「婚姻届」代わりのタトゥーに込められた、同性婚合法化への願い
日本では未だ根強くある、タトゥーへの偏見。それでも多くの人が、体に思い思いのタトゥーを残している。見ただけではわからないけれど、彼らにとっては意味深いタトゥーも。
コスモポリタンでは、そんな彼らにタトゥーを入れた理由を聞いてみました。
ゆり(32歳)/会社員、あず(28歳)/会社員
―― “婚姻届”としてタトゥーを入れた時の投稿、Twitterで拝見しました。
ゆり:同性婚が認められないなかで、二人の中で“証”のようなものを残せたらいいなっていう思いがあり、お揃いのタトゥーを入れることにしました。
あず:本当に大切なパートナーだと思っているので、その証として“体に一緒のものを刻みたい”と思ったんです。
婚姻届を互いの体に入れました✌︎ pic.twitter.com/wgCtSOSGIK
— じ (@jxjxjxzima) July 20, 2020
ゆり:もともと植物モチーフで、シンプルなものを入れたいという思いがあって。花言葉とか色んな意味を調べていたら、ローズマリーが一番デザイン的にも、意味としてもぴったりだったんです。「変わらない愛」などという意味が込められていたので、ローズマリーにしました。
あず:お互い「これだ!」って思って、すぐ決めましたね。
――もともとタトゥーは入れたいと思っていましたか?
ゆり:単純におしゃれだからという理由で、私はずっとタトゥーを入れたいっていう気持ちがありました。だけど会社員として働いているので、なかなか勇気が出なくて入れられずにいたんです。
でも今のパートナーと出会って、彼女の左腕にあるタトゥーを見たときに、「やっぱりいいな、入れたいな」って思って。彼女もちょうど、もう1つタトゥーを入れたいという気持ちがあったみたいで、一緒に入れることにしました。
――鎖骨部分にタトゥーを入れた理由を教えてください。
ゆり:私も彼女も普通の会社員なので、なるべく服を着たときに、見えない場所を選ばなきゃいけなくて。その中で自分たちが一番納得のいく場所が、鎖骨でした。この位置だったら、仕事のときは見えないけど、プライベートで服を着たときは、見せることができるので。
――このタトゥーを入れることに、不安はありませんでしたか?
あず:私は、迷いは一切なかったです。
ゆり:私はありました。タトゥースタジオに到着してから、すごく緊張してきちゃって。一生残るものだから、本当に入れてしまっていいのだろうかという気持ちもあったり。あとは単純に痛いことが苦手なので、ギリギリまで不安はありました。
今まで「これ、やってみたいな」って思っても、やらずに生きてきた人生だったので、やっぱりここでやめたら一生やらないし、なんかそういう自分から変われる気がするって思って入れることにしました。
――タトゥーを入れたことで、何か変わったことがありましたか?
ゆり:正直、入れた後は自分自身の心境の変化はそんなになくて、Tシャツをずらしたら、タトゥーがあって「うれしいな」というぐらいでした。本当にその程度だったんですけど、Twitterで投稿したら、自分たちの想像をはるか上をいく反応がもらえたんです。
その反応を見たときに、タトゥーに対してもそうだけど、同性愛とかそういったものに対しても、「世の中ってこんなにあったかいんだ」って、すごくびっくりしました。あのツイートをきっかけに、タトゥーを入れようか迷っている人や同性愛のことで悩んでる人からも、たくさんメッセージをもらいました。逆に私自身も、みなさんから影響を受けたので、発信してよかったなって思っています。
――実際どのようなメッセージが届きましたか?
ゆり:「どこで入れましたか?」「費用はどのくらいかかりますか?」から、「タトゥーを入れるか迷ってるんです」という相談もいただきました。あとは、体にある傷をコンプレックスに思われている方が、その傷を隠したくて入れたいと思っていたけど、私たちのツイートを見て、「入れる方向で考えてきたい」って言ってくれたりもしました。
あず:DMだけじゃなくて、「入れる勇気が出なかったけど、入れてみようって思いました」っていうリプライもありました。私自身も日常で変わったことはなかったんですけど、周りからの反響が思ったより、すごかったなと感じましたね。
それに「タトゥーは好きじゃないけど、このタトゥーはいい」って、リプライしてくれた方もいました。この方がタトゥーに対して、ちょっとでもそういう思いを抱いてくれてよかったなって感じています。
――こんな世の中になっていったらいいなと、思うことがあれば教えてください。
あず:ファッションといいタトゥーといい、セクシャリティなども含め、人それぞれの個性が認められる世の中になってほしいですね。周りの意見や世間が決めた基準・価値観などに左右されず、自分らしく堂々といたい。
それに、マイノリティや弱者にとってやさしく、女性の権利もきちんと尊重される世の中になるべきだと思います。そのためには、若いときから政治に関心を持って行動する意識が大切だと思います。
ゆり:日本は、新しいものやマイノリティなものに対して、否定的になってしまうことが多いと思うんです。日本全体でみたらほんの一部だと思うんですけど、やっぱりTwitterの反応を見てみて、これだけ多くの人が好意的に反応してくれたっていうのがとてもうれしかったです。
タトゥーだけじゃなくて、痩せてることが綺麗だとか、肌の色が違うから差別するなど、そういう見た目のことでも、どんどん偏見がなくっていってほしいです。タトゥーもあくまでファッションの一部っていう考えの人もいるということが広まれば、こそこそ隠れる位置に入れなくていい未来が、来るんじゃないかなと思います。
ゆり@jxjxjxzima