毎日すっぴんと部屋着で過ごし、久しぶりにタイトスカートを履いたら、なんだかきつい…?

リモートワークと自粛生活で美容への努力を怠り「女としてヤバい…」と、嘆いていた損保OL・美和。

だが、そんな彼女にまさかのモテ期が到来している。

その理由は、一体…!?

◆これまでのあらすじ

マスクを外してもなお、モテていることを確認した美和。だが“マスク効果”なしにモテている理由が、どうしても分からない。

そんな中、意中の人・善斗と再びデートへ行くことになり…?

▶前回:「彼の前だったら大丈夫…」2人きりのオフィスで、女が全てをさらけ出した夜




「う〜ん。これも微妙だなあ…」

美和は、全身鏡に映った自分と向き合いながら悩んでいた。

今日は、善斗とのデートなのだ。さきほどから1人ファッションショーをしているが、どれもしっくりこない。

再びクローゼットを漁っていると、美和の脳裏にある考えが浮かんだ。

―ちょっと違う印象を与えるために、パンツスタイルでもいいかも!

職場では、基本的にスカートかワンピースを着ている。せっかく休日に会うのだ。何だか雰囲気が違うと思ってもらうには良いギャップかもしれない。

白のシャツにデニム。アクセントに大きめのピアスをつけたら、シンプルだが洗練された雰囲気を与えられるだろう。

だが、鏡を見る前に違和感を覚えた。

履けないことはないが、デニムはピッチピチ。

慌てて鏡を覗き込むと、そこには自分の思い描いていたパンツスタイルとはかけ離れた姿が映っていて、美和は肩を落とした。

―このままじゃ、絶対に脱げない…。

篤哉と善斗の2人からアプローチを受けているが、その先が怖い。どちらかとそういう関係になったとしても、今のわがままボディでは絶対に脱げないからだ。

美和は、そろそろ本気で痩せなければと思った。


想像以上の“わがままボディ”に落ち込みながら、善斗とのデートに臨んだが…?


積極的すぎるアプローチ


「おはようございます。って、どうしたんですか? あまり顔色がよくないような」

善斗は待ち合わせ場所に現れるなり、心配そうに尋ねてきた。

「大丈夫です!」

ダイエット第1弾として、朝ごはんを抜いてきたのが原因だろう。手っ取り早く痩せるには、食事制限しかない。…それにしてもすぐ顔色に現れるなんて、正直な体だ。

まったくイヤになると思いながら、美和は笑顔で返す。

善斗は爽やかな白シャツに細身のパンツ姿だった。がっしりとした篤哉の腕とは対照的に、彼の腕や足はスラリと細長い。

―デニムなんて履いて来なくて正解だったわ。

善斗の隣を歩いたら、自分の肉付きの良さが強調されるところだったと、ホッと胸をなでおろした。

そして、いつの間にか篤哉と善斗を比較している自分に気付いて赤面する。すると目の前の善斗が、なぜかニコッと笑った。

「あ、顔色戻りましたね。よかった」

美和が心の中で格闘していることなど知る由もない善斗は、美和の血色が戻ったことに安堵したようだった。そして、その穏やかな笑顔を直視することは、今の美和には難しかった。

「今日のワンピース、とってもいいですね」

「そ、そうですか…」

善斗が褒めてくれたことはとても嬉しいのに、ピチピチデニムを思い出すと素直に喜べない。




「色合いがいいですね」
「パンプスもオシャレで、僕そういうの好きです」
「そのネックレスも、美和さんの清楚なイメージにぴったりです」

水族館に向かう間、善斗は美和のことを絶賛した。褒めそやされているうちに、だんだんと今朝のことはそんなに深刻に考えなくてもよいのではないかという気になってくる。

―まあ、そう言ってくれるならそんなに気にしなくてもいいか。

結局、セーブしようとしていたランチも普段通り食べてしまう。すると思考力が戻ったのか、あることに気付いた。

―なんだか今日の善斗さん、すごい積極的…?

