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 筆者がリーダーシップ実践力を高める演習をしていてよく受ける質問に、「指示をしても部下や後輩が動かない」というものがある。一方、「上司からの指示が腑に落ちない」というものもある。また、なかには「上司からの指示が、いちいちいらつく」というように抵抗感が高まってしまっているケースもある。

◆6つの意欲が高まる要素

 その原因を突き詰めていくと、相手のモチベーションファクターに関心がなかったり、自分と同じだと思いこんでいたり、別のモチベーションファクターだと誤解していたり、相手が自分のモチベーションファクターに合わせるべきだという固定観念があることがわかってきた。

 「モチベーションファクター」とは、その名のとおり、モチベーションが高まるファクター、すなわち意欲が高まる要素だ。

 チャレンジすることで意欲が高まる人もいれば(目標達成)、任されること(自律裁量)、責任を果たすこと(地位権限)で意欲が高まる人もいる。周囲と連携することで意欲が高まる人もいれば(他者協調)、リスク回避すること(安定保障)、バランスをとること(公私調和)で意欲が高まる人もいる。

 筆者はモチベーションファクターを「目標達成」「自律裁量」「地位権限」「他者協調」「安定保障」「公私調和」の6つの要素にわけ、前三者の強い人を「牽引志向」、後三者の強い人を「調和志向」の高い人と呼んでいる。

 私がなぜこの6つにモチベーションファクターをわけるようになったかと言えば、日本のビジネスパーソンのモチベーションファクターは、この6つにだいたい均等に分布されるからだ。私の演習参加者のデータでは、牽引志向と調和志向も51.4%:48.6%というように、だいたい半々にわかれる。

◆モチベーションの上がる指示出しとは

 このモチベーションファクターを無視してしまうと、リスクを回避したい安定保障の部下に、目標達成の上司が「リスクを度外視してチャレンジしろ」と叱咤激励してしまって抵抗感を与えてしまう。

 逆に、責任を果たしたい地位権限の人に、他者協調の上司が「おまえには無理だから、相手に任せる」と言って、相手のやる気を削いでしまうことになる。
 
 相手のモチベーションファクターを組み込んで、「バックアッププランも考えながら(安定保障)、チャレンジしろ」と言えば、安定保障の人のモチベーションを高める指示ができる。

 「達成に向けてしっかり取り組んで、しかし、難しければ相手のサポートを得たらよい」というコミュニケーションならば、地位権限の人のモチベーションを下げずに、サポート体制を築くことができる。

◆6分の5に抵抗感を与えるリスクも

 スキルを発揮しないで思いつくままに話してしまうと、誰しも自分のモチベーションファクターに沿った伝達や指示や助言になってしまうものだ。

 ビジネスパーソンのモチベーションファクターは6つに分布されているので、自分のモチベーションファクターに沿った言い方が合致するのは、6分の1だと言える。6分の5にあたる、大多数の相手には抵抗感を与えかねない。

 そこで、自分のモチベーションファクターに沿った言い方ではなく、相手のモチベーションファクターの内容やフレーズを組み込んで指示したり、助言すれば、相手のモチベーションファクターの琴線にふれた話になり、格段に相手の腹落ち度合が高まり、相手を巻き込むことができる。

 上司と部下のコミュニケーションギャップも、シニアと若手の断絶も、統合した組織や会社の対立も、ひいては夫婦の性格の不一致も、つきつめれば、モチベーションファクターのギャップと、相手のモチベーションファクターをふまえたコミュニケーションができないことに行き着くのだ。