「高校時代は勉強もできたし、性格も穏やか。女優の新山千春に似た、才色兼備な女性だったんですが……」

【画像】“ベンツひき逃げ”中川の高校時代のプリクラ

 悪質極まりないひき逃げ犯の過去を知るA氏は、そう言って唇を噛む。発生当時は空白だった謎の“セレブ女”の経歴が、新たな証言で浮かび上がってきた。

職質を振り切り100キロ近いスピードで暴走

 今年5月20日昼過ぎのこと。東京都大田区の路上で、中川真理紗(31)の運転する白いベンツが会社員の高橋悠さん(当時34)を背後から跳ね飛ばし、死亡させた。警察の職務質問を振り切り、100キロ近いスピードで暴走した末に起こした大惨事。なおも現場から走って逃げ去った中川はすぐに逮捕されたが、その尿から覚醒剤の成分が検出された。


女性を巻き添えに大破したベンツ(手前)

「SNSには、複数の高級車のほか、高級ホテルや海外旅行先の様子など、セレブ感溢れる日常がアップされていたが、逮捕時の職業は『自称・飲食店店員』。川崎市内の庶民的な集合住宅で育った、偽りのセレブでした」(社会部記者)

 中川は子供の頃、翻訳関係の仕事をしていたという父をガンで亡くし、母親に女手一つで育てられた。

 A氏が振り返る。

「真理紗は実家のある川崎から都内の中高一貫校に通っていましたが、高3から駿台予備校にも通い始めたんです。僕はそこで彼女と知り合いました。彼女の志望は早稲田か慶応の文系学部。お洒落で美人だったので、予備校でも男子に人気がありましたね」

「父方の遠縁には……」伝説の人物とのつながりを吹聴

 予備校に通っていた当時、中川が縁戚者として吹聴していたのが、吉田茂元総理の側近でGHQとも渡り合い、伝説の実業家でもあった人物である。

「彼女はアメリカの帰国子女だそうで、父方の遠縁には、あの“白洲次郎”がいると。『だから私にも国際感覚がある』と話していたのを覚えています」(同前)

 一浪の末、中川は明治大学の政経学部に合格。大学時代から交流を持つB氏は、その素顔をこう明かす。

「学費は奨学金を利用していましたし、装飾品や生活が派手だったことはなかったです。政治のほか、宗教やオカルトに興味を示し、面白半分で集会に参加してくるような行動力のある子でした。ヤンキー気質な男が好きで、ネットで知り合ったホストと付き合っていたこともありました」

過去の愛車はマニュアルのシルビア

 車好きなところは、学生時代から筋金入りだった。

「ローンを組んで買った愛車はマニュアル車のシルビア。ハンドルを持つと性格が変わる“スピード狂”でした。首都高を飛ばし過ぎて、車が炎上する事故を起こしたこともある」(同前)

 大学卒業後、中川が定職に就いた形跡はなく、SNSではモデルや投資家などを自称していたが、B氏にはこんな“ビジネス”を打ち明けていた。

「ある国では貴金属をいくつまでなら買っても税金がかからない。だからそれを日本で売れば、消費税分の利鞘が稼げると。そんな儲け話を熱くしていた。もともと頭の回転が早い子で、英語も日常会話くらいならできましたから」(同前)

「ひと通りのドラッグはやった」

 中川の口から違法ドラッグに関する“自白”が飛び出したのは、事件の半年ほど前のことだったという。

「DMTという、臨死体験ができる幻覚剤を使ったことがあると。仲間が逮捕され、自分も身柄を持っていかれたけど、シラを切り通したら不起訴になったと豪語していた。『ひと通りのドラッグはやった』とも話していましたね」(同前)

 そして、最悪の事態は起きた。被害者の高橋さんは当日、たまたまその場所を歩いていたに過ぎず、微塵の落ち度もなかった。

「中川は自動車運転死傷処罰法違反などで起訴された後、覚醒剤取締法違反で再逮捕された。公判はこれからです」(前出・記者)

 想定される量刑について川畑さやか弁護士が語る。

「覚醒剤の陽性反応が出ており、危険運転致死傷罪が適用されてもおかしくない事案です。実刑は免れず、過去の判例に照らし合わせれば10年以上の重い量刑になる可能性があります」

 この先、中川を待ち受けているのは、幻覚ではなく峻厳な現実である。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年8月13日・20日号)