TVアニメ『ヒプノシスマイク』特集/第4回:速水 奨×木島隆一×伊東健人「僕らは逆さまの正三角形」

“声優×ラップ”という新たな切り口で、いま若者を中心に熱狂的な支持を得ている音楽コンテンツがある。2017年9月に始動した、音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-』(以下、『ヒプマイ』)だ。

ヒップホップシーンを牽引するラッパーやトラックメイカーも手がける本格的な楽曲、それぞれが個性あふれる魅力的なキャラクター、そしてキャストによるライブステージが話題を呼んで、人気が爆発。2020年現在も熱を帯びたまま、さまざまなメディアミックスが進行中だ。

ライブドアニュースでは、10月からのTVアニメ化を記念して、イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュクの4ディビジョンを連続で特集する。

第4弾は、シンジュク・ディビジョンより、速水 奨(神宮寺寂雷役)、木島隆一(伊弉冉一二三役)、伊東健人(観音坂独歩役)が登場。芸歴40年の速水を中心に、大人の色気と強いエネルギーを放つシンジュク・ディビジョンだが、穏やかで笑い声が絶えない座談会となった。

撮影/須田卓馬 取材・文/鈴木 幸 制作/アンファン
スタイリング/石橋修一【速水】、高山良昭【木島、伊東】
ヘアメイク/Coomie(B★side)【速水】、松井祥子・森本みちこ【木島・伊東】

「TVアニメ『ヒプノシスマイク』」特集一覧

▲左から木島隆一、速水 奨、伊東健人

TVアニメでは毎話新曲が登場。感情の昂りの先にラップがある

いよいよ10月からTVアニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Animaが始まりますが、シナリオを読んだ感想から教えてください。
木島 「そうそう、これが観たかったんだよ!」と思っていただけるような内容になっています。キャラクターの人数が多いので、それぞれの見せ場を作るのは相当大変だろうなと思っていたのですが、全キャラクターの見どころが詰まっていました。

あと、ラップバトルのシーンがカッコいいんですよね。
速水 派手だよね。
木島 めちゃくちゃ派手ですよね! 映像になったことで、「ラップで戦うってこういうことだったんだ!」とわかりました。
速水 今までの原作のドラマトラックでは、ラップでどのくらいのダメージを与えられるのかわからなかったけど、ラップバトルのシーンを観て「こんなに(攻撃が)効くんだ……!」って。
木島 “精神直結カスタマイズ“ってこういうことだったんだ、と(笑)。
速水・伊東 (笑)。
伊東 観ている方の多くが、感動と共に謎の笑いがこみ上げてくると思います。
それは、ヨコハマの座談会で神尾晋一郎さん(毒島メイソン理鶯役)もおっしゃっていました。
木島 ですよね!
伊東 これはもう、観ていただければわかると思います。
劇中のラップは、アニメのアフレコとは別に収録したとお聞きしています。
伊東 独歩は録り直したんですよ。
木島 そうだったね。
伊東 スタッフさんから、「アニメの動きや表情にもっと合わせたい」と言われて録り直したんです。これは初めての経験だったのですが、ラップシーンに対してのスタッフさんの本気度を垣間見ました。
伊東さんが収録のときに想像していたより、画の動きや表情が激しかった、ということでしょうか?
伊東 そうなんです。具体的にどう激しかったかは……アニメを観てのお楽しみなので言えないのですが(笑)。
木島 感情の昂りの先にラップがあるんですよね。気持ちがノってくるとラップが出ちゃう、みたいな。その意味では、ミュージカルっぽいとも言えるかも。
伊東 そうですね。ただ“ラップをアニメの挿入歌にしました”というわけじゃないんです。
ほかのディビジョンも一堂に会してのアフレコはいかがでしたか?
木島 男臭い現場でした(笑)。前半は揃って収録していたので、ほぼ男性のキャスト陣がぎゅうぎゅう詰めで。
伊東 シンジュク・ディビジョン以外のキャラクターとの掛け合いがおもしろかったですね。個性が強いキャラクターばかりですが、アニメでは、「シンジュクってこういう人たちだったんだ!」という新しい発見があるかもしれません。
速水 アニメを観たら、シンジュクっていつも事件が起こっていると思われるかもしれないよね。ちょっとキナ臭いくらい(笑)。

