コロナ経て学生が選んだ「就職人気ランキング」
就活後半に調査した「就職人気ランキング」で2位にランクインした明治グループ。女子学生に限れば1位になっている (編集部撮影)
「前例のない就活」。新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまでにない採用・就職活動が展開されることになった。人が密集する合同会社説明会などのイベントは、早々に中止となり、オンラインによる説明会が実施されるようになった。
緊急事態宣言発出後は、面接などの採用もオンラインで行われるようになり、一度も会社を訪れずに内定を得た学生も多い。3月までにインターンシップに参加し、会社との接点があった学生は、選考が進み早めに内定を得ていたものの、3月になってから活動を始めた学生は、なかなか内定が決まらない日々が続いた。
ただ、内定率は前年並みに近づいている。ディスコのキャリタスリサーチが発表した8月1日時点の内定率は前年比4.5%減の83.7%。2021年卒の就職活動はほぼ終盤戦の様相となっている。
コロナ禍に就活した学生が選んだ就職人気企業
そんな中、2021年卒の学生が「就職したい」と選んだ企業はどこか? それがわかるのが、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所が行っている「就職ブランドランキング調査・後半」の結果だ。
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ランキングは、同社の就職サイト「ブンナビ!」に登録する2021年春卒業予定の大学生や大学院生を調査の対象に行っており、今回は約1万人から回答を得ている。就活生の企業選びは、前半はあこがれやイメージが先行するが、業界研究や面接などを経た後半は、より現実的に企業を見る傾向にある。その違いを調べるために年2回の調査を行っており、今回はその「後半」の就職人気ランキングを掲載した(前半の結果はこちら)。
ただ、このランキングにはもう1つの意味がある。それは「コロナ禍を経た就職人気ランキング」でもあるということだ。調査は3月中旬から6月末と、最初の感染のピークが訪れ、緊急事態宣言が発出されていた時期と重なる。コロナ禍の影響も考慮して学生は人気の企業を選んでいるということになる。
そのトップ300社を見ていこう。
1位は伊藤忠商事。前半ランキングと同様1位の座をキープしている。男子1位、女子2位と男女問わず多くの票を集めた。「朝型勤務」など、積極的な働き方改革が評価されている同社だが、全員に在宅勤務を指示するなど従業員のコロナ対策でも高い評価を受けており、それが1位の座をキープする結果にもつながっている。
伊藤忠商事だけでなく、5位の丸紅など商社人気が高まっている。8位の三菱商事は前半の31位から、12位の三井物産も前半の80位からそれぞれランクアップした。
2位は明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)。前半の5位から順位を上げた。女子の順位が1位で、女子学生票が順位を上げる大きなポイントとなっている。コロナ後を考えたとき、食品などはエッセンシャル(不可欠)な業種として、志向されたと思われる。
理系学生のトップはソニー
3位は大和証券グループ、4位は日本生命保険と続く。金融は前年とあまり差がなく、コロナの影響が就職人気ランキングに影響を受けることは少なかった。また前半の9位から順位を上げた7位の損害保険ジャパンは、選考活動をすべてオンラインで実施しており、そうしたコロナ禍での対応も、評価につながっているのかもしれない。
上記以外のトップ10には、6位に博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ、9位に大日本印刷が入っている。10位はソニーで、前半の100位から大きくジャンプアップした。理系学生ランキングでは1位となっており、理系学生の支持を多く集めた格好だ。採用ホームページの斬新さなどが評価されており、そうした点もランクアップにつながったと思われる。なお、男子学生のランキングでも2位に入る。
一方、これまで就職人気ランキングの上位常連だったエアラインは、コロナ禍による移動制限の影響を受け業績が悪化し、採用を中止する事態に陥った。ランキングにも影響が出ており、前半2位で前年(2020年卒)後半のランキングで1位だった全日本空輸(ANA)は15位までランクダウン。とくに男子は前半の4位から後半は63位と大きく落ち込んだ。
日本航空(JAL)も同様に前半10位から後半は25位にランクダウン。また、ANAエアポートサービス(128位)やJALスカイ(153位)といったグループ企業も採用中止の影響を受け、軒並みランクを下げている。
コロナ禍で就活生の考え方も変わり、そこで会社がどのような対応をしたか、また、今後の業績への影響などを志望企業の判断材料にするようになっている。そうした結果が今回のランキングには表れているといえるだろう。
■調査について
調査主体:文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所
調査対象:2021年春入社希望の「ブンナビ!」会員(現大学4年生、現大学院2年生)
調査方法:文化放送キャリアパートナーズ運営の就職サイト「ブンナビ!」上でのWebアンケート、文化放送キャリアパートナーズ主催の就職イベント会場での紙アンケート、文化放送キャリアパートナーズ就職雑誌同送ハガキアンケート
※投票者1人が最大5票を有し、志望企業を5社まで選択する形式
調査期間:2020年3月16日〜6月30日
回答数:11882(うち男子4996・女子6886/文系9935・理系1947)
総得票数:27250票
「就職」を重視する学生は「企業イメージ(企業価値)」よりも「仕事イメージ(仕事価値)」に重点を置くとの仮説の下で、ランキングを算出。
就職者誘引度は、学生が企業イメージと仕事イメージのどちらを企業選択時に重視したかという回答によって算出。企業イメージのみで投票した場合は就職者誘引度0、仕事イメージのみで投票した場合は100とし、得票平均値を就職者誘引度としている。
総得票数×就職者誘引度=就職ブランド力とし、就職ブランド力を基にランクを計算。
社名はアンケート上の名称で、1採用窓口=1社名を基準にしている。社名変更等で調査時の社名と異なる場合がある。グループで採用が一本化されている場合は「○○グループ」等で表記。