8年前に書いた私の初めての小説「空に住む」が映画になりました。原作とは内容が異なるところがかなりありますが、とても素敵な映画です。是非!!

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片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡8

 片寄から「大人とは?」について尋ねられていた小竹は、王道の質問に満を持して応えようとしていたが、好事魔多し。アクシデントに巻き込まれた。季節を先取りするカイダン……。

拝啓 片寄涼太様

 まずは、ちょっとしたカイダン話を。

 君も来訪したことがあるので知っていると思うが、我が家には暗い地下室がある。

 数日前のことであった。夜中の2時に目が覚めトイレに行こうとした私は、一階から地下に行くドア(何日も開けていない)がほんの少し開いているのに気づいた。「空子(ソラコ、愛猫)が地下に行ってしまったのでは」と、心配になり、恐る恐る地下室へ行くドアを開き、真っ暗な地下への階段へ踏み出そうとしたその時私は……、

「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」

8年前に書いた私の初めての小説「空に住む」が映画になりました。原作とは内容が異なるところがかなりありますが、とても素敵な映画です。是非!!

 あろうことか階段の一番上から一番下まで(全12段)を転げ落ちてしまったのである。とっさに「落ちるもんか!」と、体をくるっと回転させるなどという余計な悪あがきをしたせいで、正面からではなく背中からド、ド、ドーッと。ゴン!バキッ!ドスッ!! と自分の体のあちこちをぶつけながら。途中で「これ、死ぬかもな」と走馬灯を見始めそうになった時、落下が終わり、小さく「ウッ」と声を漏らし私の体は静止した。

 ほんの数秒間の出来事だったにも関わらず、体のあちこちに激痛を覚え、頭からはダラダラと血が流れていた。しばし錯乱状態に陥り、体を起こしてみると、何とか歩ける。途方に暮れながらも、とりあえず私はトイレに行った。

ここ数年、外食はそんなに好きではなくなっているのですが、友人の経営するレストランを久しぶりに訪れたときのこのデザートに、「外食ってありがたいんだ」と、妙にしみじみしました

 鏡を見たら顔面血だらけでホラーだったので、トイレットペーパーで顔を拭き、ばっさりと切れている側頭部にトイペを押し当て、ついでにしっかり用を足し(漏らさなくて本当に良かった)、めちゃくちゃ動揺していたので、気持ちを落ち着かせるために電子タバコで一服してから(傍らに空子がちょこんと座っていた)よろよろと事故現場に戻り、ところどころに付着している血痕をアルコール除菌ティッシュで拭いた(はい、私はちょっと潔癖症なんです)。

 そして、右腕が全く動かないし、頭からの流血も止まらないので、「かったるいなあ」と思いつつ自分で救急車を呼び、病院へと運ばれた。

 検査の結果、右肩を骨折、左足の指にヒビ、左側頭部の打撲、他にも体のあちこちを捻挫・打撲。病院を出たときには夜はすっかり明けて、ひるむくらい眩しい青空が広がっていた。

 タクシーがなかなか(数十分)来なかったため、救急外来の入口付近にぼーっと立ちすくんでいたら、大きなガラスに映った自分の姿が見えた。頭には血が滲んだ包帯、腕には三角巾、遠目でもわかるくらいくっきりと手足に青痣や内出血。絵に描いたような満身創痍。今までの人生でこんな大怪我をしたことがなかったので、要らない自己顕示欲と露悪趣味から、私はスマホで自分の体のあちこちを撮影しました。

 根がふざけているせいでしょうか、体の心配をするよりも、見たことのない悲惨な自分の姿を面白がってしまったのである。だって、ハロウィンでよく見かけるゾンビみたいな姿だったんですもの。これ、もし死んでいたら、「まあ、顔だけはなんの損傷もなくて……」と葬儀に参列してくれた人たちが目頭を熱くするよ、ホント。

「夢は叶う」とは断言できないけれど

 と、自分の転落事故のことを書いていたら、君からの質問に答えるのを失念するところだった。そもそも救急病院の当直医に、「念のため一日入院しますか?」と言われ、「いいえ」と言い(だって面倒くさいから)、「出血が止まらないといけないので頭の傷をホッチキスで止めますか?」には、「嫌です」と答え(だって怖いから)、「2、3日は入浴を控えてくださいね」と念を押されたのに、帰宅してすぐにシャワーを浴びた私(だって潔癖症だから)に「大人」の定義を偉そうに語る資格があるのだろうか?

 しかし、年齢的には立派な大人である私から涼太に言えることがあるとすれば、大人とは、「確固たる覚悟を持って何かを背負ったり守ったりできる人」だと思う。脅すわけではないが、まだ二十代の君はこれからますます見たくないものを見て知りたくないことを知り、その先で「覚悟」が決まる。

 迷って我慢して妥協して無理をして、手放したくないものをたくさん手放しながら、背負うべき大切なものを手に入れていく。若かりし頃の葛藤やジレンマは、大人になったときに絶対に君の糧となっている。私の経験上、「あきらめなければ夢は叶う」とは断言できないけれど、頑張っていれば絶対に成果は出る。そして夢にも思わなかったような素晴らしいことが予期せぬタイミングで起こったりもする。過ぎていく日常の中で自分のアンテナを張り巡らせて、常に自分と周りを見て、正しい距離感で人と接していれば、「大人になるって悪くない」ときっと心から実感するようになる。ちなみに私は、なんの覚悟も持たずに、何も背負っていない大人が大嫌いだ。

 ……って、階段から落ちたスットコドッコイエピソードの後に言っても説得力に欠けるが、この文章を書きながら「居場所を見つけられずに砂を噛むような思いばかりしていた二十代の自分には絶対に戻りたくない」「大人になってよかった」と、思いのほか今の自分の幸せを君に再確認させてもらえた。満身創痍だけどな。サンキュー。

                                     敬具

小竹正人

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS「You & I」が配信中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2020年9月13日 掲載