今までふわっとしていたシンジュクの風景や人間関係がより明確になったよね。
伊東 僕、以前よりシンジュクがカラフルに見えるようになりました。
速水 そうだね。それに、3人でセリフの掛け合いをしていて、より「シンジュクっていいな」と思うようになりましたね。
▲神宮寺寂雷(CV:速水 奨)
▲伊弉冉一二三(CV:木島隆一)
▲観音坂独歩(CV:伊東健人)

独歩の“闇”や一二三の“人格”の描き方にも注目

シンジュク・ディビジョンの3人の関係性は、TVアニメではどう描かれているのでしょうか?
速水 独歩の“闇”は深くなったかもしれません。
伊東 そうなんですよ。アニメは、ドラマトラックとは少し違う世界観になっているので、その差を楽しんでもらえたらと。独歩は、より“かわいそうかわいい”感じになっていると思います。
木島 闇の種類が違うかもしれないですね。
速水 でも、一二三と独歩を見ていると、独歩は慰めてほしくてわざと激しく落ち込んでいるんじゃないかな、って。
木島 (爆笑)。
速水 そういう感じするよね?
伊東 このふたりはそうかもしれません。
木島 お互いに、足りないところを埋め合っている部分はあると思う。
伊東 業の深いふたりだと思っていて。仲がいいというか、共依存っぽいんですよね。
速水 一二三にも闇があるわけだしね。
伊東 そうなんです。一二三って、人格が3つあるじゃないですか。アニメでもしっかり描きわけされていて、それを観たときに、「一二三はもしかしたら独歩よりもヤバいかもしれない」と思いました。
木島 あはは(笑)。それは演じてる本人も感じていまして。

ドラマトラックのときは、自分のタイミングでジャケットの脱ぎ着ができたのですが(一二三はジャケットを着るとホストモードになって性格が変わる)、アニメのアフレコでは、ジャケットを着ているのか着ていないのか、少しわかりづらい部分もあったんです。

なので、都度、スタッフさんに「これはジャケットを着ている一二三ですか?」と確認する作業がスタジオ内で発生するという(笑)。
速水 してたね(笑)。
木島 ジャケットを着てなきゃいけなかったのに、本番で着ていない状態の芝居をしてしまったこともあって。そのことにあとで気がつき、「すみません、ジャケットを着ていませんでした」ということもありました。
1話分のアフレコの中で、何度もスイッチを切り替えないといけないのですね。
伊東 これは本当に大変だと思う。
木島 そうなんです。シンジュクのおふたりに迷惑をかけてしまうので、そこは気を付けないと、と思っていたのですが……。
速水 いえいえ。
木島 でも、演じわけは楽しかったです。
ディレクションはどのようなものがあったのでしょうか?
木島 僕たちの芝居を尊重してくださいましたよね。
速水 アフレコ前に音響監督と話したときに、「今までみなさんが作ってきたものに沿って演じていただければ」とのことだったので、新しいことはそんなになかったですね。
伊東 そうですね。ありがたいな、と思うことが多かったですね。

ちょっとした細かい設定があって……また一二三を例に挙げますが、彼は一人称や二人称がコロコロ変わるんです。僕、俺、君、独歩くん……。
木島 俺っち、ちゃんどぽ、独歩ちん、どぽちん……。
伊東 一二三の中では明確に言い換えている理由があるから、違和感があったときはスタッフさんと情報交換して収録をさせていただきました。
木島 そうですね。すごく気を配って、キャラクターを大切にしてくださっているのを感じました。

速水さんの懐の深さが半端じゃないので甘えてしまう

では、キャストのみなさんの関係性はいかがですか?
木島 世の中はソーシャルディスタンスが重要だと言われていますが、我々の心は近づいています!
速水 はっはっは(笑)。
伊東 そうですね。
木島 心は、ね。
速水 やっぱり、仲良くなりますよね。仲がいいっていうのは馴れ合いじゃなくて、「木島くんは今、こう考えているんだろうな」っていう、いい意味での配慮が3人のあいだで自然とできているんじゃないかな、という気がします。
8月16日に放送されたABEMAの『ヒプノシスマイク5thライブBD/DVD発売記念!ディビジョンリーダー大集結SP』を拝見したのですが、速水さんがすごく楽しそうにされていたのが印象的です。
木島 速水さんの懐の深さが半端じゃないんですよ!
伊東 なんか、みんな扱いが雑になってきたような(笑)。
速水 あっはっはっは(爆笑)。
木島 よくないっ! ほんっとよくないよ!
速水 いいんだよ。
伊東 いいと言ってくださるから甘えてしまうんですよね。
速水さんは2018年の『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd LIVE@シナガワ《韻踏闘技大會》』のラストで、「混ぜても危険じゃないところまでがんばってこられた」とおっしゃっていましたが、今はどのように感じていますか?
速水 今はね、スパイスになれたらいいなと思っています。みんなとは世代を含めいろいろな面で違うから。でも、その中に僕がいることで、スパイスでも雑味でもなんでもいいのですが、新たなものを生み出せたらなって。

