説得力のある説明ができる人とできない人は、なにが違うのでしょうか(写真:mits/PIXTA)

上司や営業先の理解を得たいのに、うまくいかないことはありませんか。説得力のある説明ができる人と必死に説明してもうまくいかない人はなにが違うのでしょうか。

このたび『入社1年目から差がつくロジカル・シンキング練習帳』を上梓した、日本最大級のビジネススクール、グロービス経営大学院で教鞭を執る岡重文氏が、説得力を高めるために多くの人が陥ってしまう誤解と対応方法について解説します。

言いたいことだけ言えばいいわけではない

言いたいことに説得力をもたせるために複数の根拠を準備していざ臨んだプレゼンで、思っていたようないい結果を出せずに悩んだ経験のある人はいませんか。


自分の主張を相手に納得してもうために時間をかけて一生懸命準備しても、その頑張る方向性が間違っていたら、それはもったいないことです。では、いったい説得力ある話ができない人とできる人にどのような差があるのでしょうか。

実は、できない人には自分が結論づけたいことを根拠づけるために、言いたいことを支える情報を直接探しにいく傾向があります。

しかし、根拠を強めるには、自分にとって都合の悪い情報を集めることが重要です。自分が根拠づけたい結論を支えるための情報を探していくことは大事ですが、結論を直接的に支える根拠のみを探しにいくだけでは十分ではないということです。

では、自分にとって都合の悪い情報を集めるにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは、「言いたいことの逆」を確認するということです。

具体例をだしながら説明をするので、一緒に考えてみてください。

人事部に所属しているあなた。最近、若手社員のモチベーションが下がっているように感じています。そこで、何人かの若手社員にヒアリングしてみたところ、将来のキャリアがみえず不安で、モチベーションを高く維持できていない、ということがわかりました。このことを部長に理解してもらうためにはどのように伝えればいいでしょうか。

やってしまいがちなのは、若手全員にモチベーションに関するヒアリングをすることです。ただ、これは自分の言いたいことを支える情報を直接探しただけにすぎません。

説得力ある根拠をつくるためには、言いたいことの逆を確認するということが大事です。今回の場合、「若手のモチベーションが下がっている」ということを言うためには、若手以外のモチベーションがどうなっているかをきちんと調べる必要があるということです。

仮に若手以外もモチベーションが下がっていたとすると、起っていることは、「社員全員のモチベーションが下がっている」ということになります。


逆に、若手以外のモチベーションは下がっていないという場合に初めて「若手のモチベーションは下がっている」と言うことができます。

自分の言いたいことの逆を確認して、言いたいことが起こっていないという場合に、自分の言いたいことが正しいということがわかります。

積極的に逆を確認していくようにしましょう。

原因と結果の関係性を明らかにできる

何が起こっているかという事実を明確にするために、積極的に言いたいことの逆を確認するということに取り組んできました。この頭の使い方は、原因と結果の関係性を明らかにしていく場合にも活用できます。

例えば、ある薬が有効だということを言うためには、どうすればよいかを考えてみましょう。

よくやってしまうのは、その薬を服用して、効果があった人を探して、「私の周りの何人かに聞いてみたけど5人も効果があったと言っています」というやり方です。

これでは、自分の言いたいことを支えるための情報を直接取りにいっただけになります。

その薬に効果があったということを言うためには、薬を服用したけど効果がなかった人がどれだけいたのかがわからないとその薬の有用性がわかりません。

服用して効果があったという人が5人、服用したけれども効果がなかったという人が1人の場合と、服用して効果があったという人が5人、服用したけれども効果がなかったという人が5人の場合では、薬の有用性に対する判断が変わるということです。

前者であれば、薬は効果がありそうと解釈できそうですが、後者は、それほど効くわけではなさそうという印象になります。逆説的ですが、薬を服用したけれども効かなかった人を積極的に探すことが、薬が効いたかどうかの判断の精度を高めてくれます。


言いたいことの「逆」の情報が根拠を強める

そして、もう1つ重要なことが、薬を服用しなかった人がどうだったかということです。前述のところで満足して、考えを止めてしまう人が多いのですが、薬が有用だったということを言うためには、薬を服用しなかった人たちがどうだったかを比較しておかなければなりません。

【ケースA】
薬を服用し、回復した人       5人 
薬を服用し、回復しなかった人    1人
薬を服用しないで、回復した人    1人 
薬を服用しないで、回復しなかった人 5人

【ケースB】
薬を服用し、回復した人       5人 
薬を服用し、回復しなかった人    1人
薬を服用しないで、回復した人    4人 
薬を服用しないで、回復しなかった人 2人

【ケースA】は、薬を服用しないで回復した人は1人しかいないため、「薬が効いて回復したのでは」と考えることができます。

一方、【ケースB】の場合は、薬を服用しないで回復した人が4人いるので、「回復したのは、必ずしも薬が効いたわけではないかもしれない」ということがわかります。


このように、薬が有用かどうかは、薬を使わなかった人がどのような状況であったかと比較してはじめてわかることになります。

薬を服用して、回復した人だけを調べるのではなく、薬を服用して、回復しなかった人を確認する。さらには、薬を服用しなかった人がどのような状況であったかを確認する。

自分の言いたいことの逆を積極的に確認することが、結果的に自分の言いたいことの根拠を強めることにつながります。ぜひ、心掛けてみてください。