フィギュアの転売とコピー商品の話

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まずは最近のフィギュア系の状況から。
 この記事が配信される直後になりますが、10月17〜18日にはオンライン&オフラインのイベントが開催されます。
 1つはグッドスマイルカンパニーが開催するワンホビギャラリー 2020 AUTUMN。7月に開催された同名のイベントの秋版ということで、オンラインでの展示&動画配信、秋葉原でのフィギュア展示イベントが開催されるのです。
 そしてもう1つは毎年夏に開催されていたC3AFAのオンライン版、C3AFA TOKYO 2020 ON-LINE。C3AFAといえば、他のイベントでは許諾されないガンダムシリーズの当日版権がおりることで知られています。そのオンライン版でもさまざまなメーカーの展示や動画配信に加え、ガンダムを始めとした当日版権レジンキットの通販が行われるのです。当日版権のオンラインイベントというと、9月に開催されたトレジャー・フェスタオンラインは当日のアクセスがままならず、結局延期になるというトラブルがありました。このC3AFAオンラインは、通販の大手であるキャラアニのサーバーを使うので回線トラブルや通販処理などには強いはずなので、そのあたり期待できそうです。
 今後もいろいろホビー系イベントが開催予定になっていますが、それらはまたあらためてまとめたいと思います。

そういったホビー系イベントでいつも大きな問題となるのが転売。人気メーカーや人気ディーラーに群がって商品を押さえ、ヤフオクなどで高価な値段をつけて転売する転売ヤーに不快な思いをしているのはユーザーもディーラーも同じ。
 昔から中古ショップがプレミア価格をつけるという商習慣はありましたが、ヤフオク(当時の名称はYahoo!オークション)の開設で個人が気軽に転売出来るようになったことで、それが大きな問題となり始めたのは2000年代初めから。今でもワンフェスなどのイベント直後には転売を嘆く声があがりますが、00年代はもっとひどい状態だったのです。1人1限で売ったら転売屋が家族3世代総出で買いに来た(赤ん坊の分まで!)、ホームレスを何人も雇って並ばせたなんていう話もゴロゴロありました。ディーラーで出ていた中古ショップが、開場と同時に多数のスタッフを買い物であっちこっちに飛ばしたなんていうひどいことも(中古ショップの店頭に当日版権キットの買い取り価格が書かれたチラシが置かれているような時代でした)。
 当日版権ガレージキットは元の価格が高いうえに、数が圧倒的に少ないということで絶好の転売ターゲット。当時は塗装済フィギュアもまだ少なくてクオリティもまだまだだったため、ガレージキットを求めるファン数も今よりも多かったのです。1万円くらいのものが10万円を超えるなど価格も高騰しやすく、イベント後には多数のキットがオークションサイトに並んでいたものでした。

そういったガレージキットを転売目的で買うグループの中にはさらにタチの悪いものも。転売は転売でも、複製をとってコピー商品を売るというのもあったのです。多かったのは香港から来ているグループ。香港の湾仔や旺角のオタクビルにあるコピーガレージキット専門のショップが仕入れに来ていたわけです。香港に行ったときはよくそういうお店を覗きに行ってましたが(買ったりはしていません!)、ものすごい数の商品写真を並べて注文があったら複製をとって持ってくるなんてことをやってました。10年以上やってる老舗があったり、7〜8軒のお店しかない小さなショッピングモールに3軒コピーガレキ屋が入っていたり、最盛期にはあちこちにそういったお店があったのです。フィギュアの中心が塗装済完成品になるに従ってそういうお店は減っていったのですが、レアな完成品をバラして複製してキット化してみたり、キットを塗装して完成品にして販売したり、あの手この手でいまだに生き残っているお店もあります。

香港などではそういったある意味マニア系のコピー商品とは別のコピーフィギュアというのが昔から存在しています。それは、グッズショップや夜店の屋台で売られているメジャーキャラ中心の完成品フィギュア。親指大のカプセルトイの指人形を30センチくらいに拡大して貯金箱にしていたり、カプセルフィギュアを目コピーで作って束にして売っていたり。およそコピーとも言いがたい泥人形なのですが、そういったもののなかにもとはガレージキットだったものが混じったりしていたのです。

