週末、本当に久しぶりに親友が家に来る。

家で一緒にごはんでも、と伝えたが、手の込んだおもてなしをするのもかえって気づまりな間柄。サラダにパスタ、バゲットなどをつまみながら、長くとりとめのない近況報告ができればいい。

ならば、いま家にあるものよりちょっと良い食材や調味料を買いに行こうと、同じ沿線に住む同僚に教えてもらった店に向かっているところだ。

いつもの食材を「本物」が変えていく

『カーサ・アンジェリーナ』は桜新町駅から徒歩5分ほど、サザエさん通り商店街にあるオリーブオイル専門店。店内にはオリーブオイルやバルサミコ酢はもちろん、チーズや様々な色や形のパスタ、棚にはパスタソース類の瓶が所狭しと並び、奥には生ハムのスライサーまである。新鮮な野菜を足せば、イタリアンが何品も出来てしまいそうな光景に心が躍る。

料理講師として活躍していた米原さんが「身近に本物の食材があれば、家でもレストランのような料理が楽しめるはず」と、2015年に夫婦でオープンしたお店。イタリア、フランスなど現地で選んだ食材や、長年なじみの輸入者から仕入れた調味料が数百種類も並ぶ、いわば食のセレクトショップだ。

オリーブオイルより先に目に入ってきたのは、まるでオードトワレのような美しいスプレー瓶。これは5年も熟成させた白バルサミコで、サラダやカルパッチョにまんべんなくスプレーできるため味がよくなじむのだという。味見すると、フルーティーな酸味と強い甘みに驚かされる。肉、魚料理に使う時も砂糖やはちみつなどを足す必要がなく、簡単に味が決まるそうだ。







自然にレシピのアイデアが生まれ、行き交う場に

「その白バルサミコは、こちらと混ぜればドレッシングになりますよ」と提案されたのが、オレンジフレーバーのオリーブオイル。まるで鼻先で絞ったかのようなブラッドオレンジの爽やかな香りがはじけ、オリーブらしいコクがありクセは少ない。デリでおなじみ、キャロットラペもこの二つで作れるというから助かる。

また、レンジでチンしたじゃがいもとタコをあえるだけの、簡単なサラダも提案してくれた。同じシリーズのレモンフレーバーのオイルと白バルサミコだけで、本格的な味に仕上がるのだという。

簡単で美味しそう! 何よりこの優美な瓶たちをテーブルに並べて、お皿の上でサラダを仕上げることを想像すると楽しみになった。

その間にもご近所さんらしき女性がやってきて、「前に買ったこのパスタ、トマトとツナ缶で和えたら美味しかった」と気軽な報告が店内にこぼれる。米原さん曰く、長い時間をかけて作られ、はるばるこの店にたどり着いた食材はみな、店名の由来でもある“小さな天使”なのだそうだ。「だから、行先でどうしているかわかると嬉しいんです」と微笑んだ。

食材や調味料を、そんなふうに慈しんだことがあったかしら、と、軽く衝撃を受けて店を出る。二つの瓶とパスタを抱え、これから買う野菜たちとともに、お皿の上で羽を広げさせようと、こっそり誓うのだった。







店舗情報

カーサ・アンジェリーナ

住所:東京都世田谷区桜新町1-25-25

アクセス:桜新町駅 徒歩5分

電話番号:03-3701-3301

営業時間:11:00〜20:00

定休日:火

新型コロナウィルスの感染拡大防止などにより、各店舗が臨時休業や営業時間の短縮を行なっております。おでかけ前に、営業状況など各店舗へご確認ください。

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