10月の欧州遠征では誰が輝きを放つのか注目だ。写真:サッカーダイジェスト

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 日本代表の欧州遠征メンバーが10月1日に発表される。森保一監督は今回、海外組のみのメンバー構成となることを明言しているが、果たして現状のチームで軸となるべき選手は誰なのか、また新戦力として台頭しそうな人材は? 文●加部究(スポーツライター)

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【画像】最後に欧州組を招集したW杯アジア2次予選キルギス戦メンバー

 西野朗監督体制で臨んだロシア・ワールドカップは、ひとつの時代の集大成を意味するメンバー構成で戦った。当然スタッフの一員として参加した現森保一監督もそれを考慮し、就任初戦から将来を見据えて代謝を意識した。特に日本のストロング・ポイントとなる攻撃的MF(2列目)の3枚は、中島翔也、南野拓実、堂安律の抜擢でスタメン総入れ替えになった。また当時は冒険的な人選に映った冨安健洋も大ブレイクを果たし、非常に幸先の良い滑り出しとなった。

 だがそれから2年間で状況は少しずつ変わっている。冨安がユーティリティー性も増し、不可欠な存在として価値を高めているのに対し、2列目の序列は入れ替わったと見るべきだ。3人とも森保監督の就任当時に比べれば、それぞれポルト、リバプール、PSV(現在はビーレフェルト)とステップアップを果たした。しかし欧州最高級のチームに移籍した南野が結果を出し始めたのに対し、中島と堂安は苦戦を強いられている。逆に欧州レベルでの注目株として久保建英が急速に評価を高めており、さすがにかつては招集をしても起用を見送った森保監督も、使わざるを得ない存在になった。

 つまり現状で日本代表に不可欠なのは、冨安、南野、久保、それにマルセイユで円熟期を迎えている酒井宏樹の4人だろう。一方でコロナ禍による中断前までは、大迫勇也、柴崎岳、吉田麻也、長友佑都、川島永嗣もスタメンの常連として定着してきたわけだが、むしろこれらのポジションについては見直しを図らなければならない時期が来ている。
 
 既にノックアウトステージに絞り込まれていた欧州チャンピオンズ・リーグは無観客の集中開催で強行されたが、今後ワールドカップ規模のイベントがこれまでと同様に行なわれるとは思えない。開催年、開催国、参加国数なども流動的だと見ておくべきで、将来の展望も長めのスパンで考えておく必要がある。例えば日本の宝庫と言える攻撃的MFなら、その都度最適な選手を使っていても困窮することはない。しかし反面、明らかに手薄なポジションは、敢えてギャンブルを冒しても後継候補を発掘していかなければならない。

 とりわけ最重要課題がGK、左SB、それに大迫不在の戦い方の模索だ。まずGKは戦術にも密接に関係してくるので、早めに方針を定めて素材重視で経験を積ませていく抜本改革も視野に入れていくべきかもしれない。少なくとも条件に近い資質を備えた大迫敬介らを優先的に抜擢したり、下の世代の有望株を研修させたりすることも考えるべき猶予のない状況にある。

 また左SBはマルセイユでの長友の状態を見ても、取り敢えず安西幸輝の経験値を高めていきたい。現状でのベストは酒井高徳だろうが、本来レフティが断然有利という条件を考えれば小川諒也を競争に加えるのも一考の余地がある。
 
 さらに長年の課題となっているポスト大迫だが、これは大迫の代わりを探すより手駒に即して戦い方の幅を広げる方が効率的だろう。敢えて近い資質を持つ選手にこだわるなら鈴木優磨だが、欧州で結果を出している鎌田大地や久保、南野、さらには国内で急成長中の三笘薫や古橋亨梧らの特徴を組み合わせるなら、ゼロトップ的発想への転換も面白い。

 こうして前線の配置が変われば、ボランチの配役にも影響する。森保監督が全幅の信頼で送り出す柴崎も、これ以上出場機会が確保できないなら、やはり自身のコンディションとチーム内の競争力が懸念される。ロシアに移籍した橋本拳人や国内でも守田英正、三竿健斗が充実しており、大島僚太、田中碧らとの組み合わせで新たな可能性も見えてくる。

 そして最近は層の厚さを増しているセンターバックも、吉田のバックアップの準備が要る。欧州でプレーする板倉滉、さらにはハーフナー・ニッキらの状況を見極めながら、国内でも急ピッチで成長を遂げている渡辺剛に国際試合への順応の機会を与えていくべきだろう。

文●加部 究(スポーツライター)