続々登場する新型車のおかげで市場は飽和気味に

 高級車ではさすがに無理なものの、軽自動車やコンパクトカーだとヒトケタ万円の中古車も稀にある。郊外の中古車店ではずらりと並んでいて、専門店のようになっているところを見かけたりして気になったりもするだろう。

 何百万円もする新車がある一方、数万円で買える中古車があるという事実。装備や機能に差はあるけれど、高速で移動可能という点では同じではある。完全な足グルマとして割り切れるのなら、激安中古車というのもアリなのではと思えてくる。しかし、そもそも大丈夫なのだろうか? 一瞬で壊れたり、車検や点検の費用が激高になったりというリスクもありそうだ。

 まずは知り合いの中古車屋に電話して聞いてみた。開口一番返ってきたのは「ああ、もちろん大丈夫」という、なんとも気の抜けた言葉。そんなことをわざわざ聞くのかという感じで、理由としては「今どきのクルマは丈夫だし、これだけドンドンと新車を売るんだから、中古車もドンドンと増えるわけ。もちろんすべてがそうとは限らないが、安全装備の進化も早いから、装着されていなかったり、年式がちょっと古いだけでも高評価なんてないからね。とにかく安いを超越した、価値なしのクルマはいっぱいあるよ」とのこと。

 結局、昔なら「手放す=廃車」というパターンも多かったのが、手放したところで、まだ使えるレベルが多い一方、商品価値は10年落ちぐらいの実用車はほぼ無くなってしまうので、安く売ることができるという図式だ。

 ちなみに仕入れは2パターンあって、ひとつはユーザーからの下取り。もうひとつはオークションの激安出品で、数万円のクルマはゴロゴロしており、落札手数料など入れてもヒトケタ万円に収まる。結局、そんな状況なので、ユーザーから下取りしたクルマをオークションに流すのは意味がなく、まだ乗れる状態ならそのまま安く販売してしまったほうがいいので、激安中古車は珍しくない状態になる。

密を避けられる移動手段として需要は高まりつつある

 とはいえ、老婆心ながら心配になるのが儲けだ。別の知り合いの店では「クルマの出し入れが多いなど、近所の人には迷惑かけているから、近くに住んでいる人には原価に近い価格で売ってあげている」というところがあるが、これでも車検の手数料(激安車はほとんどが車検切れ)などで赤字にはならないと言う。

 普通に販売しているところでも、「数万円の利益乗せるられるし、諸費用などでも少し儲かる。最低限のメンテはするけど、問題ないところはそのままで済ませるから、納車整備は手間も費用もかからない。そもそもなんでもいいから足グルマが欲しいという人はけっこういるので、ウチみたいな郊外の土地の安いところで、家族経営なら十分食べていけるよ」ということになる。

 聞けば月に激安中古車は10台以上は売れるらしいので、1台3万円としても30万円。もちろんそのほかに、高いクルマもあるし、オイル交換などの依頼もあるので、それをプラスすれば食べてはいけるだろう。

 そんな地道な中古車店の店主が口を揃えるのが、「メーカーはクルマをドンドン出しすぎ。経営のためには仕方がないけど、壊れないんだから1台を長く大切に乗ればいいのに」ということ。冒頭で紹介したように丈夫だし、デザイン的にも昔ほどすぐに古くさくはならないので廃車にしづらい。だから、ドンドンと中古車市場に流れて、溢れ返っている状態。つまり飽和状態になっているという意見が現場には多い。

 ただ、ここ最近は新型コロナで密を避けられる移動手段として、クルマに注目が集まっていることもあり、相場全体が上がってきている。今後も、洪水で流された分の需要が高まると予想されているので、ヒトケタ中古車は減るかもしれない。