もし森保監督が、3-4-2-1を選択し続けるなら、彼らが力を発揮やすい場所が代表チームには存在しないことになる。日本サッカー界の新ストロングポイントと言うべき、ウイングというポジションのない布陣は、日本サッカーの現状に適しているとはいい難い。カメルーン戦の久保を見て、その思いを改めて強くした次第だ。

 では、カメルーン戦で韋駄天ぶりを発揮したドリブラー、伊東はどうなのか。彼は3-4-2-1にハマっていたと、突っ込みを入れてくる人は多いだろう。実際、伊東は4-2-3-1から、3-4-2-1に布陣変更したタイミングで投入された。右のウイングバックとして。森保監督は2シャドーよりウイングバックとして使った方が、伊東の特性は生きると踏んだのだろう。タテへの推進力という点では、日本のウインガーの中で、彼はピカイチなのである。

 森保監督の狙いは的中した。先述の通り、終了間際、ドリブルで前進した伊東は、ペナルティエリア手前でファウルを受け、久保がバー直撃弾を放った直接FKを生み出している。

 しかし、それは45分の出場に限られたからできた芸当だ。試合の頭から、サイドにおける1対2という数的不利を抱えるウイングバックとして出場していたら、もっと低い位置でのプレーを余儀なくされていたに違いない。自慢のドリブルを披露する回数より、得意とは言えない守備に費やす時間が長かったと思われる。

 カメルーンが、PCR検査で陽性者が出たため18人での戦いを余儀なくされたことも、日本に幸いした。日本のようにベンチに控えの駒が豊富にいれば、伊東にプレーに制限を加えようと、日本の右サイド(自軍の左サイド)を選手交代によって、より強固なものにしていたはずなのだ。

 ウイングバックに適性がある、いわゆる馬力型のサイドアタッカーが、日本サッカー界に溢れているのなら話は別だ。その数はしかし実際、多くない。選手のレベルも世界と大きく離れている。馬力ではなく巧緻性を最大の拠り所にする日本人選手にとって、ウイングバックは適性が低いポジションなのだ。相手のレベルが上がるほど、力不足を露呈する。

 W杯など、出るところに出れば、ウイークポイントになる可能性が高い。一方、シンプルなウインガーは、日本のストロングポイントになる。この見極めを間違えてはいけない。3-4-2-1に切り替えたために、善戦したかに見えるカメルーン戦の森保采配を見ていると、心配は募るばかりだ。