カジノを含む統合型リゾート(IR)構想の大本命とされる、大阪・夢洲へのIR誘致に黄信号が灯ろうとしている。夢洲へのIR誘致は大阪の府政、市政を動かす「大阪維新の会」にとって、2025年の大阪・関西万博の開催とともに、経済活性化の切り札となる強力な二枚看板だ。

 しかし、万博はともかく、IRはここに来て雲行きが怪しくなってきた。最大の要因は言うまでもなく、新型コロナ禍による経済環境の悪化だ。これがIR事業者の投資力に大きく響いている。

 懸念材料はまだある。誘致決定が目前というこの時期に来て、IR誘致自体の見直しを求める声が、市民の間で広がっているのだ。その疑問の根本には、インバウンド(訪日外国人旅行者)との関係がある。

 行政や事業者は「IRの利用は日本人がメーン」と語っているが、海外のIRがそうであるように、やはり重要なのはインバウンドだ。だが、今回のコロナ騒動で、インバウンド依存の経済活性化がいかに危険であるかが露呈した。

 新規開業したホテルや飲食店の間からは、「こんなはずではなかった」との声があふれている。繁華街はどこも惨憺たるありさま。しかも、コロナウイルスの感染は拡大する一方だ。

「コロナとの関わりが長期化しそうな今、インバウンドをあてにしたIR誘致は、それこそ不要不急」(ある大阪市会議員)

 大阪府市は、今も「IRは必要」の姿勢を変えていない。しかし、大阪維新の会や大阪都構想を支持する市民団体の中からも、懐疑的な意見が出ているというから、事は今秋に予定されている大阪都構想の住民投票にまで影響しかねない。

 維新悲願の大阪都構想実現に向け、せっかく公明党や自民党の一部を引き込んだというのに、今度は内部から不協和音だ。

「コロナ禍の問題も含め、維新と行政は、大阪都構想とIRの二者択一を迫られるかもしれません」(同・議員)

 コロナ対策、大阪都構想にIR誘致。吉村洋文知事、松井一郎市長の維新コンビにとって、この秋は試練と決断の時になりそうだ。