文大統領の右隣が起訴された尹美香議員

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疑惑発覚後も「文在寅大統領」は正義連よ尹議員を擁護してきた

 検察は9月14日、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の元理事長で与党議員の尹美香(ユン・ミヒャン)を業務上横領など8つの容疑で在宅起訴した。疑惑発覚後も文在寅大統領は正義連を擁護してきたのだが……。果たして、刑務所行きはあるのか?

 ソウル西部地検・刑事4部はこれまで、尹議員を被疑者として事情を聞いてきた。

 容疑を挙げれば、疑惑のデパート然としたものだ。金額が大きいものから挙げていくと……。

・共犯として一緒に起訴された韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、正義連の前身)の常任理事と共に、管轄官庁に登録せず、15年から19年まで計41億ウォンの寄付金品を募集した容疑。

文大統領の右隣が起訴された尹美香議員

・挺対協が運営してきた「戦争と女性人権博物館」。この施設が必要な学芸員を揃えていないにもかかわらず、学芸員が勤務しているかのように虚偽申請していた。その手口で、2013年から20年まで、文化体育観光部とソウル市から18の事業で約3億ウォン(1ウォン=0.09円)の補助金を不正に受領した容疑。

・「海外戦時性的暴力被害者支援」のための基金の名目で、約1億7000万ウォンの寄付金品を個人口座で募金した疑い。

・「元慰安婦住居施設支援」目的で配分された寄託金10億ウォンを使って、関係施設を相場より約2倍高い額で買収。そのあと売却することで、挺対協に損害を与えた疑い。

今年、尹議員らを告発した慰安婦のイ・ヨンス氏

・2011年以後、尹議員が個人口座5つを利用して慰安婦の海外旅行経費、基金などの名目で募金したり、挺対協の口座から自身の個人口座へ振り替えを受けたりすることで、20年まで任意に使ったお金は1億ウォンあまりに達するという疑い。

「単なるミス」「個人的な着服はなかった」と一貫して主張

・また、2017年11月、重症の認知症を患っていた日本軍慰安婦被害者から彼女が受領した「女性人権賞」の賞金の一部など7900万ウォンを寄付するように仕向けた疑い。

・挺対協の職員2人と共謀し、人件費の補助金申請をするなど、計6,500万ウォンを不正に受領した疑い。

・2014年から2019年まで「憩いの場」を運営し、市民団体・地域政党・個人などに50回余り貸し出した。未登録なのに900万ウォン余りを宿泊費として支給してもらった疑い。

 尹議員はこのような疑惑に対し「単なるミス」とし「個人的な着服はなかった」と一貫して主張している。

 慰安婦問題が日韓両国の核心懸案として登場し始めたのは、1991年8月、故金学順氏(当時67歳)の証言があった時だ。

今年も「慰安婦らがもう十分と言うまで解決策を模索する」と発言している

 政府は慰安婦の動員に関与していないという日本政府の公式見解に対する反論だった。

 金氏の証言があった翌年の1992年、宮沢内閣の加藤紘一官房長官は初めて、日本政府が慰安婦に関与していたことを公式に認めた。

 そして1993年には慰安婦に対する強制性を認めてこれを謝罪する「河野談話」が発表され、1995年にはこれを再度確認する村山談話が続き、日本の教科書にも慰安婦に関する内容が初めて記述されるに至った。

 しかし、1997年「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとした日本の保守右翼は、アジア・太平洋戦争終了後の日本の歴史観を「自虐史観」と批判。

尹議員から引き継いだイ・ナヨン理事長率いる「正義連」のデモ

 これまで日本政府が慰安婦問題の解決に向けて傾注してきた努力を強く否定し、日本の世論もこれに同調する方向に流れた。

 一方、韓国では1990年に発足した市民団体の挺対協が前面に出て、慰安婦問題を社会問題化し、日本政府に対する謝罪と賠償を要求する運動を主導してきた。

 挺対協の主軸メンバーは、1980年代半ばから後半にかけて、民主化運動や女性運動の先頭に立った人たちだ。

在宅起訴に留めた検察は「弱腰」と批判され…

 その時から挺対協は、慰安婦問題に対する問題提起と運動を独占し、韓国社会の反日民族主義を代表するシンボル的団体となった。

 挺対協には、「反日が愛国」という韓国社会に存在する歪曲された感情に便乗し、あるいは、これを助長し、現在の権力の座に定着したという一部の批判がある。

 にもかかわらず、これまで歴史の片隅に埋葬されてきた慰安婦の存在とその被害を世に知らしめ、帝国の蛮行を訴え、日本政府の公式謝罪と法的責任を問う活動を続けてきた。

 慰安婦問題は国家暴力、個人の人権、ジェンダー、家父長制社会と女性の人権、帝国主義と植民地主義など様々な問題を孕んでいる。

 挺対協はこれらを意図的に、「加害者日本と被害者朝鮮民族」という、善悪の構造に単純化した。

 慰安婦問題を個人の人権問題ではなく、国家と民族の問題という論点で語ることにより、運動としては大きな成果を上げることができたかも知れない。

 しかし、彼らがずっと主張してきた被害者中心主義、つまり個人の望む形での問題解決はますます困難になってしまった。

 これらを主導してきたのが、尹議員に他ならない。

 慰安婦問題が韓国社会で大きな関心を得て、挺対協は権力化された。今まで20年以上、挺対協を中心とする少数の関係者の考えが慰安婦問題を決定付け、日韓関係を牛耳ってきた。

 尹議員もそれを背景に今年、晴れて国会議員となったのだ。

 彼女が詐欺と背任などの疑いで在宅起訴されたことに対し、多くの国民は「事、必ず正しきに帰す」とし、厳正な処罰を求めている。

 身柄を拘束せず、在宅に留まった起訴は弱腰と批判されており、長い裁判を経て有罪の場合には執行猶予はつかず、刑務所行きの可能性は少なくないという。

 当の尹美香陣営は、今後、国会議員としての役割を忠実に果たし、国難克服のために最善を尽くしたい、とワケの分からないことを言っている。

 日韓関係の修復のためにも、少しでも早く国会議員を辞職し、謙虚に法の審判を待つべきだ。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月17日 掲載