香水だって、いろいろな香りが合わさってできているのだから、僕がいることで少しでも変化をもたらせられたら、と思っています。
伊東 ……こんなこと言ってくださる先輩、普通はいませんよ?
速水 いるいる。
木島 ありがたい……!
伊東 速水さんの存在って、初めて『ヒプマイ』に触れる方にとって、ひとつの“取っ掛かり“になると思うんですよ。速水さんがいてくださることで、より懐が深い作品になったというか、さらに多くの方に『ヒプマイ』を知っていただけたのではないかと思っています。

OPテーマを聴いて、懐かしい昭和な香りを感じた

改めて、演じているキャラクターの魅力や、ご自身と通じるところを教えてください。
伊東 アニメの独歩くんは、よりかわいそうな面にフォーカスされていると思います。でも彼は周りの人に振り回されがちなだけで、本来は仕事ができないわけじゃないし、社会人としてちゃんとやれている人なんです。

周囲に振り回されることで彼のダークな面や破天荒な部分が見えてくるので、そういった人間臭さが魅力でもあると思います。

そういう二面性というか、表では取り繕って、裏では「こんにゃろう!」と愚痴をこぼしているところは僕にもあって。独歩に似てきたのか、最近、口が悪くなってきているかもしれない(笑)。
木島 違うよ! もともとだよ!(笑)
伊東 (笑)。もとからそうだったのが、表に出るようになったのかな?
木島 独歩くんが引き出してくれたんだよ。
伊東 そうかもしれないですね。

でも、自分の中で疑問に感じたことや、それは違うんじゃないかと思ったことは、ちゃんと相手に伝えたほうがいいということは独歩くんから学びました。我慢しすぎるのは、いいことじゃないんだなって。そこは、たしかに、独歩くんが引き寄せてくれたのかなと思います。

それと、なんだかんだ仕事が好きなところは似ているかもしれないです。

独歩くんは上司に対する愚痴をこぼしているけど、仕事が嫌いなわけじゃないんですよね。そこが彼の難儀なところでもあるわけですが……。僕も、仕事のことになると睡眠が二の次、三の次になることもあるんです。
一二三はいかがですか?
木島 一二三くんは、ホストなんですけど女性恐怖症ということで……。
伊東 初見の人、わけわかんないよね(笑)。
木島 そうなんです。彼が女性恐怖症になったきっかけはまだくわしく描かれていないのですが、女性恐怖症にもかかわらずあえて茨の道を進む、努力の人なんだろうなと思います。自分に強く言い聞かせることで、ジャケットを着ることで人格を入れ替えてナンバーワンホストになれるという、スゴい人なんです。

僕は彼のそういった部分に惚れていますし、カッコいいうしろ姿を見て自分も近づけたらと思っていますが、そういった意味で共通点はないですね。

でも、ABEMAの番組(『ヒプノシスマイク5thライブBD/DVD発売記念!ディビジョンリーダー大集結SP』)で(碧棺左馬刻役の)浅沼(晋太郎)さんが、「まったく逆だからこそできる役もある」とおっしゃっていて、僕もそれに近いところがあるなと思いました。

僕からすると、一二三はとにかくカッコいい男です。
寂雷はいかがですか?
速水 寂雷は医者なのですが、医者である前に、「人としてこうあらねば」という強い信念を持っている人物だと思います。その理想に近づこうとしながら生きている人。僕もちっちゃい信念を持っていますけど……似てはいないですね(笑)。
木島 でも、僕が今35歳で寂雷先生と同じ歳なのですが……「あれっ?」って思いますよね。
伊東 それは……思いますね(笑)。
木島 ちょっと、寂雷先生スゴすぎますよね。
伊東 “人生2周目”感がありますよね。
速水 ただ、そんな寂雷が一二三や独歩とチームを組んでいるということは、過去に何かあると思っていて。だって、普通は医者とホストとサラリーマンでチームを組まないと思うんですよ。
木島 たしかに。
速水 過去に対して何か背負っているものがあるからこそ、3人でチームを組んだりしているんだろうな、と。

