【寺田淳】「自分はちゃんと評価されてない」…文句ばかりの「勘違い中年会社員」を襲う悲劇 怒って会社を飛び出すと大変なことに…

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独立を目指す会社員が増えて来たが…

東京商工リサーチが7月3日に発表したところによると、2020年上半期に早期・希望退職者募集を実施した上場企業は41社となったそうです。これは、すでに2019年1年間の件数35社を6社上回っており、上半期で40社を超えるのは、リーマンショック後の2010年上半期の66社以来、10年ぶりとのことです。

こうした背景があるからでしょうか、昨年の後半以降、在職中の会社への不満から転職や資格取得による独立を目指すという40〜50代の相談者が増えてきました。

会社への不満と言えば、給料の問題や上司との人間関係を想像しがちですが、こうした独立や転職を考える人の相談では、こうした不満は実は多くありません。彼らの不満というのは、会社側の評価と自分の実績(への評価)に大きなギャップがあり、それが許せないということなのです。

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私は本来、退職するのに相応しい状況ではないにもかかわらず会社への感情的な不満から早まった退職をしてしまったために不幸なその後を送っている人を少なからず見てきました。また、会社から早期退職を強要されているが、その理由に納得できないという人からの相談を受けることも少なくありません。

しかし、そうした相談者の言葉にやや疑問を感じることがあるのも事実です。つまり、会社への不満が、本人の誤解に基づくもの、もっと言えば勝手な思い込みである場合というわけです。当然、そうした勝手な思い込みで会社を飛び出してもいい結果は得られません。

そこで今回は、「組織への貢献度の認識のギャップ」の事例を中心に、本人が分析する自己評価と、会社が下す評価のギャップが原因の不幸な事例を紹介していきたいと思います。

年下社員が先に昇進してしまった

・メーカー営業所所長 A所長 50歳(面談当時)

「私の若い時代は24時間仕事漬けが当たり前でした。先輩からも上司からもそういう鍛えられ方をしてきましたし、その結果、40歳を前にして今の役職に就くことになりました。

こんなふうに口火を切ると、Aさんは私に捲し立てました。

彼は、「部下とのランチでも、アフター5でもいかにして今の仕事の質を高めるか、実績の限界に挑むかを議論することは将来若手にとっても得難い財産になる」というのが信念で、勤務時間外にも部下とのコミュニケーションを取り、様々な言葉で発破をかけてきたそうです。

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本社での予算会議や販促会議、企画検討会では率先して発言し、場を移しての懇親会や交流会の席上でも若い頃と同じように徹底的に意見交換をしています。にもかかわらず、最近部下との距離を感じます。

「せっかくの貴重な経験談を聞く機会を設けてあげたのに、理由をつけて出てこなくなった。所長会議の際もどうも自分だけ懇親の場に呼ばれていないような気がする」のだそうです。

こうした不満が溜まっていたA所長にとって何より屈辱なのは、「自分よりも実績が低い若手が私を差し置いて昇格した」ことなのです。 

A所長によると、今の会社は変わった、これだけ仕事に全力で取り組むまじめな私が報われないなんて間違っている、とのこと。だから、会社が早期退職を募集しているこのタイミングで、「思い切って外に飛び出して、自分の実力を他の舞台で確かめたい」というのが、彼の相談でした。

彼の話を聞いていた私は、以前別件でお世話になった会社の人事部長との世間話の中で出てきた会話を思い出しました。それは「空気の読めない部下」「自己陶酔が過ぎる部下」を持つことの悩みですが、その部下というのが、まさに上記の管理職と同じで、自分の仕事に向けている熱量が正当に評価されていない=昇進が遅いことに常に不平不満を持っていたというのです。

上司と部下と立場は違っても、周囲に与える影響は共通しています。

どちらのケースも、恐らくは純粋に仕事一筋の思いからくる行動なのですが、周囲からは迷惑な存在としか見られません。せっかくの頑張りも度を超すと「自己陶酔もいい加減に!」「いい歳をしてオン/オフの切り替えも出来ないのか?」「時代遅れの自覚すら持ってない!」というマイナスの印象を与えてしまうのです。

確かにA所長の現役時代にはそのやり方が時代に適した方法だったのかもしれませんが、今も同じように通用するとは言えません。自分の成功事例に固執しているだけと周囲から見なされていることにまだ気付いていないようでした。

結局相談者のA所長は、その後当初の考え通り「自分を認めてくれる会社」を信じて早期退職を選択したものの、未だ(不本意な)アルバイト生活を続けています。

「若手の代弁者」気取りだけど…

・メーカー本社販促部門中間管理職 B主査 43才(面談当時)

「もともと、自分は精神年齢が若いんです、年下相手の方が会話も弾むんですよ!」「愛読書も20代と同じ雑誌がほとんどです!」

実際、40代のB主査は30代に見える若々しい方でした。

仕事の進め方も若手重視で、意思決定はボトムアップがモットーで、常に若手の考えを尊重し、彼らの要望を上に伝えてきた。「いわば若手社員の代弁者? でしょうか…」。

「もちろん、自身もアクティブに仕事に取り組んできました。会議の場では最新の情報をいち早く取り入れて今までにない視点からの提案や、最新のトレンドを意識した販促企画を提案。ワンパターン化した話はしたことがありません」というのが自慢です。

