川崎フロンターレの新人、三苫薫が好調だ。今季3度目の先発となった先の横浜Fマリノス戦でも2ゴールをマーク。通算8ゴールとし、得点ランキングでも4位にランクインした。

 今季の計541分という出場時間は、チームでは15番目。14点を挙げ、現在得点王争いで首位を行くオルンガ(柏レイソル)の出場時間が1124分なので、出場時間あたりの得点率では、なんと三苫の方が上になる。

 本格派ストライカーというわけではない。4-3-3の左ウイングだ。

 想起するのは横浜Fマリノスの右ウイング。三笘が2ゴールを決めた一戦では、後半12分からの出場となった仲川輝人(横浜Fマリノス)だ。昨季、チームメイトのマルコス・ジュニオールとともに15ゴールで得点王に輝いた事実は記憶に新しい。

 彼のポジションもウイングだが、三苫が左なのに対し仲川は右。右利きの右ウイングなので、切れ込んでシュートを放とうとすれば、キックは利き足ではない左足になる。切れ込めば利き足(右足)でシュートが打てる三苫との違いだ。難易度が高いのは右利きの右ウイング。仲川の方だ。

 とはいえ、ドリブルに高い得点能力を兼ね備えた日本人ウインガーが2年続けて話題を集める姿には、隔世の感を覚える。つい10年前まで、日本にはウインガーが存在しないも同然だったからだ。

 そもそも、ウイングが活躍する場所がなかった。4-3-3と4-2-3-1がウイングの居場所が存在する代表的な布陣になるが、そうではない布陣を採用するチームの方が、日本では最近まで圧倒的多数を占めた。

 4バックと言えば4-2-2-2、3バックと言えば3-4-1-2あるいは3-3-2-2が主流だった。「そうではないサッカー」が、代表チームで主流になったのはオシム時代からだ。しかし、ウイングをこなすことができるポジションに相応しい選手は、簡単には誕生しなかった。選手が先か、ポジションが先か、ではないが、該当するポジションがなければ、それに相応しいキャラを備えた選手が育たないという事実を、学ぶことになった。

 それ以前に、Jリーグで4-2-3-1を採用していたのは、原博実監督率いるFC東京ぐらいだった。石川直宏、鈴木規郎、戸田光洋らは、その4-2-3-1の3の両サイドでプレーしていた選手になるが、このポジションが似合う選手は、Jリーグを見渡しても数えるほどしかいなかった。

 途中から4-2-3-1を定番にしたオシムジャパンも、3の両サイドは遠藤保仁や中村俊輔といった中盤系の選手だった。オシムは彼らを半ば無理して使った。その4-2-3-1が4-2-2-2に近づくのはある意味で当然だった。

 続いて、代表監督の座に岡田さんが就くと、時計の針は一瞬、逆戻りした。就任当初、岡田さんはサイドアタックを軽んじる4-2-3-1にはほど遠いサッカーを展開した。こちらを嘆かせたものだが、南アW杯本番には一転、従来と異なるサッカーで臨む。

 大久保嘉人と松井大輔を3の左右に据えた4-3-3。典型的なウインガーとは言えない両者を、あえてそこに抜擢した。彼らはそのポジションを忠実にカバーしたため、そのサッカーが4-2-2-2的に陥ることはなかった。そうした意味で、岡田ジャパンは評価できる戦いだった。

 ただし、典型的なウインガーはまだそだっていなかった。続く、ザックジャパンは4-2-3-1でほぼ通したが、2014年ブラジルW杯で、その3の両サイドを担ったのは、香川真司、岡崎慎司、大久保嘉人だった。ウインガーはゼロ。ここでも布陣に相応しい選手を置くことができなかった。それこそが日本の敗因だった。香川の悪い意味で流動的な動きが、失点の引き金になっていた。