クリエイター兼経営者である、ぶんけいさん。

立ち上げたYouTubeチャンネルは登録者数130万人を超え、インフルエンサーとして名を挙げたのち、株式会社ハクシを創業。

現在はコンテンツスタジオ・CHOCOLATE Inc.にも所属し、広告プランナーや映像制作の監督としても活躍しています。

もともと平凡な大学生だった彼が、多くのファンに支持されるクリエイターになれた理由をきいてみると、「“なんでマン”という武器があったから」とのことでした…。

〈聞き手=ほしゆき〉

ほし:
今日は、「なぜぶんけいさんが影響力を持つ個人になれたのか」について深掘りさせていただきたいと思います!

ぶんけいさん:
ありがとうございます!

『新R25』、ブックマークして読んでいたので、うれしいです。



ほし:
私がぶんけいさんを知ったのは、YouTube「パオパオチャンネル」の動画がきっかけだったんですが…YouTuberになる前は何をされていたんですか?

ぶんけいさん:
中学生時代に「らじろぐ」や「こえ部」で声の配信をしたのが最初です。今で言う、ツイキャスみたいな感じですね。

そこからインターネットでのつながりが楽しくなって、友だちと「踊ってみた」動画を撮ってニコニコ動画に投稿したり、YouTubeでも投稿をするようになったり…

そうしたら「水溜りボンドのカンタくんに似てる」って言われることが増えてきて(笑)。

出典 Youtube

たしかに似てる

ぶんけいさん:
僕はもともと大学の映像学部に通う学生で、映画監督を目指していたんです。YouTuberとして活動したり、起業したりする未来はまったく考えていなかった。

でもカンタくんに動画で紹介していただいてから、YouTuberが持つ影響力はこんなにすごいのか!と衝撃を受けて…

映画監督への近道として、YouTubeチャンネルを立ち上げることにしました



ほし:
なぜYouTubeが近道だと…?

ぶんけいさん:
そうなりますよね(笑)。

その結論に至ったのは僕が「なんでマン」だったからでして…

ほし:
ぶんけいさん、見聞きするすべての物事に「なんで?」と聞きつづける子どもの“なぜなぜ期”がまだ終わっていないとか…

ぶんけいさん:
そうなんですよね。3歳から、なぜなぜ期23年目を迎えています。


そんなことある?

ぶんけいさん:
なんで?って疑問の答えが見つからないと、先に進めない性格なんです。

気になることが多すぎて、自分に辟易することもあるんですが…人生の重要なターニングポイントでは「なんでマンであること」にいつも救われてきました。

「なんで就職するの?」という疑問から生まれた、自分だけのキャリア

ぶんけいさん:
映画監督を目指すとなると、最初からフリーとして活動するとか、映像制作会社に就職して、アシスタントとして経験を積むとか、テレビ局のディレクターを経て独立するとか、方法はいろいろあるんですが…

近道がどうしても見つからなくて。

ほし:
一般的な道を選ぶのは嫌だったんですか?

ぶんけいさん:
戦い抜ける自信がありませんでした。



ぶんけいさん:
同じ夢を持つライバルが多いし、制作会社に入って20年後に独立するとなると40歳…途方もない

もっと早く作品を撮りたくて、「そもそもなんで就職する必要があるんだっけ?」と考えていくうちに、松本人志さんや北野武さんの存在が気になりました

ほし:
大御所芸人ふたり。どちらも映画監督としても、活躍されていますね。

ぶんけいさん:
「映画とは直接関係ない芸人さんが、監督として成功したのは?」という疑問を「なんでなんで」と突き詰めていくと…

「“健全な権力”を持てば映画監督になれる」という答えが見つかったんです。



ほし:
健全な権力…?

ぶんけいさん:
2人とも、「この人がそう言うなら面白いものができるんだろう」と言われる圧倒的な実力者ですよね。

芸人と映画監督は直線ではつながっていないけど、ひとつの世界でスキルを身につけて“徳の高い人間”になれば、その先の選択肢は無限に広がっていくんだなと。

ほし:
“健全な権力”というのは、そういった職業の垣根を越えて人を巻き込む力のことを指していたのか…となると、たしかにYouTuberとして影響力を持つ道を選ぶのは有効と言えそう。

ぶんけいさん:
これからは「職業」や「肩書き」の垣根がどんどん失われて、横断的に仕事をする人が増えていくと思います。

もちろん、夢を叶えるために就職するのも正解。でも僕の場合は、ライバルの少ない道を選び、職業を限定しなかったことで選択肢を広げられたんですよね。



YouTuberとして人気を獲得したのも、「なんで?」という分析力がキモ

ほし:
でも、「映画監督」という第一目標ではないYouTuberという道で、チャンネル登録者数100万以上という結果を出せたのはなぜなんでしょうか?

