読み終わった最近の本は劇団EXILEの佐藤寛太にあげたり薦めたりすることが多い。彼とは性格は全く合わないのに(笑)、小説と漫画と映画の趣味が恐ろしく合う

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片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡6

 コロナ禍に韓国絡みのブームはあったものの、普段の作詞家・小竹を構成するものは「読むこと」だという。一生涯の友という小泉今日子との関係に触れた後、片寄からの“人生の師”や“心の友”について尋ねた質問に対して、どう答えたか?

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片寄涼太様

 アンニョンハセヨー。

 このコロナ禍、大人になってからこんなに自分だけの時間を持ったのは久しぶりだったので、数々の韓国ドラマだけではなく、数々の韓国映画も観て、韓国の作家が書いた本(『私は私のままで生きることにした』(キム・スヒョン著)や『あやうく一生懸命生きるところだった』(ハ・ワン著)など)まで読んでいた。ついでに、朝の情報番組内で特集していた韓国大手事務所と日本のレコード会社の共同オーディション企画「Nizi Project」にも夢中になっていた。

読み終わった最近の本は劇団EXILEの佐藤寛太にあげたり薦めたりすることが多い。彼とは性格は全く合わないのに(笑)、小説と漫画と映画の趣味が恐ろしく合う

 ただし、批評的なスタンスを持って鑑賞していたわけではなく、恐ろしくダラダラと観たり読んだりしていたので、費やした数十時間(もっとか?)が、作詞家の私にとって素晴らしいインプットになっているかどうかは定かではないのが私のドンマイ! なところである。

 さて、TikTokはもちろん知っている。なぜなら、ここ5年くらい私の周りでは大ベビーブームが続いていて、友人・知人の子供たちが私の生活圏にどっぷりと入り込んできたから。子供たちは揃いも揃って皆TikTokが大好きだ。でも私は全然興味がない。最初は、チョコレート菓子の名前(KitKat的な)かと思ったくらいだし。

どんどん増えてしまうので、本棚に収納できる分(500冊程度)しか本を持たないことにしている。これは手元に置いておきたい大切な本&最近好きな漫画の一部

 アメリカに住んでいた頃の「映画ブーム」、数年に一度訪れる「韓国ドラマブーム」を別にすると、やはり私のブームの火種はいつも「読むこと」なのだと思う。

 昔から「趣味は?」と聞かれるたびに「読書」と答えてきた。金を他のことに使うくらいなら本を買ったほうがいいと、とても自堕落な生活をしていた時期でさえも書店や古本屋に通い詰めていた。本は、映像や音楽よりも私の感情を震わせるものだったから。そして、二十代三十代、私には「小泉図書館」があった。

 小泉今日子さんは、私の一生涯の友である。暇なときはいつだって彼女の家に入り浸っていた。本好きで、しかも長い間読売新聞で書評を書いていた彼女の家には、ちょっと読み切れないくらい新旧織り交ぜ常に数百の本があった。まさしく「私立図書館」だったのである。

 そこで頻繁に本を借りたり貰ったりした。全巻揃っている漫画なんかは、彼女の家で座敷童のごとく読み耽ったし(迷惑)、私の本の好みを知っている彼女が「これ好きだと思う」とさりげなく薦めてくれる作品には見事に感銘を受けた。

 そんなこんなで、ありとあらゆるジャンルと作家の本を無料で読むことのできていた私は、いつしか立派な活字中毒になり、寝る前に何かしら読まないと眠れない体質に。そして自分が本当に好きな書物は「純文学」と「漫画」なのだと気づいた。

 年齢を重ねるごとに、自己啓発本や歴史モノや推理小説からは興味が薄れて行き、心を凪状態にしてスラスラ読めるのに、奥深くて情緒溢れる文章で圧倒してくる作家(例えば、宮本輝、吉田修一、井上荒野、坂元裕二、桜木紫乃の各氏など)のものを主に選ぶようになった(他にも好きな作家はまだまだいますし、漫画もことに愛おしい存在です)。

 で、君からの質問の回答……。“人生の師”と呼べる作品も“心の友”と呼べる作品もありすぎて決めかねる。カッコつけるわけではなく、何百冊もの小説や漫画が私の“人生の師”であり“心の友”です。ここ最近では、同じく吉田修一氏の『国宝』でも『続 横道世之介』でも嗚咽を漏らしたし、昭和の時代から30年以上続いていた宮本輝氏の『流転の海』シリーズが完結したときには恩師が亡くなってしまったかのような寂寥感だった。海外作家のものだと『掃除婦のための手引書』(ルシア・ベルリン著)。アメリカの大学生だった頃(SNSなどという言葉が存在しなかった頃)の自分に会いに行きたくなるような感傷と郷愁を抱いた。

 涼太は、デビューしてからの8年強で、自身のグループの持ち曲、コラボ曲、テレビの特番などで歌った他のアーティストの曲、数々のドラマや映画の台本と出合った結果、それらは立派に君の血肉となり、知性は磨かれてきた。それを私は目の当たりにしているよ。遅読派だって構わない、読むことをやめずにいてください。

小竹正人                 

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS「You & I」が配信中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2020年8月30日 掲載