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◆「マスクをしていると感情が読めない」は本当か?

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。コロナ拡大ピーク時に比べ、人との交流が増え始めたものの、ほとんどの方が、まだまだマスクを手放すことは出来ず、マスクを着け、コミュニケーションをしています。

 マスクを着けているため、「相手の表情を読むことが出来ない」「自分の表情を伝えることが出来ない」そんな不安の声を多々耳にします。接客業などでは、「マスクの下は笑顔です」という表示やにっこりマークが描かれたマスクをされている方々も目にします。

 しかし、マスクを着けているから「相手の表情が読めない」「自分の表情が伝わらない」というのは、作られた表情については、ある程度当てはまるかも知れませんが、真実の表情については、科学は逆を示しています。

 つまり、心から感じられる感情、本心は、顔の下半分よりも顔の上半分に表れる、ということです。したがいまして、マスクで顔の下半分が隠れていても、見えている顔の上半分から、相手の本心は読みとれますし、自分の本心も伝わる、ということになります。

 なぜでしょうか?

◆実は、顔の上半分に本心が表れる

 顔の下半分には口があります。口の周りの筋肉は、話すこと、食べることを中心に、平生より、よく動かしています。そのため、意図的なコントロールが容易です。一方、顔の上半分の筋肉は、顔の下半分の筋肉よりも動かす頻度が少ないため、意図的なコントロールが難しいのです。顔面筋も筋肉ですので、鍛えられていない、つまり、動かされていないと、自在に操ることが出来ないのです。

 具体的な研究を一つ紹介したいと思います。

 実験用の部屋に、封筒に入れられた映画のチケットがあります。ある実験参加者はそのチケットを盗みます。別の実験参加者は盗みません。その後、実験参加者はインタビューを受けます。チケットを盗んだ参加者は「盗んでいない」とウソをつき、盗んでいない参加者は「盗んでいない」と正直に答えるよう指示を受けています。

 また、実験参加者は、私たちがウソをつくときの傾向として、「騙す喜び」といい「口角が引き上がってしまう」ことがある、さらに、ウソが露呈する可能性に恐怖を感じ「眉が引き上げられてしまう」ことがあるという知識が与えられてます。ウソをついている場合、質問者をウソがばれないように、真実を述べている場合、質問者に誤解されないように、これら二つの動きを抑制するように指示されています。

 実験の結果、口角が引き上がる動きの出現率に比べ、眉が引き上げられる動きの出現率は低下しないということがわかりました。

◆意図的に動かせない筋肉は「信頼できる筋肉」

 いかがでしょうか?

 この筋肉を動かすと「ウソがばれますよ」あるいは「ウソと疑われますよ」という具体的な指示を受けていたにも関わらず、顔の下半分にある口角の動きの抑制に比べ、顔の上半分にある眉の動きの抑制は上手く行かなかった、ということです。

 この研究は、抑制することが難しい表情筋について検証していますが、意図的に作ることが難しい表情筋について検証している様々な研究もあります。

 この意図的に作ることが難しい筋肉のことを「信頼できる筋肉」といいます。研究の詳述は省略しますが、恐怖を抱くときに生じる「眉が引き上げられる+眉が中央に引き寄せられる」動き、悲しみを抱くときに生じる「眉の内側が引き上げられる」動き、幸福を抱くときに生じる「頬が引き上げられる」動きが顔の上半分にある「信頼できる筋肉」としてわかっており、顔の下半分よりもその種類が多いのです(表情の具体例を画像を通じて知りたい方は、「マスクの上からどうすれば相手の表情を読めるのか? 微表情専門家が教える注目のポイントとは?」をご覧ください)。