そんな寂雷が、(飴村)乱数にだけは剥き出しの感情を向けるのはスゴいよなって。でも、それは寂雷の人間的な部分でもあると思うので、そういうシーンを観ると少しホッとするんです。僕は、そういう面ばかり持っているので。
木島 いやいや! 絶対そんなことないです!
速水 車を運転してるときにね、すごく言うんですよ(笑)。ドライブレコーダーにいっぱい残っていると思います。
木島・伊東 (笑)。
速水 ……っていう冗談はさておき(笑)。それと、寂雷は仕事人間だと思うのですが、僕は、仕事と何もしていないときとどっちが好きかというと、何もしてないときのほうが好きなんです。もちろん、仕事は好きなのですが。
伊東 へぇえ〜!
速水 伊東くんと全然違うんです。
伊東 そうですね。僕は何もしていない状態で楽しいのは半日くらいで、それ以上何もしていないと不安になってしまうんです。
速水 こう考えるとあまり似ていないかもしれないけれど、若い人たちと一緒に、前を向いて歩いていこうとするところは似ているかもしれませんね。
TVアニメのOPテーマ「ヒプノシスマイク -Rhyme Anima-」を聴いた印象はいかがでしたか?
伊東 アニメのOPは尺が決まっていて、『ヒプマイ』はキャラクターの数が多いのでどうなるのかな?と思っていたんですよ。

でも楽曲を聴いて、「すげぇ!」ってなりました。フック(サビ)にメロディがあるのも新鮮でした。
速水 僕、懐かしい感じがしたんだよね。
木島 わかります! 昔のアイドルを感じました。
速水 ラストの「ラップバトルで」の部分がとくに昭和な感じがして。こんなこと言っていいかわからないのですが、初めて聴いたときは、一瞬だけ「これ、ダサいんじゃないか……?」と思ったんですよ。僕のような昭和の人間が知っているメロディラインに感じられて。でも、そこにラップが入ることによって、こんなに新しいものが生まれるんだ!と驚きました。

画ができて合わせて観ると、クセになる中毒性があって。何度も繰り返し聴きたくなるような、不思議な感覚になりました。
伊東 すごくわかります。
木島 歌詞に“中王区に対抗してみんなで戦っていこうぜ!”というメッセージが込められているのも、今後12人が一致団結するのか……?という予感がして、みんなの絆が感じられました。

あと、独歩は血尿出してなかった?
伊東 (笑)。「月曜」と「火曜」で韻を踏む言葉は何だろうと考えたときに、まさか「血尿」と「胃潰瘍」が出てくるとは……。一度聴いたら忘れられない歌詞だと思います(笑)。
木島 「星月夜」で「The starry night」と読ませるところはおしゃれだなあと思いましたね。

シンジュク・ディビジョンの楽曲は“大人のエンタメ”

