U-17女子代表の中核を担う藤野あおば(左)、天野紗(中央)、箕輪千慧(右)。意欲を語った。(C)JFA/PR

写真拡大 (全2枚)

 狩野倫久監督率いるリトルなでしこ=U-17日本女子代表が、約半年ぶりの合宿を実施した。ターゲットは、コロナ禍の影響で2021年2月に延期された「FIFA U-17女子ワールドカップ・インド」(延期で年をまたぐ形になったが、参加対象選手は2020年開催時の生年月日を適用)。

 合宿参加選手たちも、日常生活とサッカーの両面で活動制限を強いられてきたが、コロナ禍の半年をしっかりと乗り越えてきた。「(選手たちが)目標を見失わず、しっかりと取り組んでいたことは、初日のコンディションチェックの数値や、GPSデータからも証明されています」と狩野監督。チーム一丸、高い意識を持って、半年先への準備を行なう。

 狩野監督は、昨年の「AFC U-16女子アジア選手権タイ」へ向けた準備期間から、チームのテーマを「選手の長所を最大限に活かす」と掲げた。選手には「正射必中(正しい形で射られた矢は、必ず的中する、の意)。自分たちがやってきたことを、しっかり試合で出すことが一番。結果は後からついてくる」と説き、キャンプから自主性を出すように求めた。同時に、臨機応変な対応とバランスへの取り組みを行ない、リバウンドメンタリティも鍛えた。これがU-16女子アジア選手権で、実を結ぶ。
 
 大会初戦の前半途中、アクシデントで布陣の組み換えを強いられたが、SBへポジションを下げた箕輪千慧(日ノ本学園)は「ゴールへ向かう積極性が必要ですし、それほどやることは変わっていません」。チーム全体が落ち着いたプレーで無失点。世界大会の切符が3枚から2枚に減り、一発勝負の準決勝・中国戦では、指揮官が「プレッシャーや緊張感がある中で、選手が力を発揮してくれた」と称える勝利を飾った。

 先制を許した北朝鮮との決勝も「押される時間が長くて、チーム全体が守備に回る時間が長かったが、みんなで粘り強く対応できた。失点していても全員が『いける!』という気持ちを持っていた」(天野紗/INAC神戸レオンチーナ)。スルスルと抜け出した天野のゴールで追いつくと、さらに林愛花(JFAアカデミー福島)のゴールで逆転。アジアのチャンピオンに輝いた。
 
 対戦相手がアジアから世界に変わっても、成長のベクトルを自分たち自身に向ける指揮官の手法は変わらない。

「今回を含めて4回のキャンプで、U-16女子アジア選手権を戦ったところから、本大会へ向けて、自分たちでどうやって積み上げていけるのか。まず、自分の良さをしっかりと理解して、それを半年後に、どうやってつなげていけるのか。そして、グループ、チームとしてどう構築していくのか」(狩野監督)

 高体連最強ストライカーの藤野あおば(十文字)は「もう少しシュートレンジを広くしたい。自分がゴールを決めるためのプレーを意識したいし、シュートの本数も増やしたい」と、本大会までに解決すべき、自らの課題を数え上げた。

 FW陣には、西尾葉音(浦和レッズレディースユース)、浜野まいか(セレッソ大阪堺レディース)ら、頼れる仲間であり、ライバルがひしめく。藤野は「良い選手が揃っているので、お互いにそれぞれの持ち味を活かして、試合でコンビを組んだ選手同士、良い部分を出していければ」と、前向きなポジション争いを誓う。

 狩野監督は、フィジカルの向上にも、目を向けさせている。「日本の女子サッカーで伸びしろが大きいところだと思っています。自分の身体能力を使えていない選手も多い。そこで『こういった工夫ができると、さらに向上できるよ』というメニューを用意しています」(狩野監督)。

 攻撃の芽を潰す役割を自負する天野は「相手の横へ向かうドリブルへ対応するために、下半身の強化をしています」。レスリング、柔道、バドミントン、マラソンなどの各分野で、日本の女子アスリートが世界を舞台に戦えることを証明している。サッカーだけが別物ということはないはず。
 
 来年のU-17女子ワールドカップへ挑むにあたり、指揮官は、トーナメントを勝ち進みながら、選手たちをスケールアップさせようとしている。

「『育成と勝敗』については、よく議論されますが、勝利の重要性とは、勝ち上がることで、より強いチーム、より高いレベルの相手と、対戦できるというところ。いつも目指しているのは、決勝。そういう大きな舞台で、選手の成長は加速していくと思っています」(狩野監督)

 インドを目指す選手たちの意欲も十分だ。

「アジア予選では、得点に絡めるシーンが少なかった。自分でシュートを打ったり、クロスからのアシストをしたり、ゴール前の精度を上げたい」(箕輪)

「(振りの速いシュートだけでなく)相手の背後へ抜けるスピード、足下でのキープも見てもらいたい」(藤野)

「イタリア、オランダ遠征以外、アジアのチームとしか試合ができていない。世界の中での自分の力、立ち位置を知りたい」(天野)

 UEFA女子チャンピオンズリーグで、大仕事をやってのけた熊谷紗希(リヨン)ら、偉大な先輩たちの背中を追って、若きなでしこが世界への挑戦を始める。

取材・文●西森彰(フリーライター)