毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか。読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」で、7月にアクセス数の多かったベスト20冊を、同サイトの編集部が紹介する――。
写真=iStock.com/Eskemar
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第1位:『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』(井上皓史著、小学館)
第2位:『他人のことが気にならなくなる「いい人」のやめ方』(名取芳彦著、リベラル社)
第3位:『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』(高松康平著、朝日新聞出版)
第4位:『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』(山口謠司著、ワニブックス)
第5位:『フューチャーワーク』(高砂哲男著、河出書房新社)
第6位:『ディズニーCEOが実践する10の原則』(ロバート・アイガー著、関美和訳、早川書房)
第7位:『ズボラPDCA』(北原孝彦著、すばる舎)
第8位:『2020年6月30日にまたここで会おう』(瀧本哲史著、星海社)
第9位:『営業はいらない』(三戸政和著、SBクリエイティブ)
第10位:『他人とうまくやっていく』(アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ著、藤田美菜子訳、サンマーク出版)
第11位:『あえて、数字からおりる働き方』(尾原和啓著、SBクリエイティブ)
第12位:『豊田章男』(片山修著、東洋経済新報社)
第13位:『一億三千万人のための『論語』教室』(高橋源一郎著、河出書房新社)
第14位:『ブランディング・ファースト』(宮村岳志著、クロスメディア・パブリッシング)
第15位:『感性思考』(佐々木康裕著、SBクリエイティブ)
第16位:『世界観をつくる』(山口周/水野学著、朝日新聞出版)
第17位:『人は話し方が9割』(永松茂久著、すばる舎)
第18位:『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(堀新一郎/琴坂将広 /井上大智著、NewsPicksパブリッシング)
第19位:『パン屋ではおにぎりを売れ』(柿内尚文著、かんき出版)
第20位:『両利きの組織をつくる』(加藤雅則/チャールズ・A・オライリー/ウリケ・シェーデ著、英治出版)

※本の要約サイト「flier」の有料会員を対象にした、2020年7月の閲覧数ランキング

■最大のメリットは「人生をコントロールできるようになる」

井上皓史『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』(小学館)

今月の第1位は『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』でした。「早起きが大事」と思いつつ、実際はなかなかできていない人も多いのではないでしょうか。

朝活コミュニティ「朝渋」の代表を務める著者・井上皓史氏は、「早起きには人生を変える力がある」と断言します。本書には「早起きで人生を変えた人びと」のライフストーリーがいくつも紹介されており、読むだけでもポジティブな気持ちになってきて、早起きがしたくなります。

早起きのメリットは、仕事の効率が上がる、平日に自由な時間ができる、お金を節約できるなど、いくつも挙げられます。ですが一番重要なのは、自分の人生をコントロールできるようになるということ。「早起きは三文の徳」といいますが、早起きがもたらす価値は三文(=今でいうとだいたい100円)どころではありません。「周囲に振り回されてしまっている」「忙しくて余裕がない」と感じている人にこそ、お手にとっていただければと思います。

■「どうでもいい人」から「気持ちのいい人」になる方法

名取芳彦『他人のことが気にならなくなる「いい人」のやめ方』(リベラル社)

第2位は、『他人のことが気にならなくなる「いい人」のやめ方』でした。密蔵院の住職である名取芳彦氏は、仏教的な視点から「みんなに好かれなくてもいい」「誘いを断ってもいい」「縁を切ってもいい」と語ります。もちろん、いい人をやめるといっても、わがままになればいいというわけではありません。ですが、嫌なことにノーと言えない「いい人」のままでは、やがて心が病んでしまいます。

「いい人」といっても、誰にとっても当たり障りのない「どうでもいい人」になるのではなく、イキイキと日々を過ごせる「気持ちのいい人」になること。本書にはそのための実践しやすいヒントがいくつも書かれています。自分のこれからの生き方についてゆっくり考えたいとき、気軽な気持ちでお読みください。本書に書かれていることを実践していけば、きっと生活も前向きになっていくはず。

■「問題解決」が楽しくなる教科書

高松康平『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』(朝日新聞出版)

第3位は『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』です。コロナ禍という未曾有の事態を迎え、ますます先の見通しが立たなくなり、それに比例するように問題解決能力の重要性が増してきています。さまざまな事象が複雑に絡み、どうすればそれを解きほぐせるのか、わからないときもあるでしょう。