では、アニメから『ヒプマイ』に触れる視聴者もいるこのタイミングで、改めてシンジュク・ディビジョンの楽曲の特徴を聞かせてください。
速水 ひと口にシンジュク・ディビジョンの楽曲といっても、『パピヨン』と『Shinjuku Style〜笑わすな〜』は違いすぎるよね。
伊東 『パピヨン』はあえてシンジュクらしくない曲になっていますよね。
速水 いちばんシンジュクらしいのは『Shinjuku Style〜笑わすな〜』だよね。
木島 『Shinjuku Style〜笑わすな〜』は作詞のラッパ我リヤさんのフローが独特で、ラップ初心者が歌う曲じゃないと思うんですよね。すごく難しかったです。
速水 ホントにね。仮歌をもらったときに、思わず「これを歌うんですか!?」と言ってしまいました。これを歌うためには、歌舞伎町に1ヶ月くらい住んで、“そういうもの“を飲まないと……。
木島 そういうもの!?(爆笑) そういうものってどういうものですか!?
速水 “濃いめの酒”ね。
木島・伊東 (爆笑)。
速水 それくらい精神構造を変えないと歌えないと思った。だって、冒頭から「ぶち抜くCar Chace マイク貸せ」だよ? 明らかに、僕らが歩んできた人生とは違うものじゃないですか。
伊東 カーチェイスもしないし、マイクも奪い取らないですね。
速水 「だいぶヤベェ(ダイブやべー)」とか言わないですし。
木島 (笑)。速水さん、絶対に言わなさそうです。
速水 でも、『Shinjuku Style〜笑わすな〜』を聴いて、「ああ、これがシンジュクなんだ」とすごく実感したのを覚えています。
逆に、『パピヨン』はどんなテンションで収録されたのでしょうか?
木島 『パピヨン』は休日の麻天狼ですね。それまでは収録に時間がかかっていたのですが、『パピヨン』はスムーズに終わって。初めて、裏でのアドリブもやらせていただいたんです。
伊東 でも『パピヨン』は、曲調こそ緩やかなので簡単そうに聴こえるかもしれませんが、じつはリリックが詰め込まれているのもおもしろいなと思います。
木島 『Shinjuku Style〜笑わすな〜』と『パピヨン』を比べてもわかると思うのですが、シンジュクはジェットコースターみたいに高低差がスゴいんですよね。シンジュクの楽曲の特徴をひと言でいうなら、“大人のエンタメ”だと思います。
伊東 たしかに。イケブクロが王道、ヨコハマは肩で風を切って歩くようなイメージ、シブヤはおしゃれだとしたら、シンジュクは重めの楽曲が多くて、少し大人向けかもしれません。
木島 キャストの年齢的にも僕らは大人チームですし、キャラクターも20代後半から30代の、“ちゃんと働いている3人”ですしね。
速水 そうですね。そういえば、シブヤは誰も働いてなくない……?
木島 乱数と(夢野)幻太郎は働いてます!(笑)
伊東 みんな個人事業主ですよね。
速水 幻太郎は本当に小説書いてるの? それも嘘なんじゃない?
木島 いやいやいや! 書いてますよ、きっと!(笑)
伊東 だからきっと、シブヤはみんな自分で確定申告してると思いますよ(笑)。

「ラップって双方向なんだ」楽しさがわかった2nd LIVE

みなさん、「ラップ×キャラクター」というコンテンツはほぼ初めての経験だったと思うのですが、どのようにラップを上達させていったのでしょうか。
木島 もう、仮歌を繰り返し聴くしかないです。
速水 耳コピだよね。
木島 仮歌を何度も聴いてニュアンスを汲み取って、あとはもう、ドラマトラックで作り上げたキャラクターを信じるしかなくて。

そして、レコーディングでも話し合いを重ねています。「ここはこう歌いたいです」と提案したり、「いや、ここは脈々と受け継がれているラップの歴史があるから、キャラクターを超越してこう歌ってほしい」とディレクションを受けたり。
速水 数学の授業のようなものです。僕が生徒で、ディレクターさんが数学の先生で。先生が「このリリックを因数分解するとね、こことここで韻が踏まれているんです。だから、本当の日本語の発音とは違うけど、こう歌ってみてください」って。
木島・伊東 (笑)。
速水 僕らは職業柄、きっちりと正しい日本語を話すことを生業としているけど、ラップはそうじゃないと割り切って踏み込んでいかなければ、と気付かされました。

そうやって、徐々にラップの世界での日本語の伝え方がわかったとき、「あ、楽しいな」って思えたんです。
「楽しい」と思えた瞬間はいつか覚えていますか?
速水 『迷宮壁』(寂雷のソロ曲)を品川で歌ったときです(『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd LIVE@シナガワ《韻踏闘技大會》』)。
木島 品川、楽しかったですよね!
速水 ほぼ全キャストがそろったのも、あれが初めてだったしね。

レコーディングしているときは苦しいんですよ。仮歌に近づけるための作業だから、わけのわからない汗をかきながらやっていて。でも、ライブでお客さんたちがすごく手を高く上げてくれて。そこで初めて、ラップって双方向なんだ、ってわかったんです。

でも、じつは、コンテンツが始まるときに、「ライブやらないですよね?」って聞いたんです。そしたら、「大丈夫ですよ! なんとかします」って言われていたんです。
伊東 「やらない」とは言ってない(笑)。
速水 なんとかするのは僕だったっていう……(笑)。
でも、実際にステージに立ってみたら楽しさがわかったのですね。
速水 そうですね。それに、周りのキャストもスゴくて。「うちの野津山(幸宏)ですらあんなにがんばっているんだから、僕もがんばらなきゃ!」と思ったんです(野津山さんは速水さんが代表を務める事務所に所属)。

