試験測定の様子(写真)と、計測結果(左下)。鉄筋試験片上空(センサと鉄筋中央の距離約70mm)で試験機を転がしてラインスキャンすると、左下のグラフが得られ、瞬時に鉄筋深さと位置などが表示される。(画像: 大阪大学の発表資料より)

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 インフラの老朽化に伴う維持管理において、非破壊でコンクリート中の鉄筋の状況を把握する技術は重要性が高まっている。だがこれまでの多くの手法では、鉄筋のみを選択的かつ瞬時に非破壊で検出することは難しいとされており、インフラ維持管理におけるスピードアップやコスト削減における大きな課題の1つであった。大阪大学産業科学研究所の研究グループは26日、この課題に対して永久磁石を用いた新技術を開発し、その動作実証に成功したと発表した。

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 コンクリート中の鉄筋の位置や深さ、太さなどを同定する手法には電磁波レーダー法、電磁誘導法、レントゲン法などが挙げられる。しかしこれらの手法は、電線やパイプなども計測してしまい、鉄筋のみを選択的に検出することは難しい。また、鉄筋に強いパルス磁界を与えた際に発生する磁界を検出する方法も提案されてきたが、強力な電磁石が必要であった。

 そこで研究グループは、永久磁石を鉄筋に近づけたときに永久磁石周囲の磁界が変化することに着目した。この磁界変化の検出であれば、ネオジウム磁石の近くに磁気センサを配備しただけの、コンパクトな装置で行うことができる。研究グループは実際に試験機を試作し、鉄筋試験片の上空をスキャンして高感度に磁界変化を検知できることを動作実証した。

 動作実証では、試験機による測定結果をリアルタイムでタブレット画面上にて得られることが確認された。局所的な磁界変化を測定するだけでなく、自動計測ロボットによる2次元スキャンによって鉄筋試験片を視覚的に確認可能だ。通常の鉄筋と破断した鉄筋とで明らかなシグナルの違いも観察されており、鉄筋の破断箇所診断に応用することも可能であることが示されている。

 現在、2次元スキャンは自動計測ロボットを用いて行っているが、研究グループでは今後、その高速化を進めていきたいと述べている。また、AI解析技術など他の技術も駆使することで、3次元的な可視化も可能になることが期待される。これらの技術進歩により、インフラ老朽化予防保全がさらに進み、経済効果や人手不足解消への効果もあると考えられる。

 今回の研究成果は28日より開催される「イノベーションジャパン2020」にて公開される。