これは00年頃に香港の地元のショッピングセンターで撮った写真ですが、この他にも同時期には「ああっ女神さまっ」「カードキャプターさくら」「ストリートファイターII」「餓狼伝説」などさまざまなキャラが並んでいました。だいたいコールドキャストという石のような樹脂製で、ディテールは全部潰れて表面もガタガタ、塗装ははみ出しや塗り間違いは当たり前で、グラデーションや細かい塗り分けなどは当然ないというとんでもない低品質のものだったのです。

そして、フィギュアが塗装済完成品中心になってくると、また別のコピー問題が出てきました。塗装済完成品のコピーが出回るようになったのです。コピーといってもさまざまなタイプがあり、発表された写真を見てそれを真似て作ったもの(当然出来は悪い)、発売された商品をコピーしたもの、正規の工場の検品ではねられたパーツを拾ってきて(またはこっそり組織的に持ち出して)勝手に組み立てたものなどなど。正規の工場の工員さんが、夜になるとコピー工場で働いていたなんていう話を聞いたこともあります。そうやって作ったものを、パッケージもコピーして、安く売るというわけです。これらはオークションサイトなどを通じて日本に入ってくることもあり、各メーカーから注意と見分け方の告知が行われています。
 さらには当日版権ガレージキットを勝手にPVC製完成品にするという例もチラホラあります。パッケージも勝手に作ってメーカー名とか原型師名とかも適当に入れているのです。以前見たことがあるものでは「ローゼンメイデン」のフィギュアの原型師として俳優の長谷川初範の名前が入っていました(笑)。

もちろんこういったコピー商品の製造販売は中国でも違法で、昨年かなり大きなコピーフィギュア工場が摘発されたというのがニュースになっていました。その摘発の謝礼で、バンダイが上海市当局に「ガンダムアストレイ レッドフレーム改」のフィギュアを贈ったという話も。逆にいうとそれだけ大きな商売になる市場があるというわけです。
 中国でも本当にコアでマニアックな層は正規商品を買うようになっていて、その市場規模は拡大しているのですが、価格が高めで手が出ないので偽物を買う層や、偽物か本物か気にしないカジュアルな層もまだまだ多いようです。メーカーも参加する同人イベントなどで、本物を売るショップと偽物を売るショップが並んでいるというのもよくあることなのです。

で、ここからさらにちょっとややこしい話。本物を欲しがるはずのコアでマニアックな層をターゲットにした別種の違法商品があるのです。それがジャンプ系などのメジャータイトルの無許諾無版権フィギュア。原型自体はコピーではなくオリジナル、中国での人気傾向に合わせてジオラマ的な大きなベースで大ボリューム、造形クオリティもかなり高くパッと見た目の迫力も満点で塗装も細かそうです。素材はPVCではなくレジン系。3Dプリンタ出力そのままを使っていそうです。ただ、画像はほとんどの場合3DCGなので最終的な商品クオリティは分かりませんが。1体3〜10万くらいで最新の人気キャラを続々と発表しています。デジタル造形なので、同じ原型を1/4と1/6で出すなんてことも。
 もともとヨーロッパを中心に、凝ったジオラマ的なベースで大きなスケールのフィギュアは人気です。ルクセンブルグのTSUMEやフランスのOniri Créationsなどが日本のアニメやゲームの正規版権を取って多数のフィギュアを発表しています(版権の関係で日本では販売できない場合がほとんど)。それに倣ったような仕様なのです。
 なお、ガンダムのガレージキットでは昔から無版権だけどオリジナル原型のもの(これも高価で大ボリュームのもの中心)を売ってるところが香港にありました。

こういった無版権フィギュアを、ある意味気軽に出せるようになったのはデジタル造形&3Dプリンタがあるからこそ。そこにこれから先出てきそうなデジタル原型データの流出や、3Dスキャンが可能なカメラによる原型のコピー(今でも行われている3Dスキャナーによるものではなく、展示されてる開発中フィギュアのデータが撮られる危惧)など、デジタル時代ならではの新たなコピー問題も起こりそうです。

転売にせよ、コピー商品にせよ、無版権商品にせよ、ある種永遠のいたちごっこ。ですが、商品形態が変わり、環境が変わり、技術が変わっていくなかで、このあたりが少しでもよくなっていくことを願いたいものです。