ところが、そんなB主査、「人事考課では私の良さがまったく評価されていないんですよ。みんな、前例主義で新しい取り組みに臆病なんですよ」と言います。

そこで、自身のキャラを活かせるようなベンチャー系に適職を考えているのだが、どうだろう。それが彼の相談でした。

彼の勤務先は歴史あるメーカーでした。そうした組織において彼が、本当に本人の言うような人間なら「貴重な異端児」ともなり得るのでしょうが、それは彼の勝手な自己評価に過ぎないのではないか、と思うようになりました。

面談を重ねる中で、本人が吹聴する専門的知識はその時だけ必要な最低限の範囲を取り急ぎ、浅く、薄く調べただけであり、提案内容にもどうもその場限りの思い付きのレベルで、なかには本当にその用語の意味を理解しているのか? と首を捻る場面もあったからです。

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実は、このケースで彼が私の事務所に相談に出向いた理由は、彼の上司の勧めでした。

「君の考えを第三者に聞いてもらってはどうか。そういう客観的な意見を聞いても損はないから」と水を向けたようです。

さらに付け加えると彼の会社は以前にセミナーを開催させて頂いた企業で、その際に知りあった上司の直属の部下だったのです。

その上司からあらかじめ会社側の見解を伝えられました。

会社は彼の仕事について「自分が興味を持った情報を収集するだけで仕事に活かしているとは言えない」「なぜもっと業務に必要な情報収集や分析に目を向けない?」といった評価をしているという話でしたが、面談の結果、私も、会社側の評価が適切であるという意見でした。

この時は、私の受けた印象と今後の修正すべき点を、本人にストレートに伝えました。その後しばらくはおとなしかったようですが、結局彼はその後、会社の先輩が興したイベント企画会社に「ヘッドハンティング」されたと連絡が来ました。しかし、安心したのもつかの間、程なくしてこのイベント会社も退職し、その後は音信不通だと先輩が教えてくれました。

会社と社員の「ズレ」の原点

先の事例は共に「親(会社)の心、子(社員)知らず、子の心、親認めず」と言えるでしょう。自分では期待以上の貢献をしている(はず)なのに、なぜに会社は、他と同じ評価しか(あるいは低い評価)しないのか? と社員が思う一方で、会社側もいつになったら自分を客観的に見ることが出来るんだ? 今の場所(職場)で評価されるためにすべきことをしていなければ評価できないのは当たり前だろう、と考えている。このズレが食い違いの原点と言えます。

その結果、今の職場で巻き返すことより自分のポテンシャル(あるかどうかもわかっていない)を引き出してくれる新天地に惹かれるか、そういう選択すらせずに不平不満を抱えたままの会社勤めを続けるといったネガティブな日々を過ごすかに分かれていきます。

ここまでは40代以上の管理職を例にしてきましたが、40代以下、30代の会社の中核を担う世代でも会社との評価のギャップに不満を持ち、相談に来るケースは少なくありません。 

特に目立つのが、「後出しじゃんけんでいいとこ取り」と「勝手に結論をまとめる評論家」タイプです。簡単に言いますと前者は他人の意見のいい箇所だけを取りまとめて意見が出尽くした後にさも自分の意見のように発表するタイプで、後者はどんな場合でも必ずひと言コメントだけを付け加えたり、勝手に結論を決めたりするようなタイプです。

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このどちらも自己評価では「リーダーシップを自認し」「今の役職以上の仕事をこなしている」となっていることが多いのです。自己満足は勝手にしていればいいのですが、周囲から見ればただのいい恰好したがりであり、他人のふんどしで相撲を取るいけ好かない奴と見なされますし、上司から見ても評価は厳しいものになるのは当然です。

にもかかわらず、彼らは「こんな力量のある人材をなぜこんな立場に置き去りにしている?」とこれまた会社や上司の判断に問題ありと相談に出向いてくるのです。そして、いかに自分は正しく評価されていないか、果たしてこのような会社にこのままいることは大いなる間違いではないのか、という思いを口にするのです。

昨年は利益が出ているうちに定年延長を前提にした人員の適正化を図るという名目で黒字リストラが始まり、今年はコロナ禍による市況低迷で深刻な赤字リストラが必至と言われています。このような背景で会社が考えることは共通しています。

会社が期待する成果をあげている、評価に値する人材を守るとともに、期待に応えていない、もう応えられないと判断した人材には厳しい対応を迫ります。その時点で軌道修正を図っても後の祭りです。

確かに、無能な上司の下に配属されたために不当な評価を下されるケースも少なくありません。またまったく正しく最適な意見を述べているものの、相手を選ばず、時と場所を考えないために評価されていないというケースもあるでしょう。

このようなケースを除き、多くのリストラ候補者リストに掲載されるのは自己分析が出来ていない、腹を割って話せる上司や同僚がいない、他責に逃げるという共通する特徴があると私は思っています。

人事評価に限りませんが、ギャップを感じたら、まずは自ら一歩引いて自分の言動や実績を客観的に分析する。そうすることで、ギャップの要因を把握することができ、ギャップを埋めるための行動に移れるはずです。そして、それが結果的に不幸な転職や独立という地雷を踏まないための最善策だと私は思っています。