それが、さっき言ってくださった「混ぜるな危険」に繋がっていたのだと思います。
伊東さんはいかがでしょうか?
伊東 僕も最初は見様見真似でしたが、だんだんと、楽曲を提供してくださるアーティストさんたちのオリジナル楽曲を辿るようになったんです。ラッパ我リヤさんやAFRO PARKERさん、Zeebraさんなどのオリジナル楽曲を聴くと、彼ら独自のフローがわかって、『ヒプマイ』の楽曲も歌えるようになって……その繰り返しですね。

『ヒプマイ』がうまいなあと思うのは、そうやって楽曲制作陣を前面に出しているところ。きっと、ファンのみなさんの中にも、僕と同じように制作陣のオリジナル楽曲を聴くようになった方が多いと思うんです。そうやって、『ヒプマイ』を通してラップのよさが広まっていくのはすばらしいですよね。
伊東さんが、ラップを掴めたと感じたきっかけはあったのでしょうか?
伊東 僕は、ライブでBuster Bros!!!のパフォーマンスを目の前で観たときですね。ステージ上でもそうですし、あの3人は楽屋でもずっとやっているんですよ。

音も流さず、もちろん歌詞も見ず、フリースタイルよろしくやっている姿からは、やっぱり刺激を受けます。コンテンツの一番手のキャストとして、学ばせてもらうことがたくさんあります。
ライブでの演出やパフォーマンスはどのように考えているのですか?
木島 改めて考えてみると、ドラマトラックやアニメのアフレコでは、何人ものスタッフさんからディレクションをいただきながら演じていますが、ステージ上では誰かから演出を受けているわけじゃないんですよね。
伊東 衣裳と立ち位置だけ、あとはお任せです。
木島 我々が物怖じせずパフォーマンスしてるのって、じつは、けっこうスゴいことなんじゃないかなって。
伊東 開き直りに近いかもしれない。
木島 そうかも!(笑) ドラマトラックと楽曲から答えを探している感じです。
伊東 このキャラクターだったらこういう動きをするんじゃないかなって考えながらね。
3rd LIVE(『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 3rd LIVE@オダイバ《韻踏闘技大會》』)で、独歩のソロ曲『チグリジア』のときに、時計をチラッと見てから歌い出したのが、まさしく独歩のようで印象的でした。
伊東 やりましたね、そんなこと(笑)。あれも、誰に何を言われたわけでもなくて。自分で考えて、その場のノリでやってみたものでした。
寂雷先生は煽るような激しい楽曲ではないので、それはそれで難しそうです。
速水 寂雷の場合、大事なのは精神性だと思うので。ちょっと手を上げるだけで、十字架が見えるようなイメージで……(と言いながら手を上げる)。
わかります……!
速水 “静”の中にほんの少し“動”を織り混ぜているんです。

たぶん、木島くんも伊東くんもそうだと思うのですが、3人がそれぞれ自分のビジョンのもと、映画のワンシーンを演じているような感覚なんです。そのワンシーンだけ観るとシンジュクはバラバラに見えるかもしれないけど、どこか重なり合うところがある、それがシンジュクなんだと思います。
木島さんはいかがでしょうか?
木島 じつは先日、『ヒプマイ』の舞台(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage Track.2)を拝見したんです。隅から隅まで徹底的に演出されていて、立っている姿だけで完全にキャラクターで……! これはいいものを観たな、次のライブに生かすことができるぞ! と思いまして。

ただ、ちょっとうらやましくもありましたけどね(笑)。
速水 でも、僕らは自分たちでパフォーマンスしたくない?
木島 ああ、たしかにそうかもしれません。自由にやらせていただいているのが楽しいのかもしれないですね。
速水 それはあると思う。自分たちでキャラを演出しているからこそ、歌詞もすんなり出てくるのかなと。

麻天狼は、寂雷が本殿で、一二三と独歩が狛犬?