そんなとき、ビジネスリーダーが注力すべきは、「仮説検証型」の問題解決です。問題解決にあたって情報が重要なのは言うまでもありません。しかし多くの人は、明確な目的もなく情報収集に走ってしまい、解決への道筋を見つけられず迷子になってしまいます。まず筋の良い仮説を立ててから、その仮説検証に必要な情報を集めるべきです。

本書では、問題解決で迷子にならずに進むべき道を確認するための「地図」(問題解決マップ)と、筋の良い仮説を立てるための「武器」を紹介しています。問題解決のストーリーの描き方から、プレゼンのシミュレーションまで、幅広く網羅されていて、まさに至れり尽くせり。読めば問題解決が、きっと楽しく感じられるはずです。

■「ラジオの雑用係」がディズニーCEOになれた理由

ロバート・アイガー『ディズニーCEOが実践する10の原則』(早川書房)

続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。

第6位『ディズニーCEOが実践する10の原則』は、ウォルト・ディズニー・カンパニーの現会長であり前CEOである、ロバート・アイガー氏の半生と哲学を描いたものです。

アイガー氏のキャリアの始まりは、なんとABCラジオの雑用係だったといいます。ですが、そこからさまざまな人間と出会うなかで多くのことを学び、成功を収めてきました。もちろん、成功に至るまでの道のりは大変険しいものでした。アイガー氏がトップに立つまでのディズニーは、今よりも規模が小さいうえ、数年に渡って内紛が続いているような有様だったのですから。

そうした困難に、アイガー氏はどう立ち向かってきたのか。本書では、アイガー氏が実践する「10の原則」が、惜しげもなく公開されています。その根底にあるのは「相手への敬意」。社内外問わず、相手に対して常に敬意を払い続けてきたアイガー氏だからこそ、ウォルト・ディズニー・カンパニーをここまで大きく成長させることができたのでしょう。企業のトップやチームを率いるリーダーはもちろんのこと、組織で働くすべてのビジネスパーソンに読んでほしい一冊です。

■大人気講義の熱量が詰まった1冊

瀧本哲史『2020年6月30日にまたここで会おう』(星海社)

第8位『2020年6月30日にまたここで会おう』も、大きく注目を集めている一冊です。2019年、エンジェル投資家や経営コンサルタント、教育者として活躍してきた瀧本哲史氏が、病のためご逝去されました。瀧本氏の京都大学での「起業論」の講義は、当時立ち見が出るほどの人気だったといいます。

その熱狂を全国の若者にも届けるため、全国の若者を対象に、東京大学で特別講義が開かれました。本書はそのときの熱量を凝縮し、一冊にまとめたものです。瀧本氏の切れ味鋭い言葉の数々や、徹底されたロジック、そして行間からは若者たちへの熱い期待が感じられ、まるでその場に参加しているような感覚になってきます。

瀧本氏がこの講義をしたのは、2012年6月30日のことでした。「8年後にまたここで会いましょう」と言った瀧本氏は、残念ながらもうこの世におりません。ですがその遺志は、ウィズコロナ、アフターコロナの時代において、私たちを力強く後押ししてくれます。

■ベストセラー編集者の「しっかり考える」技術

柿内尚文『パン屋ではおにぎりを売れ』(かんき出版)

最後にご紹介したいのが、第19位『パン屋ではおにぎりを売れ』です。著者の柿内尚文氏は、これまで50冊以上の本を10万部以上のベストセラーに育てあげてきた敏腕編集者。そんな柿内氏ですが、あくまで自分のことは「平凡」だと評価しているようです。ではなぜベストセラーを連発できるのか? その秘密は、「しっかり考える」方法が身についていることにありました。

本書では、「しっかり考える」ための技術が、惜しげもなく公開されています。タイトルにある「パン屋ではおにぎりを売れ」というのもその一つ。パン屋のイメージからあえて外れるものを売り出すことで、新たな顧客を取り込めるのではないかという狙いです。

こうした考えを広げる・深めるための思考法が、本書では豊富な具体例とともに、たくさん紹介されています。企画に悩んでいるとき、本書を読めば、いままで思いつかなかったアイデアが降りてくるかもしれません。

先月のラインナップとはガラリと変わった今月のランキング。そのなかで、2020年上半期で最も要約が読まれた『人は話し方が9割』が、ふたたびベスト20に顔を出してきました(第17位)。年間ランキングでも上位に入ることが期待されます。来月のランキングもお楽しみに。

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(flier編集部)