攻撃面のタレントは国内でも人材豊富。今後の招集はあるか。左上から時計回りに、三笘、坂元、小林、古橋。写真:サッカーダイジェスト

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 9日のカメルーン戦とコートジボワール戦(ともにユトレヒト)で1勝1分と成果を残した日本代表。だが、得点力という部分ではまだまだ改善の余地があるのは確かだ。2022年カタール・ワールドカップ8強という大目標を目指して、さらなる人材の発掘は不可欠と言っていい。

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 森保一監督就任後、一段と競争が激化した2列目もまだまだ予備軍は数多くいる。今回はカメルーン戦で南野拓実(リバプール)、堂安律(ビーレフェルト)、原口元気(ハノーファー)が先発し、伊東純也(ゲンク)、久保建英(ビジャレアル)、鎌田大地(フランクフルト)が後半から出場。コートジボワール戦では伊東、鎌田、久保が先発し、南野、原口、堂安が後から出てくる形だった。三好康児(アントワープ)以外、全員がピッチに立ち、伊東が2戦続けて強烈なインパクトを残したのは朗報だったが、決め手を欠いたのは事実と言える。

 今後も彼らがベースになるのは間違いないが、2列目にはトライしたい選手が他にもいる。欧州組にも所属クラブでコンスタントに試合に出ている乾貴士(エイバル)や浅野拓磨(パルチザン)がいるし、国内組にも人材は目白押しだ。世界基準を熟知するセレッソ大阪のロティーナ監督も「若くてクオリティとスピードのあるウイングの選手がどんどん出てきているのは日本サッカーにとって素晴らしいこと」と強調していた。

 最近のJリーグを見ても、大卒新人ながらすでに10ゴールをマークしている三笘薫と5ゴールを挙げている旗手怜央の川崎コンビはその筆頭だろう。すでに東京五輪代表活動にも何度か呼ばれ、森保一監督も特徴をよく理解している2人だけに、少なからずチャンスはあるだろう。

 ここまでのパフォーマンスはあくまで国内レベルで、カメルーンやコートジボワールのような相手に同じ結果が残せるとは限らないが、短期間で急激な成長曲線を辿っているのは間違いない。特に三笘のゴール前での冷静さとシュートの巧さは目を見張るものがある。11月の代表活動で国内組を招集できるのであれば、ぜひ試してみてほしい逸材だ。
 
 打開力という意味では、右の坂元達裕(C大阪)、左の松尾佑介(横浜FC)も面白い。坂元はロティーナ監督から絶対的信頼を寄せられる左利きのドリブラーで、切れ味鋭い切り返しで対戦相手をキリキリ舞いさせている。最近は対策を講じられて苦しむ場面も見受けられるが、彼もまた右肩上がりの軌跡を辿っている。伊東と競争させてみても面白いだろう。

 松尾にしても左サイドを一気に駆け上がりフィニッシュまで持って行く迫力はJ1でも頭抜けている。以前は原口がこのタイプに近かったが、攻守のバランスを考え、より幅広い仕事をするようになったため、タテへの推進力があまり見られなくなっている面もある。そう考えると松尾はその役割を担える選手。一度呼んでみるのはありだ。

 最前線で併用できる人材としては古橋亨梧(神戸)が挙げられる。もともとスピードとフィニッシュの鋭さは折り紙付きのアタッカーだが、今季11ゴールという数字で本人もより一層自信をつけている。日常的にイニエスタやフェルマーレンら世界最高峰クラスのプレーヤーとともに過ごし、世界基準を日々焼き付けている点も見逃せない。1年前のベネズエラ戦1試合しか実績がない分、伸びしろも大きい。やはり次回の代表活動でリストアップされていい存在と言える。
 
 1トップに関しては、コートジボワール戦に出た鈴木武蔵(ベールスホット)が持ち前の強さと速さを駆使して良い動きを見せていたが、大迫勇也(ブレーメン)への依存状態が完全に解消されたわけではない。今回2連戦をケガで棒に振った岡崎慎司(ウエスカ)もまだまだ候補者の1人ではあるが、国内組にも目を向けてみるのも一案だ。

 アギーレ監督時代から断続的に代表に呼ばれながら、定着が叶っていない小林悠(川崎)は有力な1人ではないか。今季12ゴールという数字のみならず、ゴールに至る過程の鋭さが際立っている。ボールを収める部分では大迫には及ばないかもしれないが、敵との駆け引きで裏を取り、そのままシュートを決めるうまさは大迫以上と評価できる。直近の広島戦での負傷、33歳という年齢が気がかりではあるが、本人は「まだまだ進化できる」という強い意欲と向上心を抱き続けている。もう1回チャンスを与えるとしたら、今だろう。

 もうひとり挙げるなら、FC東京のけん引役である永井謙佑。彼も2019年の代表活動で結果を残し、存在感を示した選手だ。今季は肩の脱臼で長期離脱を強いられたものの、復帰後は爆発的なスピードでチームのアクセントとなり、勝利に貢献している。「永井がいるのといないのとでは全然違う」と長谷川健太監督も話す通り、前からの献身的なプレス含めて黒子となって働けるのが強みだ。こういうタイプが1人いれば、カウンター狙いの時は強い。

 彼ら国内組にも目を向ければ、森保ジャパンはより多彩な攻撃陣で戦える可能性がある。ただ、コロナ禍で約1年間の強化期間が失われ、今後の活動時間も少ない中、新たな競争を重視できない部分もあるかもしれない。既存戦力の連係強化か、新戦力による活性化か――。まずはそこを明確にしてほしい。

文●元川悦子(フリーライター)