ぶんけいさん:
それも、僕にYouTuberとしての素質があったわけでも、カリスマ性があったわけでもなく、「なんでマン性」だけで持ちこたえてきたと思ってます(笑)。

ほし:
「なんでマン性」て。

ぶんけいさん:
発信力や影響力を高めるために重要なのは、素質以上に分析力。「やりたい」と思うことをビジネス的に成功させるキーワードは、やっぱり「なんで?」です。

ファンがついているYouTuberに「なんで売れたと思いますか?」と聞いて、答えられない人はおそらくいません



ぶんけいさん:
YouTuberに限らず、応援されている人の共通点は「感情のシャトルランをさせるのが上手いこと」だと思います

ほし:
感情のシャトルラン…

ぶんけいさん:
たとえば、kemioさん。「ハイテンションの渋滞」みたいな明るい動画のあとに、質問コーナーでみんなの悩みや世間の風潮に対する“核心を突く名言”を連発して、共感を得ていますよね。振れ幅がすごい。

感情を揺さぶられて“いい意味で裏切られたとき”に「好き!」って気持ちが強くなるんだと思います

ほし:
うわ、わかる! 動画を毎回見てしまう理由はそれかも。

ぶんけいさん:
僕自身も、かなり「感情のシャトルラン」を意識して動画の企画をつくっていました。

もともと、自分のダメなところを人に見せるのが苦手だったんですが、不思議と“ダメな部分”に魅力を感じてもらえたりもする。そして、その空気感には精神的にもとても救われていました。

応援されている人はみんな、弱点すら武器にするのが本当に上手なんですよ。自己分析力が高いんでしょうね。

「なんでマン性」を鍛えるためのポイントとは…?

ほし:
ぶんけいさんが武器にしてきた「なんでマン性」を鍛える方法って、あるんでしょうか?

ぶんけいさん:
鍛える方法かぁ…!



ほし:
歳を重ねるにつれて、自分の中に生まれる「なんで?」に鈍感になってしまう気がしていて。

与えられた仕事について、「なんのためだっけ」と逐一問いを立てていたらキリがないじゃないですか…

ぶんけいさん:
わかります。

僕も「すべてに納得したい」という自分の性に辟易するときもありますし、疑問と向き合わなければラクなのになって感じることもあります。

でも自問自答を怠らないのは、成功体験が大きいかも。



ほし:
それは…就活しないと決断したときの?

ぶんけいさん:
そうですね。人生の大事な場面で後悔しない決断ができているのは、「なんで?」と向き合ってきたからなので、スルーするわけにはいかなくなってる気がします。

一つひとつの仕事に自分なりの答えを見つけて進むって、すごく体力を必要とすることですが、一度でも「考え抜いてよかった!」と思う経験をつくれたら強いと思いますよ。

あとは、自意識を切り離すこと。

ほし:
自意識を切り離す…とは?

ぶんけいさん:
仕事上のコミュニケーションで、「今質問をしたら面倒くさいって思われるかな」「無知だと思われたくない」という気持ちから黙ってしまうことが、僕もあるんですが…

そもそも質問ひとつで恥ずかしがれるほど、まわりから期待されてないことが往々にしてあるぞ」と思っていて。

多分「期待されていると勘違いしている」と言うより、「期待されていると自分が思っていたい」から黙ってしまっている状況。



ぶんけいさん:
だから「お前はまだまだ未熟者だぞ」って言い聞かせて、気になることはその場でぶつけるようにしています。

大人になるにつれて、知的好奇心を自意識が抑え込んでしまう場面が増えていくので、意識的に解放するのは大切かも

抑え込むほど、物事に「なんで?」と疑問を抱ける機会も減っていくんじゃないですかね。

ほし:
「なんでマン」ってめちゃくちゃ強いな…

ぶんけいさん:
僕にはそれしかないけど、これからも“なぜなぜ期”歴を更新していけたらなと思います。


ぶんけいさん、ありがとうございました!

自身で辟易しながらも、「なんで?」に従順でありつづけてきたぶんけいさん。

こちらの質問に対し、「う〜ん…」と考え込んでいるときに「こんな顔してますがめちゃくちゃ楽しんでます」としかめっ面で答えてくださったのが印象的でした。

新しい疑問を見つけること、探究することを無邪気に楽しみつづけられるのは、ものすごく強い武器。次世代を担うクリエイターのエネルギーをひしひしと感じながら、私も自分のなかの「なんでマン」を育てていきたいと思いました。

〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉

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記事には書ききれなかったぶんけいさんのリアルが一冊に凝縮されているので、ぜひ覗いてみてください。「一歩踏み出してみようかな」という気持ちにさせてくれますよ。