2019年夏に「編集後記ポッドキャスト」として始まった「WIRED JAPAN Podcast」。開始から1年、ついに新番組がスタートする。お届けするのはその名も「WIRED/TIRED with Dos Monos」。ヒップホップグループ・Dos Monosのメンバー、荘子itとTaitanとともに、毎回豪華ゲストを迎えながら世のなかの「ワクワクするもの(WIRED)/退屈するもの(TIRED」について縦横無尽に語らうという内容だ。 

「「言葉の居場所」を探して:Podcast新連載「WIRED/TIRED with Dos Monos」開始、初回ゲストに映画監督の三宅唱が登場!」の写真・リンク付きの記事はこちら

・三宅唱とDos Monos、恵比寿でのアノ出会いを振り返る(00:01:45〜)
・「四季」のWIRED/TIRED:季節というバイナリー/『Dos Siki』(00:03:50〜)
・「ホラー」のWIRED/TIRED:『呪怨:呪いの家』/不可視の可視化(00:15:20〜)
・「詩」のWIRED/TIRED:定型化された言葉/パンチラインへの懐疑(00:34:18〜)
・「球技」のWIRED/TIRED:観客とプレイヤー/白球を追いかける(00:44:37〜)
・「SF」のWIRED/TIRED:SF的想像力/カメラとタイムトラヴェル(00:49:30〜)

荘子it、TaiTan、没の3名からなるDos Monosは、18年に米・レーベル「デスボム・アーク」と契約し、19年3月に『Dos City』でアルバムデビュー。今年5月に発表した台湾のIT担当大臣のオードリー・タンとのコラボ楽曲や、「四季」を脱構築した8月にリリースの最新アルバム『Dos Siki』で話題をさらったことも記憶に新しい、次世代のヒップホップアーティストだ。

そのDos Monosとともにお送りする新連載の記念すべき初回ゲストに迎えたのは、『ワイルドツアー』や『きみの鳥はうたえる』などの長編作品、また今年7月公開のNetflixオリジナルドラマ『呪怨:呪いの家』の監督も務めた映画監督の三宅唱。無類のヒップホップ好きで、19年にはDos Monosの楽曲「アガルタ」のMVも手がけた三宅とともに、Dos Monosとの出会いから、四季やホラー、SFについてまで存分に語っている。

Podcastという音声コンテンツをメンバーによる収録後記のテキストとともに毎月更新していく本企画。強力なパートナー・Dos Monosとお送りする「Podcast連載」という『WIRED』日本版の新たな試みに、ご期待あれ。

〈収録後記 VOL.1〉

脱パンチライン宣言

TEXT BY TAI TAN

Dos MonosのラッパーTaiTanです。相棒の荘子itくんとPodcast連載を始めることになりました。さまざまな物事に対する勝手な印象を「WIRED or TIRED」の二極評価を下すという、由緒正しきWIREDにおいては類を見ないであろう乱暴な連載になる予定です。

今回の連載は当初、テキストでという話もあったのですが、ぼくがどうしてもと粘り、Podcastでの音声連載のかたちをとらせてもらいました。意固地になったのには理由がふたつあります。ひとつは単純にぼくが遅筆すぎて、連載を落としかねないと直感したからで、もうひとつが、音声コンテンツの可能性を実験したいからです。

いま、ぼくは「言葉の扱われ方」を巡る状況にずっとうっすら居心地の悪さを感じています。それはラッパーの自我としてというより、もっとシンプルに26歳の青年として。

アテンションを集めるためだけの断言、人を動物化させる暴論、あるいはソーシャルジャスティスを隠れ蓑にしたただのヘイト。こうしたファストフード的な言説の麻薬じみた快楽に、(無論、ぼくも含め)ずぶと溺れるうち、わたしたちはそれ以外の言葉の価値を自らでせき止めてしまっているように思います。それはまるで、コルクバットでホームランを量産するドーピングヒッターの豪快さに目を奪われるがあまり、犠打師やセットアッパーの存在を軽視してしまうというような。

