by - MattW -

氷河湖とは氷河の作用によって形成された湖のことであり、近年では地球温暖化の進行によって氷河湖の水量が増えているとされています。NASAが30年にわたり収集してきた衛星の観測データを分析した結果、「1990年以降で全世界の氷河湖の水量が50%も増加した」ことが判明しました。

Rapid worldwide growth of glacial lakes since 1990 | Nature Climate Change

https://www.nature.com/articles/s41558-020-0855-4

Global Survey Using NASA Data Shows Dramatic Growth of Glacial Lakes - Climate Change: Vital Signs of the Planet

https://climate.nasa.gov/news/3014/global-survey-using-nasa-data-shows-dramatic-growth-of-glacial-lakes/

Glacial Lake Volume Has Surged by 50 Percent in Just 30 Years, Scientists Warn

https://www.sciencealert.com/climate-change-fuels-sharp-increase-in-glacier-lakes



氷河は地球規模で後退しており、世界中の科学者らは氷河の融解による海面上昇などを危惧しています。氷河が融解して生じた水の全てがすぐに海へ注がれるわけではなく、ある程度は氷河湖や地下水の状態で陸上にとどまっています。しかし、カルガリー大学の地形学者であるDan Shugar准教授によると、これまでのところ氷河が融解して形成された湖や地下水の水量を推定するデータはなかったとのこと。

そこでShugar氏らの国際的な研究チームは、クラウドベースの地理空間分析プラットフォームであるGoogle Earth Engineを用いて世界中の氷河湖を調査。さらに、地球環境を観測する目的でNASAなどが打ち上げているランドサット衛星が収集した25万もの画像を分析しました。

研究チームが1990年から2018年にかけて撮影された衛星写真を分析したことにより、それぞれの氷河湖がどのように拡大していったのか、または新たに形成されたのかを知ることができたとのこと。全データは非常に膨大なものだったことから、10年前の技術ではこれほど大量のデータを処理・分析できなかったと研究チームは述べています。

分析の結果、2018年時点での地球全体における氷河湖の水量は156.5立方キロメートルで、これはアメリカとカナダの国境付近にある五大湖のひとつ、エリー湖の3分の1近い水量とのこと。また、1990年から2018年にかけて氷河湖の数は53%、全体の面積は51%増加しており、水量は48%も増えていることがわかりました。



by NASA Johnson

氷河湖は通常の湖とは違い、氷やゆるい岩といった堆積物でせき止められているため、水量が増えすぎたり火山活動が発生したりすることで氷河湖決壊洪水が発生します。これは単に海水面の上昇を引き起こすだけではなく、下流域に住む人々の生活や命を脅かす危険があります。

研究チームが特に氷河湖決壊洪水の危険が高いと指摘するのは、南アメリカのアンデス山脈周辺やブータン、ネパール、パキスタンといった中央アジアの周辺地域です。20世紀だけでも数千人が氷河湖決壊洪水で死亡しており、ヒマラヤ山脈やヒンドゥークシュ山脈周辺では700万人もの人々が氷河湖決壊洪水の危険にさらされているとのことです。



by Sathish J