アメリカ政府が、中国最大の半導体ファウンドリであるSMICの機器が「軍事的に許容できないリスクを抱えている」として、SMICへの輸出に政府への許可申請を義務づけることを計画していると報じられました。アメリカ政府がSMICへの輸出を規制することで、中国の半導体事業はさらに脅かされることとなります。

U.S. tightens exports to China's chipmaker SMIC, citing risk of military use | Reuters

https://www.reuters.com/article/us-usa-china-smic-idUSKBN26H0LN

US imposes trade sanctions on China's largest chipmaker SMIC - SiliconANGLE

https://siliconangle.com/2020/09/27/us-imposes-trade-sanctions-chinas-largest-chipmaker-smic/

US Moves to Cut Off Chinese Chipmaker SMIC With New Sanctions | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/news/us-moves-to-strangle-chinese-chipmaker-smic-with-new-sanctions

SMICの取引規制については、2020年9月にアメリカ政府がSMICを制裁リストに追加することを検討していたとロイターが報じています。

アメリカが半導体製造大手のSMICを「制裁リスト」に加えることを検討中 - GIGAZINE



ロイターが入手した商務省の書類によれば、SMICへ特定の機器を輸出するアメリカ企業は、今後個別に輸出許可を申請する必要があるとのこと。ロイターは、商務省がこれまでSMICに輸出する場合に許可を必要としなかったことから、今回の許可申請義務化はアメリカ政府の政策転換を示す動きだとしています。

アメリカ政府がSMICへの輸出規制を検討したのは、同じ中国の半導体企業であるHSMCが倒産の危機を迎えたことがきっかけといわれています。HSMCは185億ドル(約1兆9000億円)の資金で7nmプロセスの生産ラインを建設するプロジェクトを推進していましたが、資金不足で失敗し、苦境に立たされていると報じられていました。

中国の半導体製造業が資金不足により苦境に立たされている - GIGAZINE



テック系ニュースサイトのTom's Hardwareは、HSMCの生産力が落ちたことで、SMICは中国で最大のチップ生産企業となったと指摘。これまで14nmプロセスのチップを月に6000枚生産していたのが、2020年9月末までに月3万5000枚まで生産ラインを拡大させる予定だとのこと。



さらに、SMICの収益のうち、最大20%がHuaweiとの取引によるものだといわれています。Tom's Hardwareは、Huaweiが台湾の半導体ファウンドリであるTSMCと取引できなくなったため、SMICにチップの生産を依存するようになったと報じました。そのため、SMICへの取引規制はHuaweiにも大きな打撃を与えることが予想されます。

国際貿易を専門とする弁護士のニコラス・クライン氏は「国際経済の観点から見て、SMICやHuaweiのような中国の巨大企業に対する規制強化は、グローバルなサプライチェーンを通じて大きな波及効果をもたらすでしょう」と述べ、今回の輸出規制に中国政府が報復的な対応を見せる可能性が高いとしています。

なお、SMICは「輸出制限に関する公式の通知を受け取っていません」とコメントし、「当社は中国軍とは関係なく、軍や軍需企業に製品を製造していません」と述べています。