終了間際、植田直通のヘッドが決まり、コートジボワールに1−0で勝利した日本代表。森保一監督の勝負カンが冴えた試合と言えるが、内容においても、4日前(10月9日)に行なわれたカメルーン戦(0−0)を上回っていたのは確かだった。

 コートジボワールは、2014年ブラジルW杯初戦で対戦した相手だ。日本はこのレシフェで行なわれた一戦において、1−2で逆転負けしている。惜しい敗戦ではあるが、内容的には40対60ぐらいに相当する順当負けだった。

 それから6年後にもたらされたこの勝利を、順当勝ちと言うつもりはない。試合を優勢に進めていたのはコートジボワールだった。とはいえ、6年前より両者の差は接近していたように見えたことも事実だ。ボール支配率は47対53。日本の進歩をハッキリと感じ取ることができた意義深い試合になる。

 コートジボワール戦の布陣は4−2−3−1で、スタメンの顔ぶれは、カメルーン戦から吉田麻也、冨安健洋、柴崎岳、中山雄太を除く7人が入れ替わっていた。選手を頭からこれだけ入れ替えても、前戦以上の試合ができたことは、層が厚くなったことを意味するわけで、素直に喜ぶべき話になる。

 なかでも活躍が目立ったのは、鎌田大地(1トップ下)と伊東純也(右ウイング)だ。鎌田も伊東も、言ってみれば、代表のスタメン候補ではない。現在、1トップ下の選手としてプライオリティが高い選手といえば南野拓実。右ウイングは堂安律だ。


コートジボワール戦に先発、攻撃の中心になっていた鎌田大地

 南野、堂安、それに今回招集メンバーから外れた中島翔哉が4−2−3−1の第2列に並ぶ姿は、森保ジャパン発足当初のセールスポイントだった。2018年ロシアW杯後、リニューアルされた新生日本代表を、まさに象徴する3人だった。鎌田と伊東もメンバーに加わっていたとはいえ、あくまでもサブ的な存在に過ぎなかった。

 だが、コートジボワール戦を終えたいま、それが正当な評価に値するのか、順列は逆転したのではないかと、一考したくなる。

 少なくとも1トップ下としては、南野より鎌田の方が優れているのではないか。

 リバプールとフランクフルト。UEFAクラブランキングでは、両者は10位(リバプール)対41位(フランクフルト)の関係にある。選手としてのステイタスでは断然、南野に軍配が上がるが、日本代表の1トップ下に視点を絞ると、鎌田のほうが輝く存在に見える。

 日本の1トップ下は、大迫勇也ではなく、鈴木武蔵タイプのCFの下で構える場合は、相手DFに背中を向けたポストプレーも求められる。南野が不得手とは言わないが、この点では鎌田のほうが数段上だろう。プレーの幅の広さという点で、南野に勝る気がする。

 森保監督は後半16分、南野を交代で投入しているが、交代相手は左ウイング、久保建英だった。左ウイングとして原口元気を投入した後半28分の交代では、1トップの鈴木武蔵をベンチに下げ、鎌田を1トップに、南野を1トップ下へと玉突きのように移動させた。

 森保監督は、鎌田を最後まで攻撃陣の真ん中付近に据えて戦った。2022年カタールW杯に向け、1トップの選択肢が大迫しかないサッカーから脱皮を図ろうとした時、鎌田の重要性は今後、いっそう増すことになるだろう。

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 伊東純也はカメルーン戦に続く活躍だった。前戦は後半からの出場で、ポジションも3−4−2−1のウイングバックだった。右ウイング(4−2−3−1の3の右)で出場したこの日とは、ポジションが微妙に違ったが、韋駄天ぶりを発揮した前戦の流れそのままのプレーだった。

 カメルーン戦に先発した堂安と比較すると、その違いはより鮮明になった。堂安のドリブルが内に入りやすいのに対し、伊東は縦に進む。ゴールライン際まで進出し、折り返しを狙う。伊東の方が堂安より、攻撃に深みをもたらすことができるのだ。

 右利きが右を縦に抜いて出るプレーは、一般的に難易度が高いとされる。左サイドから内に切れ込むプレーの方が簡単だ。右利きの右ウイングというのはそうした意味で貴重だ。伊東のセールスポイントそのものになる。右利きの左ウイングではないところに伊東の価値がある。

 コートジボワール戦で左ウイングを務めた久保建英は、言わずと知れた左利きだ。左利きの場合も一般的に、右より左ウイングの方が難易度は高いとされる。左では力を十分に発揮できない堂安を例にとればわかりやすい。

 左利きにもかかわらず、左ウイングの位置から縦に抜いて出るプレーを不得手にしない久保。右利きにもかかわらず、右ウイングの位置から縦に抜いて出ることを不得手にしない伊東。

 この2人によって築かれる左右の関係が、日本のサッカーに深みをもたらしていた。コートジボワール戦のサッカーは、左を中島、右を堂安が務めた森保ジャパン結成当時の関係より断然、ピッチを幅広く有効に使えていた。効率的なサッカーができていたのである。

 しかし、それでも日本はコートジボワールに対し、47対53の関係を強いられた。ボール支配率で後れを取った。勝つには勝ったが、もう一回戦えば、コートジボワールが勝つのではないかという印象を与えたことも確かだった。

 サッカーは支配率がすべてではない。しかし、身体能力の高い相手をいなそうとすれば、ボールを奪いに行く時間より、ボールを保持する時間を長くした方が得策だ。47対53は、できれば逆転させたい数字になる。

 そのためには、相手からプレスを浴びにくいピッチの両サイドで、ボールを保持する時間を増やすことが求められる。

 日本は先述のとおり、伊東、久保がサイドを突いたが、その大半は2人の単独攻撃だった。つまり、常に勝負を強いられていた。そこでの1対1に敗れれば即、相手ボールに転じる。これでは支配率は上がらない。

 だが、これにサイドバック(SB)の室屋成(右)、中山雄太(左)が、伊東、久保を追いかけるようにサポートに入れば、プレーの選択肢は増える。支配率も自ずと上がる。

 特に日本の右サイドはこの日、SBが上がりやすい状況にあった。室屋の対面で構えていたジェルビーニョが、守備をサボっていたからだ。室屋が上がっても、一緒にマークについて下がってこなかった。

 ジェルビーニョはコートジボワールのスター選手。33歳のベテランでもある。怖く感じる時間は、相手ボール時に限られるのだ。室屋は相手の名前を怖がり自重したのかもしれない。もっと上がれたはずだった。

 伊東は4−2−3−1の右ウイングとして出場したにもかかわらず、3−4−2−1の右ウイングバックとして出場したカメルーン戦同様、単独プレーを強いられた。サイドアタッカーが2枚存在する布陣の特徴を活かせなかった。これは伊東の問題ではなくチームの問題だ。

 今後は伊東と室屋(右)。久保と中山(左)。このコンビネーションを磨くに限る。両ウイングの単独ドリブルに依存するサッカーには限界がある。試合を優勢に進めることはできない。勝利の確率は上がらないのだ。