アフリカ勢との2試合で輝きを放った選手は誰だったのか? 写真は左上から時計回りに、柴崎、鎌田、冨安、吉田、中山、伊東。写真:龍フェルケル/Getty Images

写真拡大 (全2枚)

 今回のオランダ遠征は、短期間ながら代表スタッフに貴重な実験材料を提供出来たはずだ。まず十分なモチベーションとコンディションのアフリカの強豪と真剣勝負が出来て、川島永嗣、板倉滉、三好康児以外全員をピッチに送り出した。さらに初戦後半では3バックの実験も出来て、コートジボワール戦へ向けて戦い方の修正を図り、必要だった確認作業も概ね済ませられたに違いない。

 一方プレーした選手については、カメルーン戦とコートジボワール戦を同列に語ることは出来ない。両国を比較すればカメルーンの方が戦術的に洗練され、とりわけ前半の日本はスペースを探すのに苦慮してロングボールが増え、MFやFWは快適な仕事場を得られなかった。逆にコートジボワール戦は、GKからしっかりとボールを繋げていくコンセプトが確認され、また相手が比較的間延びしていたこともあり、DFも安心してボランチにボールをつけ、そこに相手を食いつかせることでトップ下の鎌田大地が余裕を持ってボールを受けられた。さらに両サイドにもスペースがあったので、鈴木武蔵や柴崎岳が絡めば局面を優位に進めることが出来た。実際日本にとって一番のビッグチャンスは鎌田―鈴木の連係で右サイドを攻略し、中央でフリーの久保建英が合わせた開始早々のシーンだった。

 現状で森保一監督が、どうしても外せない選手が3人いる。CBの冨安健洋と吉田麻也、それに柴崎。さらに酒井宏樹、大迫勇也、南野拓実も同等の立場にあるので、今ハイレベルで重要な試合に臨むなら、スタメンの半数以上は決まっていることになる。今回の連戦で最も悔やまれるのは、エールディビジのアヤックス戦で完封勝利に貢献した板倉にプレー機会を与えなかったことだ。「勝つことで日本の人たちに元気を」と強調し続けた指揮官は、勝利を手繰り寄せることに傾き、冨安―吉田のコンビだけには手をつけられなかった。だが親善試合はタイトルマッチではない。もちろん勝利を目指して戦うわけだが、将来への布石の方がチームに大きな収穫をもたらすこともある。冨安―吉田が盤石な今だからこそ、自信を深めている板倉との比較も見極めておきたかった。
 
 一方今回重要なバックアッパーとして浮上したのが中山雄太だった。広島時代の影響で3バックのイメージが強い森保監督だが、改めて軸は4バックなのが判明した。カメルーン戦後半からの3バックへの変更は満を持しての試みだと思ったが「準備したのは5分間だけ」と自ら明かしている。そうなると「CB、ボランチとともに3つのポジションを考えている」(森保監督)という中山のユーティリティー性は重要になる。今回は2戦ともにフル出場し、どちらも無条件で合格レベルというわけではなかったが、特に長友佑都の後継者不在の左SBでは有力候補だ。逆にボランチでは、所属のシュツッツガルトでスタメンに定着している遠藤航が柴崎のパートナーとして最適任なのを再確認させた。「普段からセカンドボールの奪い合いの勝率を上げようとトライして来た。初戦は全体に長いボールが多かったので、足もとにつけることを意識した」と語っていたが、秀逸なカバーリングや攻撃への起点としてチームの屋台骨となり、日本らしいリズムを引き出していた。

 こうしてDF、ボランチが肯定傾向にあるのに対し、競争が激化しているのが2列目だ。今回はトップ下で鎌田が確実に割って入り、初戦で圧倒的な突破力で流れを変えた伊東純也は、2戦目では再三のボール奪取で守備面での貢献も見せた。注目の久保は、足もとにボールがあれば段違いの質を持つが、それ以外が発展途上で森保構想では攻撃打開の有力なカードにとどまっている。もっともこのポジションは国内にも三笘薫を筆頭に面白い素材が目白押しなので、枯渇の懸念は要らない。

 最後にFWはゲーム展開の影響もあり、珍しく大迫が効果的に絡めなかったが、依然として信頼度は絶大。今回も大迫不在のオプションの適解は得られなかったが、2戦目終盤の鎌田+南野という選択は、ひとつのヒントになるのかもしれない。

取材・文●加部 究(スポーツライター)