久保建英にとっては、思うに任せない、フラストレーションのたまる試合だったに違いない。

 日本代表のオランダ遠征第2戦はコートジボワールと対戦し、1−0で勝利した。得点こそ、試合終了直前のFKから途中出場のDF植田直通がヘディングで決めた1点のみだったが、守備では状況に応じた組織的な対応に加え、最終局面では1対1でも負けない強さを見せ、相手を無失点に抑えた。

 総体的に言えば、悪くない内容の試合だった。

 しかしながら、その評価に比例した満足感を、少なくとも久保が得ることはなかったはずだ。


コートジボワール戦で先発出場を果たした久保建英だが...

 この試合がA代表では9試合目の出場となる久保も、先発出場に限れば、昨年6月のコパ・アメリカ(エクアドル戦)以来となる3試合目。期するところがあって不思議はない。

 しかし、MF南野拓実との交代で退くまでの61分間、率直に言って、久保が存在感を発揮したとは言い難い。おそらく何の先入観も、事前情報もなく、この試合だけをフラットに見たとして、日本選手の中で背番号17に目を奪われる人は、かなり少なかったのではないだろうか。

 試合開始2分にして、久保はいきなり右からのクロスに合わせた際どい左足シュートを放ったが、こと日本代表初ゴールに関して言えば、それが最初にして最大のチャンスだった。

 持てる才能に比して、久保が目立たなかった理由はいくつか考えられる。

 まずは久保が最も得意とするポジション、すなわち2列目の右サイドでプレーできなかったことだ。

 ビジャレアルでのプレーを見ていてもそうだが、左利きの久保は右サイドで体を内側に向けてパスを受け、相手選手から遠い左足でボールを持ったときに、最もプレーの選択肢が多くなる。少しの時間を除き、左サイドに張りついた久保のプレーは、どこかぎこちなさを感じさせた。

 まして、この試合の右サイドバックは、DF室屋成だった。FC東京時代には一緒にプレーしていただけに、久保が右であれば一層プレーしやすくなっていたのではないか。そんなことを想像させた。

 そして、ふたつ目は前線の4枚、すなわち1トップのFW鈴木武蔵、2列目のMF伊東純也、MF鎌田大地、久保が、初めて一緒にプレーする組み合わせだったことである。

 4人それぞれのプレーは決して悪くなかったが、互いが連係することでプラスアルファを生み出すという点においては、機能性に欠けていた。

 例えば、鎌田が相手DFとMFの間でパスを受けても、次のプレーにつながらなかったり、そもそも次の選択肢がなかったりと、せっかくのいいプレーがぶつ切りになってしまう。そんな印象を何度も受けた。

 象徴的だったのが、前半32分のシーンだ。

 中央から右サイドにボールが展開され、ボランチのMF柴崎岳が鈴木とのパス交換でゴールライン際まで切れ込むも、折り返しのクロスには誰も詰めていなかった。

 直後の鈴木のリアクションを見ると、おそらく彼は、左サイドから久保がゴール前に入ってくる絵を描いていたのだろう。だが、当の久保は、ボールが中央にある時点で左サイドに開いて構えており、それには間に合わなかった。

 その後の久保は、41分にDF冨安健洋からの浮き玉の縦パスを柔らかなトラップで収め、ドリブル突破から高速クロスにつなげたシーンをはじめ、ボールを持ったときには非凡な才能を垣間見せてはいた。

 しかし、それもわずかに2、3回。後半に入ると、周囲との連係を意識し、互いの距離を縮めようとしたのか、中央寄りにポジションを取る時間が長くなったが、むしろ空いた左サイド(コートジボワールから見て右サイド)を相手に使われることが多くなり、さして効果的ではなかった。

 では、この試合で久保が得点する可能性は、開始直後のシュート以外になかったのか。

 その可能性が最も高かったのは、後半13分に鎌田がドリブル突破でGKと1対1になる、その直前のシーンだろう。

 右サイドの伊東から横パスを受けた鎌田は、相手を見ながらゆっくりとしたドリブルで前進。このとき久保は、鎌田の左後方から横に並ぶようにして、ゴール正面の位置に入ってきた。久保の身振りから察するに、パスをくれと要求もしていたはずだ。

 久保の前にはスペースがあり、相手DFとの距離もあった。もしここでパスが来ていれば、ゴールの成否はともかく、少なくとも比較的余裕がある状況でシュートを打つことはできただろう。

 しかし、パスは来なかった。

 もちろん、鎌田は責められない。間違いなく自分で勝負していい状況だったし、実際、流れのなかではこの試合最大と言っていい、決定機を作っている。

 とはいえ、久保にとっては、何となく周囲とのコンビネーションがかみ合わない感覚のまま、出場時間を終えることになったのは確かだろう。このプレーから程なく、南野との交代を告げられたのは皮肉だった。

 今回のオランダ遠征の第1戦、カメルーン戦がそうだったように、試合終盤、途中交代で出場するときの久保は、ピッチ上に自らの足跡をしっかりと残してきた。だからこそ見る者に、短い時間でこれだけできるのだから、先発で使ってほしい、と思わせる。

 だが、出場時間が30分から60分に増えたからといって、作り出す見せ場も倍に増えるかというと、話はそれほど単純ではない。

 対戦するふたつのチームが互いの出方を探り合いながら、勝負どころを見極める。そんな試合序盤の時間と、やるべきことがはっきりしている試合終盤の時間とでは、求められるプレーがまったく異なるからだ。

 と同時に、試合後の森保一監督が「今持っている力を発揮してくれたと思う」と久保を称える一方で、「これから体力的にも(力を)つけていってもらいたい」と指摘したように、フィジカル面で課題があるのも確かだろう。

 決して守備意識が低いわけではないが、ボールを奪うべきところで奪い切れなかったり、後半に入ると、逆に体をぶつけられ、マイボールをあっさり失ったりという場面は何度か見られた。

 久保はビジャレアルでも、今季リーグ戦はここまですべて途中出場。試合終盤にピッチに立てば、必ずと言っていいほどキラリと光るプレーを見せてはくれるが、現状ではあくまでもジョーカー、スーパーサブといった位置づけだ。

 起用方法を見る限り、おそらくビジャレアルを率いるウナイ・エメリ監督の評価に、森保監督のそれと大きな隔たりはないのだろう。

 だとすれば、久保がやるべきことははっきりしている。エメリ監督を納得させ、所属するビジャレアルでポジションを手にすることだ。

 世界最高峰のレベルを誇るリーグで、安定したパフォーマンスを90分間、しかも毎週の試合で発揮できるようになれば、日本代表でそれができないはずはない。

 非凡な才能を持っている。しかし、まだ成長途上の19歳。大きな期待は、長い目とともに持っていたい。