先のカメルーン戦。立ち上がりから劣勢を強いられていた日本代表が攻勢に転じたのは、後半なかば過ぎだった。お互い交代カードを切りあい、様々な思惑が交錯する中、次第にテスト色が強まっていく後半の戦いより、親善試合は、一定のペースで試合が進む前半の戦いぶりに着目すべきーーとのスタンダードが、サッカー界にはある。そうした意味で、このカメルーン戦はあまり評価できない試合となるが、それでも終盤、盛り上がったことだけは事実だった。

 そこには後半20分、交代で投入された久保建英が絡んでいた。後半39分、左のライン際を、独特のテクニックを交えながらドリブルで突破。ゴール前で構える大迫勇也に、惜しいセンタリングを折り返している。さらに久保は終了間際にも、伊東純也がこれまた自慢のドリブルで得た近距離からのFKを、バーに当てる惜しいシュートを放っている。

 この2つのプレーを除けば、森保ジャパンはいいところがなかったわけで、森保監督にとっては、まさに久保様々になる。とはいえ、この日の久保を10段階で採点するならば、せいぜい「6」。上記の2つ以外、特筆すべきプレーを披露した機会はなかった。もう少しこうした方がよかったと、物足りなく感じるプレーの方が多かった。マズいボールの奪われ方で、ピンチを招いたシーンもあった。目立つプレーもしたが、好ましくないプレーもした。

 それは3-4-2-1の2シャドーの一角という、プレーしたポジションと関係がある。1トップ大迫の斜め下あたりに基本ポジションを取ることになったが、ここは真ん中か外かと言えば真ん中だ。4-2-3-1の3の両サイド、あるいは4-4-2の両サイドハーフ、もっと言えば4-3-3の両ウイングに比べると、基本ポジションはそれより10m、あるいはそれ以上、内側になる。

 一方、久保が他の選手に比べて秀でているプレーはドリブルだ。パスも巧いが、最大の武器はやっぱりドリブルになる。カメルーン戦の後半39分に見せたような、タテにスルスルと抜いて出る技巧的なドリブルができる選手は、久保をおいて他にいない。

 その久保のドリブルだが、鎌田大地からボールを受けた場所は、左のタッチライン際だった。本来のポジションから離れ、開いてボ−ルを受け、そこからタテにドリブルで進んでいった。すなわち、結果オーライの産物だったのだ。

 3-4-2-1の2シャドーのポジション(それより10m内側)で、ボールを受けても、あのドリブルは望めない。背後がタッチライン際ではないので、相手に四方を囲まれることになるからだ。ドリブルの難易度は大きく上昇するので、よほどのことがない限り、ドリブルという選択に至らない。

 久保にとって、この3-4-2-1の2シャドーは、ドリブルという最大の魅力を引き出してくれる最適なポジションとはいい難いのである。

 カメルーン戦。久保はこれ以外のシーンで、ドリブルで勝負を挑むことはなかった。ボールを捌くプレーの方が多かった。それしか選択肢がなかったからだ。中盤的な、ありふれたと言うか、ありきたりと言うか、このプレーを続けていくと伸び悩む。並の選手で終わると心配したくなるプレーの方が目立った。そしてそのプレーの中で致命的なミスも1度、犯している。

 その一方で、久保のワンマンチームとは言わないが、日本代表にとって久保の活躍は、不可欠な要素になっている。さらに言えば、だ。9月9日発行のこのコラム(「日本のストロングポイントはドリブル得意なウインガーにあり」)でも述べたとおり、日本には久保に近しい、ドリブル得意な選手が急増している。

 この日、スタメンを飾って選手で言うなら原口元気、堂安律。今回、落選した中島翔哉、乾貴士しかりだ。さらに三苫薫、坂元達裕、松尾祐介、仲川輝人など、Jリーグを見渡しても目白押しという状態にある。中盤天国と言われた時代から、ドリブラー天国といわれる時代に、日本サッカー界は大きく様変わりしている。