大塚製薬/ポカリスエットCM「ポカリNEO合唱 ボクらの夏」篇 60秒

例年8月は新CMが少ない傾向にあるが、今年はコロナ禍も加わったことで8月前期の新CM数としては、月2回の調査を開始した2004年4月以降で過去最少の324篇にとどまり、ランキング上位には既存CMが目立った。

CM好感度の首位にはソフトバンク『SoftBank』が立った。「5Gってドラえもん?」をコピーに、ブルース・ウィリスがドラえもん、鈴木福が15歳ののび太を演じるシリーズの新CMで、のび太らの下校中の一幕を描いた。5Gで実現する自由視点映像について尋ねるジャイアンに、スネ夫が「タケコプターで自分の好きなところから見るのと一緒」と答える。ドラえもんがタケコプターを差し出すも「ドラえもんの道具いらなくね」などと言われてしまう内容だ。

意外性のあるキャスティングとコミカルなストーリーで分かりやすく5Gのベネフィットを訴求し、小学生からシニアまで幅広い世代の支持を集めた。

長く愛される『ゼスプリ』と『DMM英会話』

2、3位には4〜6月にかけて大ヒットしたCMがランクインした。2位は“キウイ・ブラザーズ”が「♪ヘルシーは好きなことを楽しみながら」などと歌い踊るCMを展開するゼスプリインターナショナルジャパン『ゼスプリ キウイフルーツ』。6月下旬にスポットを中断していたが、当期は60秒CMのみの展開で62回オンエア。心和ますCMソングやキャラクターのかわいらしさが引き続き高く評価された。

3位はDMM.com『DMM英会話』。矢作兼が講師役のアイクぬわらから英会話のオンラインレッスンを受けるCMが好調で、7月10日にスポットを再開すると7月後期、8月前期と2期連続のトップ3入りを果たした。

ランキング上位のうち、注目したいのは5位の大塚製薬『ポカリスエット』。汐谷友希ら大勢の中高生がCMソング『ボクらの歌』を歌う自撮り動画をつないだCMの続篇で、汐谷ら“青波高校”の1クラス36人が一堂に会して“ポカリNEO合唱”を披露する作品だ。

舞台は海辺に碁盤の目状に設営された鏡張りのステージ。ソーシャルディスタンスが保たれたそれぞれのステージに生徒がひとりずつ立ち、噴水を浴びながらエネルギッシュに歌い踊ったり楽器を演奏したりする姿を描いた。

女子中高生を筆頭に多くの支持を獲得し、モニターからは「画面越しにエネルギーが伝わってくる」「青春を感じた」といったコメントが寄せられるなど、生徒たちの熱量の高いパフォーマンスが人々の心を捉えたようだ。ウェブではCM撮影に至るまでの汐谷らを描く7分35秒のドキュメンタリードラマや、71人の若者が出演するCMソングのミュージックビデオも公開している。

昨今は出演者がビデオ会議で語らうCMや有名タレントを声優に起用したアニメCMなど、コロナ禍に対応したCMが数多く誕生しているが、本作はニューノーマルに配慮しながらも生徒たちのエネルギーを壮大なスケールで表現。「渇きを力に変えてゆく。」のコピーとともに、閉塞感を感じさせないポジティブなメッセージを発信した。

CM起用急増中の「出川哲朗」を好感

このほか注目したいのは、10位に入ったサントリー食品インターナショナル『GREEN DA・KA・RA(グリーン ダ・カ・ラ)』のCMだ。ブランドキャラクターの“グリーンダカラちゃん”と“ムギちゃん”が出演するシリーズCMの新展開がヒット。新たに出川哲朗が“鉄分のてっちゃん”として起用されたことが話題となった。

サントリー食品インターナショナル/GREEN DA・KA・RA CM『あたらしいおともだち』篇 15秒 しずくちゃん なぎさちゃん 出川哲朗

CMは「♪夏だよグリーンダカラちゃん」といったおなじみのCMソングをBGMに、青空の下でグリーンダカラちゃんたちが元気よくトランポリンで遊ぶ場面に始まる。「♪新しい友だち?」という歌とともに満面の笑みを浮かべた出川が登場すると、続けて「♪名前はてっちゃん 鉄分のてっちゃん 暑くても元気です」という歌詞に合わせて出川がトランポリンの上で楽しげに飛び跳ねる様子が映される。

ラストは空と海をバックに3人が腰に手を当てて商品を飲む姿に「夏には鉄分!」のコピーを重ね、商品をリニューアルして鉄分を追加したことを訴求した。

中高生や30、40代の女性をはじめ、幅広い世代から支持を集めた。モニターからはCMに出演するしずくちゃん、なぎさちゃん姉妹のかわいらしさに関するコメントが目立ち、2012年から続く本シリーズを毎年楽しみにしているという感想も見られた。

また「大好きな出川さんの笑顔がとってもよいです」「てっちゃんとして出川哲朗が出てくるのがよい」などのコメントからも出川の起用が視聴者の興味を喚起したことがわかる。

出川はここ数年でCM起用が急増しており、昨年は芦田愛菜や横浜流星らと“ワイモバダンス”を披露したソフトバンク『ワイモバイル』をはじめ、PIZZA-LA、永谷園、日本瓦斯などのCMに出演。今年は現在までに6社のCMに登場しており、親しみやすく飾らないキャラクターが小学生や女性を中心に支持を集めている。出川の起用によってグリーンダカラの優しく温かい世界観にインパクトが加わり、商品のリニューアルを楽しげにアピールすることに成功したようだ。

同じく新CMキャラクターが話題となった事例として、石原さとみを起用したゼンショー『すき家』(12位)を紹介したい。CMは期間限定商品の『うな牛』をテーマに、すき家のテイクアウトサービス“おうちすき家”の利便性や魅力をアピールするというもの。

ゼンショー/すき家CM『うな牛』篇

「夏のご機嫌をいただきます。」のコピーに始まり、自宅のベランダで石原が笑みを浮かべながら『うな牛』のうなぎと牛肉を順番に口に運ぶ様子に「うな、うな、牛、牛…」という心の声が重なる。最後はうなぎの上に牛肉をのせて一緒に口に入れた石原が「んー!」と声を上げて商品を堪能する姿を描いた。

モニターからは「おいしそうに食べているのを見て食べたくなった」「気取らずに食べているところもいいし、アップにされる丼もおいしそう」などのコメントが寄せられた。CMの支持層を見ると、設楽統が会社員を演じるCMをオンエアした前年同期は男性の支持が9割だったが、本作は大きな男女差はなかった。

モニターの感想には「石原さんが牛丼を食べる意外性がいい」などの声もあり、男性や家族連れのイメージが根強い牛丼チェーン店のCMに人気女優を起用したことがターゲット層の拡大に貢献したと考えられる。

CMで描かれる「新しい日常」続々

本作はステイホーム時間の充実を図る人の増加を背景に制作されたもので、ポカリスエットのCMと同様にウィズコロナの今をポジティブに描いたことも好評価の大きな理由ではないだろうか。

このほかランキング上位を見ると堺雅人が自宅で子どもたちと楽しげに掛け合う日本マクドナルド『チキンマックナゲット』(6位)、木村拓哉がドライブスルーをする同社の『ちょいマック』(7位)など、コロナ禍にあっても自然体で過ごす人々を映すCMが目立った。CMの中で今後どのような“新しい日常”が描かれていくのか、引き続き注目したい。