インドやアメリカの「禁令」で、バイトダンスの経営環境は激変した。写真は北京の本社ビル(バイトダンスのウェブサイトより)

ショート動画アプリTikTok(ティックトック)を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)が、大部分の従業員を対象に臨時ボーナスを支給することが明らかになった。同社が9月8日未明に送信した社内メールによれば、所定の条件を満たす従業員に8月分の固定給の50%相当を支払う。

このメールの中で同社は、新型コロナウイルスの世界的大流行や経営環境の変化などの難局に「従業員が団結して対処してくれた」と讃えたうえで、「みなさんの努力に対する感謝のしるしとしてボーナスを支給する」と理由を説明した。

臨時ボーナスを受領する条件は、2020年7月1日から8月31日までの間に26日以上出勤したフルタイムの従業員であること。支給時期は9月分の賃金と同時になる。財新記者の取材に応じた複数の従業員は、「臨時ボーナスが出るのは過去数年で初めてのことだ」と証言した。

インドとアメリカで猛烈な逆風

一部の従業員は臨時ボーナスの支給について、最近の経営環境の変化だけが理由ではないとの見方を示した。例年秋には個々の従業員の(来期の職責や賃金を決める)パフォーマンス評価が行われ、ほかの時期よりも多くのスタッフが転職を考える。そのタイミングで臨時ボーナスを出すことで、人材流出を予防する狙いがあるという。

バイトダンスを代表する人気アプリのTikTokは今、インドとアメリカで猛烈な逆風にさらされている。

インド政府は6月29日、国家安全保障上の問題を理由にインド国内でのTikTokの使用を禁止した。アメリカのドナルド・トランプ大統領は8月6日、同様の理由でアメリカの司法管轄下にある個人や企業がバイトダンスおよび関連企業と取引するのを禁じる大統領令に署名。トランプ大統領はバイトダンスに対し、TikTokのアメリカ事業の売却も求めている。


本記事は「財新」の提供記事です

そんな激動の中、バイトダンス創業者の張一鳴CEO(最高経営責任者)は従業員に宛てた社内メッセージで、「われわれは一部の市場で強い外圧に直面しているが、担当チームは残業もいとわずに昼夜兼行で対応にあたり、最良の結果を出してくれた」と述べていた。

なお従業員の証言によれば、インド政府やアメリカ政府の「禁令」を理由にした従業員のリストラは行われていない。また、中国国内のTikTok担当チームは普段どおりの勤務を続けているが、業務量は以前より明らかに減少したという。

(財新記者:関聡)
※原文の配信は9月8日