正直に言って驚かされた。

 長友佑都がマルセイユとの契約を結んだことについて、である。

 ヨーロッパ各国のフットボールも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けている。世界中へ瞬時に拡散するような大型移籍が、今シーズンはまだ成立していない。

 ベテランと呼ばれる年齢の選手は、いつも以上に移籍先を見つけるのが難しいかもしれない。そんななかで今シーズンのチャンピオンズリーグに出場するフランスのトップクラブが、長友を迎え入れたことに驚かされた。

 マルセイユのスタンスは、非常に分かりやすい。

 ポルトガル人指揮官のアンドレ・ビラス=ボアスは、経験豊富なベテランとして、なおかつ左サイドバックの控えとして、長友を獲得したと明言している。左サイドバックだけでなく右サイドバックにも対応し、中盤のサイドでもプレーできる資質も、当然のことながらチェック済のはずだ。

 新型コロナウイルスの感染が拡大すれば、リーグ戦が延期や中断に追い込まれ、その結果としてスケジュールが当初予定より過密になる可能性がある。不確定要素を抱えながらのシーズンということも考えると、計算できる戦力は多いほうがいい。

 ヨーロッパはネーションズリーグが9月から開催され、代表選手は消化試合数がさらに多くなる。休養を与えるべきタイミングもあるはずで、長友のような経験を持った選手が控えているのは、ビラス=ボアスにとって心強いだろう。

 マルセイユが名門クラブだとしても、控え想定での加入である。それならばJリーグへ戻ってきてもいいのでは、とも思うのだが、ヨーロッパという市場にとどまることで様々な可能性をつなぐことができる。

 マルセイユとの契約は1年で、ここから先は1年ずつが勝負となっていくが、高いパフォーマンスを披露すれば契約延長のオファーを受けられるかもしれない。あるいは、他クラブからオファーが届くかもしれない。いずれにせよ、22年のカタールW杯出場を目ざす長友は、ここからさらに自らを高めていくとの思いを抱いているのだと想像する。

 バックアップに甘んじるつもりはない、という気持ちも宿しているはずだ。

 7シーズン半在籍したインテルでは、ほぼすべてのシーズンでポジション争いを繰り広げ、その時々で監督の信頼を勝ち取ってきた。いつかはチャンスが巡ってくると信じて、彼自身は定位置奪取を誓っているはずである。ポジション争いの後方からスタートするのは、今回が初めてではないのだ。 9月12日で34歳になる。フィジカル的な衰えは感じさせないが、トルコとはまた違うフランスのサッカーに適応できるところを、早い段階で示さなければならない。すでにリーグ戦が開幕していることを考えても、スピード感を持って存在感を示していく必要がある。険しい選択をしたと思うが、それもまた長友らしい。