新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自宅で過ごす時間が増える中、犬や猫などのペット人気が高まっている。

 ただ、経済的な事情などからペットを手放すケースも相次いでおり、専門家は安易に飼育を始めて途中で放棄することに警鐘を鳴らしている。(蛭川裕太)

■売り上げ4割増

 東京都稲城市のペット店「ペット家族 稲城押立店」では15日、ケージの中を走り回る柴犬しばいぬや、すやすや眠るトイプードルの愛らしい姿に家族連れらが見入っていた。長女(1)と一緒に訪れた調布市の主婦(40)は「外出の機会が減り、子どもと家で過ごす時間が増えたのでペットがいると癒やしになると思って来た」と話した。

 同店など4店舗を運営する「ジャパンペットコミュニケーションズ」(東京)によると、6〜7月の売り上げは例年と比べて3〜4割増加した。高橋友美店長(36)は「ふだんは残ってしまう生後6〜7か月の犬を買い求める人も目立ち、ケージの半分が空になることもある」と話す。

 ペット保険大手の「アニコムホールディングス」(東京)によると、4〜6月の新規契約件数は前年同期比33%増の5万3456件となり、四半期ベースで過去最多を記録した。新規契約者には「初めてペットを飼った」という人が多かった。

■引き取り要請

 一方、ペットを手放す例も目立っている。猫の保護や譲渡を行うNPO法人「ねこけん」(東京)では8月上旬、数年前に猫を譲渡した飼い主から「新型コロナの影響で仕事がなくなり、経済的に飼う余裕がなくなった」と相談を受け、猫2匹を引き取った。

 犬や猫の保護に取り組むNPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」(広島)の東京支部には4〜6月、「ペットショップで購入したが手に負えない」などとして飼ったばかりの子犬の引き取りを求めるケースが15件あった。同法人の佐々木博文理事長は「飼い主にはペットの命を最後まで預かる責任がある。その役割を全うできるか冷静に考えてほしい」と強調する。

■飼育放棄

 各自治体の動物愛護センターや犬や猫の保護活動を行うNPOなどは新たな飼い主に譲渡する前に、適切な飼育に関する講習会や職員による自宅訪問、経済状況などの審査を行う。一方、ペットショップでは厳格な審査はなく、手軽に購入できる。不景気が長期化したり、感染が収束して外出時間が増えたりすればペットの飼育放棄が増える恐れもある。ペット問題に詳しい日本獣医生命科学大の水越美奈教授は「20年近く生きる犬や猫もいるため、衝動的にペットを飼うのではなく、ライフスタイルの変化や将来的にかかる費用などを考慮し、計画性を持って飼育を始めるべきだ。自分が飼えなくなった時の引き取り先を確保しておくことも必要だ」と指摘している。

メダカや爬虫類も注目

 コロナ下ではメダカや爬虫はちゅう類もペットとして注目されている。

 東京めだか流通センター(東京)では4月のメダカの売り上げが前月の5割増しになり、その後も好調が続いている。初めてメダカを飼育する客が多く、1匹500円程度の種が人気という。同店代表の野中真一郎さん(33)は「優雅に泳ぐメダカを見ると、ストレス発散になるのでは」と話す。

 爬虫類も人気だ。輸入や卸売りを手がける「レップジャパン」(静岡)では4月以降の売り上げが例年の1・5倍に。小型のリクガメやトカゲが人気で、担当者は「鳴き声やにおいを気にせず、狭いスペースで飼育できることも爬虫類ブームの要因の一つ」と話す。

 一方、航空機の減便で外国産生物の輸入が滞り、打撃を受けた店もある。昆虫販売店「ヘラクレスの里」(神奈川)はインドネシアから月1回、カブトムシやクワガタを輸入していたが、今年は2月以降で2回のみ。売り上げも昨年の半分以下に落ち込み、店主の鈴木裕昭さん(45)は「客はいつもより多いのに、商品がなかった」と肩を落とす。