3月に予定されていた『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 5th LIVE@サイタマ《SIX SHOTS TO THE DOME》』は残念ながら中止になり、無観客配信ライブが行われました。ライブ配信を通して印象的だったことをお聞かせください。
速水 やるかやらないかは、けっこうギリギリまで粘っていたんだよね。だから僕らもやる前提でリハーサルをしていて。リハ室の床に、テープで西武ドームの動線を描いて稽古していたんです。くわしくは言えないのですが、登場シーンもすごく派手だったんですよ。

そういうのができなくなったのは残念でしたが、蓋を開けてみれば、配信は配信ですごく楽しかったよね。

5th LIVEに向けて高めていた気持ちやエネルギーを、あの短い時間に凝縮したので、ある意味でより密度の高いものになったんじゃないかと思います。
伊東 そうですね。それに、配信のおかげで300万人もの方に観ていただけたのもうれしかったです。それくらい、たくさんの方々がライブを観に行きたいと思ってくださっていたのは本当にありがたいことです。
カメラの向こうにたくさんの視聴者がいることに、緊張されましたか?
3人 (口々に)全然ないよね。
伊東 本番中はスタッフさんしか見えてなかったし、まさか300万人もの人が観ているとは思っていなかったですしね。
木島 おもしろかったのは、『パーティーを止めないで』(一二三のソロ曲)のとき、バックでおふたりに踊ってもらったのですが、スタッフさんもみんなで飛んでいたんですよ。温かいなあとうれしくなりましたね。
では最後に、改めて、ほかのディビジョンに負けないシンジュク・ディビジョンの強みを教えてください。
木島 やっぱり、速水さんの存在ですよ。
速水 僕?(笑)
木島 間違いなく、速水さんの存在は大きいです。
伊東 僕、麻天狼の関係って“神社”だと思うんですよね。寂雷先生が本殿で、僕らふたりが狛犬、みたいな。

麻天狼のファイトスタイルは、神社の構図のようで最強なんです。寂雷先生は回復系なのでうしろでどっしり構えていて、僕らふたりが特攻組。無敵なんです。
速水 僕は、正三角形だと思うんですよ。みんなが同じエネルギーを持って、お互いに引っ張り合って均衡を保っているイメージです。

(手元の紙を三角形に折りながら)……あ、向きが逆です! こうですよ! (と言いながら三角形を逆さまにして)僕が下の頂点で、上にいるふたりに、ググッと引っ張ってもらっている感覚なんです。
木島 いやいやいや!
速水 (三角形の向きを戻してから)本来の日本って、こういうピラミッド社会なんです。それが逆になったのが麻天狼の3人。

“和”を大事にしつつも、このふたりは僕を触発してくれるありがたい存在なんです。僕だってまだまだがんばれるな、というパワーをもらっています。

シンジュクは大人なチームですが、エネルギーの強さではまだまだほかのディビジョンに負けません!

シンジュク・ディビジョンが明かす、キャストの魅力は?

速水 奨(はやみ・しょう)
8月2日生まれ。兵庫県出身。A型。劇団青年座養成所、劇団四季を経て、1980年に声優デビュー。主な出演作に、『超時空要塞マクロス』(マクシミリアン・ジーナス)、『勇者エクスカイザー』(エクスカイザー)、『BLEACH』(藍染惣右介)、『Fate/Zero』(遠坂時臣)など多数。声優&アーティスト事務所「Rush Style(ラッシュスタイル)」代表。
木島隆一(きじま・りゅういち)
3月29日生まれ。北海道出身。O型。2010年に声優デビュー。主な出演作に、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(ミツキ)、『宇宙戦艦ヤマト2199』(北野哲也)、『ゴッドイーター』(空木レンカ)、『ダーウィンズゲーム』(ケーイチ)など。
伊東健人(いとう・けんと)
10月18日生まれ。東京都出身。B型。2010年に声優デビュー。主な出演作に、『アイドルマスター SideM』(硲 道夫)、『ヲタクに恋は難しい』(二藤宏嵩)、『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!! / STARS!!』(ヤス)、『大人にゃ恋の仕方がわからねぇ!』(真島修二)など。中島ヨシキとの音楽ユニット「Umake」では歌唱のほか作曲も担当。

「TVアニメ『ヒプノシスマイク』」特集一覧

作品情報

TVアニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima
2020年10月2日(金)24:00より放送開始
https://hypnosismic-anime.com/
TOKYO MX、BS11、群馬テレビ、とちぎテレビ、MBS、テレビ愛知、アニマックスほかにて放送
ABEMAにて地上波同時配信ほか各種プラットフォームにて配信
※放送開始日・放送日時は編成の都合などにより変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

©『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima製作委員会

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、速水 奨さん×木島隆一さん×伊東健人さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年10月1日(木)12:00〜10月7日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/10月8日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月8日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月11日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
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