戦力外とか構想外といった言葉には、ひどくネガティブなイメージが付きまとう。現在の所属先では出場機会を得られず、「出ていくしかない」ような立場が強調される。

 おそらくこれは、プロ野球の報道が影響している。シーズンオフになると、「戦力外通告」という文字が頻度高くスポーツ紙に躍る。いまならネットの記事になるのだろうが、いずれにしても「現役を続けられるかどうかの瀬戸際に立たされた選手」というイメージを助長させる。もっとストレートに言えば、「行き場を失いかけている選手」という烙印を、強制的に押されてしまうようなところさえある。

 ヨーロッパのサッカーは、必ずしもそうではない。

 ハメス・ロドリゲスのエバートン入りが発表された。このコロンビア代表MFはレアル・マドリーで“構想外”となっていたが、その理由はジネディーヌ・ジダンのチーム作りで序列が低かったからに過ぎない。選手起用は監督の専権事項であり、監督が代われば戦術が変わり、それに伴って序列も変わるものだ。ハメスがレベルダウンしたわけではなく、チーム戦術との親和性が低くなってしまったことにそもそもの原因がある。そして、ジダンが監督を続けるのなら、彼は違う可能性を探るべきだ。

 ここ数年はキャリアが停滞気味だったものの、まだ29歳である。クラブを変えればピッチ上で輝ける可能性はある。エバートンの指揮官はカルロ・アンチェロッティで、マドリーとバイエルンでともに仕事をした間柄だ。ハメスにとってマドリーとの別れは、キャリアを好転させるきっかけになるに違いない。

 日本代表の堂安律も、オランダからドイツへ戦いの舞台を移した。PSVは今シーズンから監督が代わった。新たにチームを託されたロジャー・シュミットは、現時点で堂安の起用に前向きではなかったと伝えられている。

 だとすれば、PSVを出ていくことを考えたほうがいい。

 冷遇されても競争を続けるという発想は、日本人には馴染むもののヨーロッパや南米では理解されにくい。「自分が生きる選択肢が他にあるなら、そちらを検討する」という考え方は、キャリアを充実させるためにも当然と言っていい。

 ビーレフェルトには1年間の期限付きで移籍する。来夏の東京五輪へ向けて出場機会を得ることは重要だが、ブンデスリーガ1部に昇格したクラブで存在感を示すことができれば、PSVでの立場もポジティブな影響をもたらす。21−22シーズンもシュミットが率いることになっても、彼の考えを変えることができるかもしれない。PSVでくすぶっているよりも、他クラブでアピールをしたほうが間違いなく生産的だ。

 誰が監督でも出場機会を得られる選手は、掛け値なしに素晴らしい。プロフェッショナルの理想像である。ただ、監督も選手も人間だ。相性はある。同じような実力の選手がいて、どちらを使うかとなったら、最後はもう好みの問題になる(それ以外にも細かい契約の縛りなどが絡んでくるが)。

 監督の構想から外れているなら、構想に入れてくれるクラブを探せばいい。そして、堂安の獲得にはビーレフェルトが手をあげてくれた。フローニンゲンとPSVで、自身の力を見せてきたからだろう。

 自分の力で勝ち取った新たな“職場”なのだ。ブンデスリーガでも通用するところを、堂安には存分に見せつけてもらいたいのである。