何より問題なのが、野球ならまだしも、言葉の領域においてこの風潮が加速すると、ややこしい言葉で他人とコミュニケーションすることが馬鹿らしく思えてきてしまうことです。

しかし、言葉の墓地化が止まらないSNS上のクソリプ合戦にくたびすぎて、わたしたちは忘れてしまいがちだけれど、複雑な話を複雑なまま誰かと共有することは根源的に楽しい営みなはずです。ぼくはこの連載で、その快楽を自分たちの体に取り戻したい。

その手段として、Podcastは最適なのでは、という予感があります。わかりやすい結末を用意しなくても構わないし、未消化で生煮えのアイデアをえいと相手にぶつけても別に怒られることはないし、むしろそこからアイデアの輪郭を掴めたりする。

だからぼくはこの連載では、発話者の一瞬の口ごもりや言い澱み、誤認、ズレ、偏見、それら全体を含めて、配置された言葉のニュアンスをできるだけ除菌せず、そのまま記録することを重視したい。たとえ、喉ごしこそ悪くても、食いごたえと栄養がありそうな気がするから。いわば、ラッパーによる脱パンチライン宣言です。

さて、前置きが長くなりましたが(前置きは短く簡潔に、というわかりやすさにこそ抗いたい)、以上のような怠惰心と静かな志から始まったこのPodcast連載。初回ゲストには映画監督の三宅唱さんに来てもらいました。

初回ならではの手探り感もあいまって、話題は無軌道に乱れたのですが、最大の白眉はなんといっても、Netflixで絶賛公開中の『呪怨:呪いの家』を監督したばかりの三宅さんとのホラー談義であります。3人のホラー/恐怖観の違いが色濃く出て、なかなか聴き応えがあるはずです。ほかにも、「2020年の詩の機能」を巡る舌戦から、SFって面白いの?論や白球を追うアスリートに萌えるだなんて話まで、幕の内弁当式に放談を詰め込みました。もちろん、結論めいたことは何も明示されていません。

それでは、これから毎月一度、サクッと流し聴きできようもない、濃厚で喉ごしの悪い発信を心がけてゆきたいと思いますので、ぜひぜひお楽しみいただけたらうれしいです。[showEndmark]

三宅 唱|SHO MIYAKE
1984年北海道生まれ。一橋大学社会学部卒業、映画美学校フィクションコース初等科修了。主な長編映画に『ワイルドツアー』(2018)、『きみの鳥はうたえる』(18)など。最新作はNetflixオリジナルドラマ『呪怨:呪いの家』(20)。他に鈴木了二との共同監督作『物質試行58:A RETURN OF BRUNO TAUT 2016』(16)やビデオインスタレーション作品として「ワールドツアー」(18/山口情報芸術センター[YCAM]との共作)、「July 32,Sapporo Park」(19/札幌文化芸術交流センターSCARTSとの共作)などを発表している。

荘子it|ZO-ZHIT
1993年生まれ。東京を拠点に活動するトラックメイカー/ラッパー。2019年3月20日にデビューアルバム『Dos City」をアメリカのDeathbomb Arcからリリースし、国内外で大きな反響を呼んだDos Monosを率いながら、個人としても様々なアーティストへの楽曲提供を手がける。また、楽曲制作に限らず、テレビやラジオ番組のMC、執筆など、現在もインディペンデントかつ越境的に活動の幅を拡げている。

TaiTan
1993年生まれ。ラッパー。Dos Monosのメンバーとして2018年にアメリカのレーベル・Deathbomb Arcと契約し、19年にファーストアルバム『Dos City』、2020年にセカンドアルバム『Dos Siki』を発表。コピーライター/プランナーとしても活動し、Dos Monos「Abletonトラック制作画面公開広告」やBudweiserの「RE:CONNECT」等を手掛ける。最近は音声コンテンツ制作に目覚め、MONO NO AWARE 玉置周啓氏とのPodcast配信等にも注力。