「お辞儀ハンコ」は「決められたルールでも何でもない謎マナー」

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新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークを導入する企業が増えた。一方、いまだ「書類に印鑑を押すため」だけに出社している人も。こうした日本の「ハンコ文化」を不要だとする声が強まっている。河野太郎行政改革担当相は就任早々、行政手続きでの印鑑廃止を打ち出した。

ハンコ文化の中には、「お辞儀ハンコ」と呼ばれるビジネスマナーがあるとされる。稟議書など複数人の承認が必要な書類に押印する際は、印鑑をあえて左に傾けて押すべきというものだ。ハンコ不要論が高まる今、この不思議な習慣の実情を探った。

「評価を上げてもらうために言われなくても」

お辞儀ハンコについて、J-CASTトレンドは企業に勤める20〜50代の男女4人に話を聞いた。IT企業勤務の20代男性は、「存在自体はツイッターで見て知っている」としつつ、「実際に社内で行われているのは見たことがない」と回答した。20代女性会社員は「知らないし、やったことはない」、携帯ショップ店員の30代男性は「知っているけど自分はやらない」と答えた。また、不動産会社勤務の50代女性も同様に「知っているけど、実践する必要に迫られたことはない」。年代を問わず、お辞儀ハンコを実践している人は少ないようだ。

一方で、証券会社勤務の20代女性は「知っているし実践している」と回答。「傾ける角度は適当になる時もある」とした上で、「チェック担当が年配の人なので、評価を上げてもらうために言われなくても実践してしまう」と理由を語った。

悪しき風習「どんどん通用しなくなっていく」

今後、ハンコ文化自体が無くなれば、お辞儀ハンコの習慣も消えそうだ。ただ、ウェブ会議ツール「Zoom」で、日本企業が「上司を画面の上座に設定したい」という要望を出したという話もある。もしかしたら、お辞儀ハンコに代わる新たな「風習」が生まれるかもしれない。

J-CASTトレンドは、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに取材した。お辞儀ハンコは、

「決められたルールでも何でもない謎マナー」

と断言。コロナ禍を経たこれからの社会では、これまで当たり前だと思われていたこうした悪い意味での「日本人的な風習」は、どんどん通用しなくなっていくと語った。

「情報発信が容易になったことで、現在はネット上で色々な人たちが様々なマナーを生み出しています。それらを盲目的に取り入れるのではなく、自分が『良い』と思ったものだけ実践すればいい。ましてや、他人に強制するようなものでもありません」

西出さんは今回のコロナ禍を、日本人がお辞儀ハンコのような風習から脱却する、ある意味では「良いチャンス」と話した。