引き分けというのは妥当な結果だろう。戦術的には、カメルーンのほうが機能していた。ボールポゼッション、サポート、連続性、走りの質、サイドバックの貢献など、見るべき点が多かった。

 もっとも、後半に森保監督が若干ながらもプレーを改善できたのは、ひとつの収穫と言えるだろう」
(コートジボワール戦に続く)