待ち合わせ場所で会ってすぐ、洋服を褒められたことに始まり、デート中も事あるごとに美和を褒めている。

おとなしいタイプだと思っていたが、意外と積極的らしい。職場では物静かなイメージだからこそ、そのギャップに驚いた。

―これはこれでアリかも♪

浮かれたことを考えていると、階段を踏み外した。

「危ない!」

よろけそうになった美和を支えた彼の腕は、見た目以上に逞しかった。自分の重さを心配した美和だったが、王道な展開に胸がキュンと高鳴ったのを自覚する。

そして、その日の夜。美和はさらに驚くことになる。

「ここを予約しています」

彼が立ち止まったのは、シャングリ・ラ ホテルの入り口だったのだ。


善斗が企んでいたこととは…?


裏腹なアプローチ


「え!?どうしたんですか、これ…」

先日、篤哉の前でも同じようなことを口にしたような気がするな、と思いながらも、美和は高層階から見る夜景に感動していた。

善斗はシャングリ・ラ ホテルのレストラン『ピャチェーレ』を、いつのまにか予約していたようだ。

しかし彼と2人、美味しいディナーを堪能したはいいものの、ここが“ホテル”というのだけが気がかりだった。

―善斗さんに限って、そんなこと…?

今朝、全身鏡で見た自分の姿を思い出しながらあれこれ考える。

デザートが運ばれてきたところで、後ろに気配を感じた。

なんだろうと思って振り向いた美和の目の前に広がっていたのは、花束だった。

「ほんの気持ちです」

善斗は答えた。その顔には少し照れが覗いている。

美和はその顔から目が離せなかった。目の前の男は、本当に善斗なのだろうか。

頭脳明晰で、冷静沈着。そんな言葉がよく似合う彼が、こんな情熱的なアプローチをしてくれるなんて夢にも思わなかった。

隠しきれない照れがさらに美和の心を掴んだ。きっと本当は恥ずかしいのだ。自分で似合わないことをしているという思いもあるだろう。

それを乗り越えて美和が喜ぶ演出をしてくれたことが、なによりも嬉しかった。




食事を終えた善斗は「すみません、荷物になってしまいましたね」と、花束を指差しながら申し訳なさそうに言った。

その後のことを心配していた美和だが、彼は爽やかに帰っていったのだ。

美和は善斗と別れてからも今日の余韻に浸っていた。紙袋に入れてもらった花束を眺める度、しばらくは何か辛いことがあっても乗り越えられそうだった。

―そういえば。

今日1日、善斗とは様々な話をした。会話の中で、職場に関する話題も当然あった。

美和は、自分のキャリアについてどうすべきか迷っているという不安を善斗に聞いてもらったが、彼は自分のことを話さなかった。

自分のことばかり話しすぎたかもしれないと、少し反省する。

―まあ、いっか。今日はすっごく楽しかったし!

自宅マンションへと向かう帰り道、身体が自然とスキップするように動き出す。

そういえば、すっかりスマホを確認するのを忘れていたことを思い出し、バッグから取り出すと、奇跡的に同じタイミングでトークが送られてきた。

「なんか進展あった?」

親友・ゆかりからのメッセージだった。

進展どころの騒ぎじゃないと思った美和だったが、今週の篤哉と善斗との出来事やそれに対する自分の感情をうまくまとめる自信がなかったので、当たり障りのない返信をしておく。

「あったよ〜!」

そして同時に、2人のどちらにしようか、本気でゆかりに相談に行くことを決めた。

▶前回:「彼の前だったら大丈夫…」2人きりのオフィスで、女が全てをさらけ出した夜

▶︎Next:9月25日 金曜更新予定
困惑しながらも幸せの絶頂にいる美和。どちらにすべきか、再び親友のゆかりに相談しに行くが…?



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