台風襲来でタワマン被害「武蔵小杉」の資産価値暴落は本当か?

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9月26日は、統計上、日本への台風襲来の回数が多い日であることから「台風襲来の日」とされています。そして台風襲来といって思い出されるのが、昨年10月の台風19号。多摩川が氾濫し、災害リスクが身近であることを改めて知らされました。そこで浸水被害にあった武蔵小杉はメディアでも大きく報道され、林立するタワーマンションの「資産価値の低下」と大々的に伝えられました。不動産オーナーとしては、台風被害が街の価値に与える影響も気になるところ。台風は武蔵小杉の街自体に、どのような影響を与えたのでしょうか。

「今年は台風が少ない」は本当か?

台風通過後の多摩川、奥に見えるのが武蔵小杉の街(撮影日時 : 2019/10/13)/PIXTA

9月26日は「台風襲来の日」とされています。統計上、日本への台風襲来の回数が多い日で、過去には、1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風と、1951年以降、死者・行方不明者の多かった3つの台風が、9月26日に襲来しています。

不動産オーナーにとって、災害リスクのひとつである台風は大変気になるところですが、今年、9月24日時点で12個の台風が発生。1951年以降、年平均25.6個の台風が発生しているので、今のところ、2020年は台風発生の少ない年になりそうです。

また例年、台風の本土(北海道、本州、四国、九州)への接近数*1は、5.5個。2019年には8個、2018年は10個の台風が本土に接近していましたが、2020年は今のところ4個。昨年、一昨年と比べると少ない印象ですが、接近数は例年並みといえそうです(図表1:地方ごとの台風接近数の平年値)。

一方、ニュースにもなっている通り、今のところ1個の台風も上陸*2していません。2019年、2018年ともに7〜10月にかけて5個の台風が上陸しているので、やはり少ない印象があります。ちなみに例年の台風の上陸は2.7個で、2019年や2018年は台風の上陸が多かった年だったようです。また1951年以降、もっとも台風の上陸が多かった年は、2004年の10個。逆に、台風の上陸がゼロだった年は、1984年、1986年、2000年、2008年だけです。

[図表1]地方ごとの台風接近数の平年値 出所:気象庁

*1 台風の接近:台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合

*2 台風の上陸:台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合

まだまだ台風シーズンは続きますし、最も上陸が遅かった台風は、1990年11月30日に和歌山県に上陸したものなので、これからも十分な警戒は必要です。

中古マンションの取引にみる、武蔵小杉の資産価値

近年、台風への注目が高まっているのは、最大風速59メートル以上の「スーパー台風」の日本上陸の回数が、今後増加するのではないか、という見解から。またその危険性が声高らかに伝えられるようになったのは、2019年10月の台風19号で、「住みたい街ランキング」の上位の常連の武蔵小杉や二子玉川で浸水被害に見舞われたことが大きかったのではないでしょうか。

特に近年、タワーマンションが次々と林立するようになり、急速にセレブタウン化した武蔵小杉で、その象徴であるタワーマンションの被害が大きかったことは、センセーショナルに伝えられました。不動産オーナーにとっても、災害リスクが身近であることを改めて知るきっかけになったに違いありません。

その武蔵小杉では、浸水被害により「タワーマンションの資産価値低下」と、多くのメディアで伝えられました。「資産価値の低下は、武蔵小杉全体に及んでいる」という印象をもった人も多いでしょう。果たして、実態はどうなのでしょうか。

国土交通省 「土地情報総合システム」で実際の中古マンションの取引きについてみていくと、武蔵小杉周辺では、2015年以降、四半期平均21件の取引きがありました。特に取引件数が多かったのが、2019年第2四半期(4〜6月)の33件。台風19号が襲来した直後の2019年第4四半期には18件、そして新型コロナの感染拡大の懸念が大きくなっていった2020年第1四半期には、12件の取引きがありました(図表2)

[図表2]武蔵小杉の中古マンションの取引件数 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

これらから、1平米当たりの単価の推移をみていくと、2015年79.52万円/屐2016年86.46万円/屐2017年85.61万円/屐2018年97.35万円/屐2019年84.56万円/屬函台風19号が襲来した2019年は平米単価を大きく下げています(図表3)

[図表3]2015〜2019年、武蔵小杉、中古マンションの平米単価の推移 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

しかし四半期ごとにみていくと、台風被害の前の2019年第3四半期(7〜9月)は82.91万/岷漾2019年第4四半期(10〜12月)は88.80万円/屐2020年第1四半期(1〜3月)は87.46/嵋円と、台風被害の影響は特に見出すことはできません。2019年は第3四半期以前に高価格帯のマンション取引きが集中し、平均単価を引き上げていたものと考えらえます。

[図表4]2019年第3四半期〜2020年第1四半期 武蔵小杉、中古マンション平米単価の推移 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

また年に1度、3月に公的な地価の目安である「地価公示」の推移をみていくと、2015年以降右肩上がりで、2019年3月では99万2333円/屐2020年3月では106万7000円/屬函値上がり率は7.52%の上昇。過去20年間をみても、2008年の+15.08%、2013年+7.69%に続く上昇でした。

[図表5]武蔵小杉周辺の地価の推移 出所:国土交通省発表に基づき作成

ひとつの台風被害の影響が、どれほどのものか、またどれくらい時間が経ってから影響がでるのか、定かではありませんが、現時点で、昨年の台風被害により、被害にあったタワーマンションの資産価値は低下したかもしれませんが、「武蔵小杉の街自体の価値が下がったとはいえない」というのが正解ではないでしょうか。

台風でエリア自体の価値が下がる、ということは、いまのところなさそうですが、所有物件自体が被害を受ければ、不動産オーナーの損害は甚大です。そのリスクをカバーしてくれるのが保険ですが、近年、毎年のように大規模洪水が発生したりしていることを顧みて、保険料が値上りしています。

現状の値上り分は、一昨年までの被害に基づいたもので、去年や今年の被害は織り込まれていません。今後も保険料のアップは覚悟しておかなければならず、保険料の値上りを想定した経営が、不動産オーナーには求められます。