投資で成功するための「鉄則」はあるのか。投資家の村上世彰氏は「モノの値段は『需要と供給』で決まる。だから価値と価格は等しくない。投資の鉄則は、価値に比べて価格が割安になっているタイミングで買うこと。それはサンマの価格をみればよくわかる」という――。

※本稿は、村上世彰『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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投資家の村上世彰氏 - 写真提供=KADOKAWA

■物の値段を決めるのは需要と供給

投資を行う上で価値と価格の見極め方はとても大事です。これは「期待値」を考える前提にもなります。

まず、私の大好きなサンマの話からしたいと思います。

私はサンマが本当に好きで、日本に帰国する度に必ず食べます。9月(2019年)に帰国した時にもサンマを食べましたが、あまり脂がのっていない痩せ細ったサンマが1尾500円くらいしました。

ところが今回帰国(2019年11月)して食べたサンマは脂がのっていてとても美味しくて、1尾150円くらいでした。

■「1尾150円、500円。サンマの値段はなぜこんなに違うのか」

サンマの値段はどうしてこんなに違うのでしょうか。分かる人いますか?

写真=iStock.com/marucyan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marucyan

そうです、9月にはサンマはほとんど獲れなかったけど、11月にはサンマがものすごく獲れるようになった、ということですね。

9月といえば本来は美味しいサンマがたくさん獲れる時期なんですけど、今年はものすごく不漁だった。出回るサンマがものすごく少なかったので、あまり美味しくない上に値段が上がってしまった。

ところが、11月になると美味しいサンマがたくさん獲れるようになって、それで値段が下がりました。

このように、価格というのは需要と供給の関係で決まります。つまり、それを求める人がたくさんいるのに供給が少なければ価格は上がるし、たくさん供給されているのにそれを求める人が少なければ価格は下がります。

世の中の様々なモノの値段は、ほとんどがこの需要と供給の原理で決まっています。

■「価格」が「価値」を大きく下回った時に買う

ここで注意していただきたいのは、価格と価値は違うということです。

村上世彰『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)

一般的には、価値が高ければ価格も高くなりますし、価値が低ければ価格も低くなります。そうしたことから、高価なものというだけで価値があるものなのかな、と思ってしまいがちになります。

しかし、価値と価格は等しくない。ときには大きく乖離してしまうこともあります。これを見極めることがとても大事です。また、このときに投資の大きなチャンスも生まれます。

そんなに価値が高くないのにものすごい高値がついてしまう状態を割高といい、その乖離がひどいとバブルになります。

1989年とか1990年前後のいわゆるバブル時代には、株や不動産などの資産価格がバブル化しました。実際の価値の何倍もの値段がついてしまったのです。

どうしてそういうことになったかといえば、株や土地を欲しいという人が殺到して、需要が供給を大きく上回ったからです。当時は景気拡大が続く中で地価や株価の上昇が続き、不動産価格は上がり続けるもの、株価は上がり続けるもの、というような「土地神話」や「株神話」ができてしまいました。そして、日本銀行の金融緩和による金余り現象もあいまって、株や土地に投資マネーが殺到しました。

■株価が上がる様子を見て「もっと上がるのでは」という思惑で買う

このように、何らかの理由で株にお金が殺到してしまい、株価が実際の価値よりもはるかに高くなってしまう現象が時々起こります。2000年ごろに起きたITバブルもそのような現象でした。

バブルの時に株や土地を買っている人たちは、株や土地の価値を考えて買っているのではなく、どんどん価格が上がる様子を見て、「もっと上がるのではないか」という思惑で買っています。こうした買いが殺到することで、本来の価値とはかけ離れた値段がついてしまうのです。

しかし、こうしたバブルは長続きするわけがなく、やがてはじけて、適正な価格まで落ちていきます。それどころか、バブルの反動で適正価格を大きく下回ることもあります。

バブル経済崩壊後やITバブル崩壊後、さらにはリーマンショックのような金融危機の時には、地価や株価が本来の価値よりも大きく下がる、という状況が起こります。このような時こそ投資家にとっては大きなチャンスです。私が株や不動産を買うのはこういう時です。

そうです、投資で成功するためのコツは、「本来の価値に比べて価格が大きく割安になっているときに買う」ということなのです。

逆にバブルの状況の時には、どんなに儲かりそうな雰囲気になっても手を出さないことが大事です。バブルの雰囲気に煽られそうになったら、今一度冷静になって、「その株の本当の価値はどのくらいか。その値段は割安でお買い得なのか」ということを考えてみましょう。

■買い物上手は何を買うにしろモノの価値をよく知っている

実は今述べていることは何も特殊なことを言っているわけではなくて、普段の買い物にも通じることです。買い物上手な人というのは、物の価値がよく分かっていて、その価値に対して価格が適正、もしくは割安な時に買っているわけです。

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投資で成功するためにも、買い物上手になるためにも、物の価値や価格の感覚を養うことが大切です。たとえば買い物上手な主婦の人というのは、毎日のようにスーパーマーケットに行ってよく物の値段を見たり、チラシで各店の価格を比べたりと、とにかくよく観察して研究しています。

物の価値を考えることはすごく大事なことなので、皆さんも普段から「これはどのくらいの価値なんだろう」とか、「どうしてこういう値段がついているんだろう」というように考えるくせをつけてみてください。

私自身は、小さいころから百貨店の値札にすごく興味をもっている子どもでした。物を買うということにはほとんど興味がなかったのですが、値札を見ては、「どうしてこういう値段なんだろう」と考えることがとても好きでした。物の値段そのものにすごく興味があったのです。今考えると、こうしたことが物の値段や価値に対する感覚を養うことに役立ったのだと思いますし、投資家として良いトレーニングになっていたのだと思います。

■投資家・村上世彰氏が4人の子どもに実践する「マネー教育」

また、私には4人の子どもがいるのですが、家族で外食に行った時に彼らと一緒に「食事代当てゲーム」というのをいつもやっています。これは会計の前に食事代が合計いくらになったかを一人ひとりが予想して、一番近い予想金額の人が賞金を貰えるというゲームです。

まずは、お店に入った時にメニューを一通り見て、できるだけ各メニューの金額を覚えるようにします。そして、会計前にじゃんけんで順番を決めて、一人ずつ予想金額を言います。その際、先に予想を言った人の金額と500円以上離さなければいけないというルールがあります。

このゲームで勝つにはできるだけメニューの金額を覚えることが役立つわけですが、とてもすべてのメニューの金額を正確に覚えることはできません。そこで、一つひとつのメニューについて「どうしてこれはこういう金額なのか」と考えるくせをつけます。そうすることで、「この料理はだいたいこの金額だな」という感覚が養われます。値段を覚えるというよりも値段について考えて感覚を養うことが大事なのです。

これは家族で楽しむためのゲームではありますが、価格と価値の感覚を養うのに、とても役立つゲームだと思っています。このように、いろいろ工夫して、ゲーム感覚で価格に対する感覚を養うのも1つの手だと思います。

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村上 世彰(むらかみ・よしあき)
投資家
1959年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業後、83年通商産業省(現・経済産業省」)に入省。コーポレート・ガバナンスの普及に従事する。のちに独立し、99年ファンド会社を設立。現在はシンガポールに拠点を移して投資を行う。2016年には村上財団を創設し、中高生の金融教育や社会支援にも取り組んでいる。19年角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校投資部の特別顧問に就任した。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)、『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)、『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)など。
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(投資家 村上 世彰)