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予算 1000万円オーバー

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)

アウディにとって日本市場で初となる100%電気自動車の「eトロン・スポーツバック」が発売された。

【画像】アウディeトロン・スポーツバック【細部まで見る】 全102枚

今年になって各社から続々と電気自動車(EV)が登場しているが、アウディの参入によりEVのプレミアムSUVクラスが一躍注目される存在となった。


アウディeトロン・スポーツバック    上野和秀

そこでアウディeトロン・スポーツバックの直接的なライバルとなるメルセデス・ベンツEQC、ジャガーIペイス、そしてテスラ・モデルXを、10の項目ごとに比較してみた。

改めてこの4台を見直してみると、奇しくも4台ともクーペ・タイプで、オフロード志向ではなく都会志向となるラージ・クロスオーバーSUVクラスの傾向を見事に表していた。

なお、安全運転支援装備は、4モデルで大きな差がないため比較項目には加えていない。

ボディサイズ

どんなクルマでも、検討する際にボディサイズは重要な要素になる。

ここでは全長×全幅×全高にくわえ、ホイールベースもピックアップしてみた。


低く構えたクーペライクなフォルムがジャガーIペイスの特徴。4台のなかで最も小さいが、ホイールベースは最長。    花村英典

ジャガーが車幅も含めて最もコンパクトだが、ホイールベースは最も長い。

テスラは唯一の5m超えとなり、車幅も2mに迫る。

アウディeトロン・スポーツバック:4900×1935×1615mm(ホイールベース:2930mm)
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:4770×1925×1625mm (2875mm)
ジャガーIペイス:4695×1895×1565mm(2990mm)
テスラ・モデルX:5037×1999×1684mm(2965mm)

車両重量

大きくてかさむバッテリーを備えるEVは、どうしても重くなってしまう。

しかし、それぞれ近似内燃モデルに比べ1〜2割増に抑えられている。


アウディeトロン・スポーツバックの内装    上野和秀

車重的にはコンパクトなジャガーが最も軽く、最も重いテスラのパフォーマンス仕様に対し342kgものアドバンテージを得ている。

アウディeトロン・スポーツバック:2560kg
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:2495〜2500kg
ジャガーIペイス:2230〜2240kg
テスラ・モデルX:2533kg(ロングレンジ)/2572kg(パフォーマンス)

最高出力

今回取り上げた4モデルは、すべて2モーター式のAWDとなる。

ここでは前後のモーターの出力を合計したシステム最高出力を記してみた。


比較する4台のなかでは、唯一EV専業メーカーのテスラ。そのパフォーマンスは飛び抜けている。    AUTOCAR編集部

テスラは航続距離重視の「ロングレンジ」と、性能重視の「パフォーマンス」の2タイプが用意されている。

アウディeトロン・スポーツバック:360ps(ブースト時:408ps)
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:408ps
ジャガーIペイス:400ps
テスラ・モデルX:476ps(ロングレンジ)/836ps(パフォーマンス)

最大トルク

トルクの厚さも電動モーターを使うEVは有利だ。平均すると約2.5tもの巨体を軽々と走らせてくれ、ピックアップにも優れる。

ここでもテスラが先頭を切るが、そこにメルセデス・ベンツが続く。


常用域ではいたって普通のクルマのように扱えるEQC。しかし、一度スロットルペダルを深く踏み込むと、EVらしい異次元の加速をする。    前田恵介

アウディは控えめな仕立てとなっている。

アウディeトロン・スポーツバック:57.2kg-m(ブースト時:67.7kg-m)
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:78.0kg-m
ジャガーIペイス:70.9kg-m
テスラ・モデルX:76.5kg-m(ロングレンジ)/102.0kg-m(パフォーマンス)

バッテリー容量

EVの航続距離を左右するのがバッテリー容量だ。

しかしスペースに限りがあるためむやみには拡大できないジレンマがある。


アウディeトロン・スポーツバック    上野和秀

どのモデルもフロア下に収めるレイアウトとされ、低重心化に貢献している。

ここでは総電力量と総電圧をチェックしてみた。

アウディeトロン・スポーツバック:95kWh/397V
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:80kWh/349V
ジャガーIペイス:90kWh/388.8V
テスラ・モデルX:100kWh/400V

航続距離

EVにとって最も大きな性能指標となるのが、航続距離の長さだ。

4モデルともWLTCモードでのメーカー発表値となる。


ジャガーIペイスの内装    上野和秀

ここではテスラが強さを見せ、ロングレンジ仕様は唯一500kmをオーバー。

パフォーマンス仕様の487kmも立派で、そこにジャガーが続いた。

アウディeトロン・スポーツバック:405km
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:400km
ジャガーIペイス:438km
テスラ・モデルX:507km(ロングレンジ)487km(パフォーマンス)

最高速度

クロスオーバーSUVというキャクター故に、ヨーロッパ勢の最高速度は控えめとされている。

しかし、EV専業メーカーのテスラだけは自らのパフォーマンスを誇示すべく、ワンランク上となる250km/hを謳う。


メルセデス・ベンツEQC 400 4マティックの内装    前田恵介

アウディeトロン・スポーツバック:200km/h
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:180km/h(リミッター作動)
ジャガーIペイス:200km/h
テスラ・モデルX:250km/h

0-100km/h加速

起動時のトルクが大きい電動モーターの特性がいかんなく発揮されるEVにとって、発進加速は得意科目の1つだ。

ここではテスラが圧倒的で、パフォーマンス仕様の2.8秒というタイムはマクラーレン・セナと同じで、フェラーリ488ピスタを上回る驚愕の加速性能だ。


アウディeトロン・スポーツバック    上野和秀

アウディeトロン・スポーツバック(Sモード・ブースト時):5.7秒(Dレンジ:6.6秒)
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:5.1秒
ジャガーIペイス:4.8秒
テスラ・モデルX:4.6秒(ロングレンジ)/2.8秒(パフォーマンス)

日本価格

どんなクルマでも最終的な判断基準になるのは、お値段だろう。

この基準でチェックして行くとジャガーが最もお値ごろで、そこにテスラ、メルセデス・ベンツが続く。


アウディeトロン・スポーツバック    上野和秀

ニューカマーとなるアウディ、その上に位置する少々高めの価格設定となっている。

アウディeトロン・スポーツバック:1327〜1346万円
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:1080〜1117万円
ジャガーIペイス:976〜1184万円
テスラ・モデルX:1059万円(ロングレンジ)/1299万円(パフォーマンス)

トランク

4モデルとも5ドア・ハッチバックのボディで、テスラ以外は後席を起こした状態と後席を畳んだ時の容量を記載。

テスラは3列目シートを使用した状態と、2・3列目シートを畳んだ状態の数値。


アウディeトロン・スポーツバックのトランク    上野和秀

なおテスラとジャガーにはフロントにもラゲッジ・スペースが存在する。

アウディeトロン・スポーツバック:616〜1725L
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティック:500〜1460L
ジャガーIペイス:505L〜1163L(フロント:27L)
テスラ・モデルX:356L〜2487L(フロント:187L)

今回紹介したラージ・クロスオーバーSUVの4台を較べてみると、性能的に極端な差はない。

むしろ、それぞれのメーカーの伝統や持ち味を感じさせるフィニッシュと乗り味の違いが興味深い。

感覚的な部分は4車4様でかなり違うだけに、選択にあたっては一度実車に試乗して確認することをお勧めしたい。