【図1:台風5号の予想進路図】(出典:Weather Map)

なかなか梅雨が明けず、ずっと雨に見舞われていた今年7月は、もう1つの珍しい現象が見られました。それは台風が1つも発生しなかったことです。7月に台風が発生しなかったのは、台風の記録が残る1951年以降、初めてのことです。

7月発生ゼロ 8月発生ラッシュ

今年は1月から7月までに計2個の台風が発生しました。5月に1個、6月に1個です。1月から7月まで発生数の平年値は7.7個なので、今年はかなり少ないです。台風の記録が残る1951年以降では、2番目に少ない記録となっています。最も少ないのは、1998年の1個でした。

ただ、8月1日には2つの台風が発生し、台風4号は沖縄県の石垣島や宮古島などの先島諸島に接近した後、北朝鮮や韓国に大雨をもたらしました。

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【図2:台風4号の経路図】(出典:Weather Map)

さらに、記事冒頭の図1でも示したように8月9日には沖縄の南で台風5号が発生しました。

台風5号は発生してからわずか半日で沖縄本島に最も接近し、10日に九州北部に接近しました。

そして、10日には台風6号が発生し、8月上旬だけで4個の台風が発生したのです。

7月は台風が1つも発生しなかった一方で、梅雨前線が日本付近に長く居座り「令和2年7月豪雨」となりました。

台風が発生しなかったことと、梅雨前線が停滞したことには関係があります。

それは、「負のPJ(太平洋-日本)パターン」です。

台風が発生することが多い、南シナ海からフィリピン付近、マリアナ諸島にかけての海域は、7月の積雲対流活動が不活発でした。要は積乱雲が発生しにくい状況だったために、台風の発生も抑えられたのです。

台風が発生すると、太平洋高気圧が強められます。逆に、今年のように台風が発生しないと太平洋高気圧が強まらない、この相関関係を「負のPJパターン」というのです。

太平洋高気圧が強まって日本付近に張り出すと、梅雨前線が北上して梅雨明けします。つまり、台風が発生しなかったことが、今年の長梅雨の1つの理由だったのです。

しかし、8月に入ってからは状況が一転しています。台風が相次いで発生したことで、太平洋高気圧の張り出しが強まり、日本は猛暑になっています。東京は8月7日に今年初めて最高気温35℃以上の猛暑日になりました。

今年の台風の見通し ゝぞ歡の3か月予報

気象庁が発表した8月から10月の「予想される海洋と大気の特徴」です。


【図3:予想される海洋と大気の特徴】出典:気象庁HP

図3左下のインドからフィリピン付近に着目すると、「積乱雲が発生しやすい」と予想されていて、今後も台風が次々と発生しそうです。

また、図中央右の太平洋高気圧(青円)は、「日本付近へ張り出しやすい」と予想されています。台風は、太平洋高気圧周辺の風に流されて進むので、台風が日本に接近・上陸しやすくなるおそれがあるでしょう。

台風の年間発生数の平年値は25.6個です。

これまでに1月から7月の台風が少なかった年を振り返ってみましょう。


1月から7月の発生数が最も少ない1個だった1998年は、年間の発生数が16個で平年より9.6個少なかったです。

今年に次いで少ない3個だった年は3度あります。2010年は14個で、これが台風の記録が残る1951年以降では最も少ないです。1975年と1954年は21個でした。

7月までの台風発生が少ない年は年間発生数も少ない

今年を除く上位7年の年間発生数の平均は20.6個で、平年値25.6個より5個少ないです。7月までの台風発生数が少ない年は、平年よりも年間発生数が少ない傾向にあるといえそうです。


それでは、日本への上陸数はどうでしょうか。

年間上陸数の平年値は2.7個です。7月までの発生数が少なかった年の平均は3.1個で、意外にも平年より多いです。

2016年の上陸数は統計史上2番目に多い6個、1954年は3番目に多い5個でした。

台風の発生数が平年より少なく、上陸数が平年より多いということは、発生した台風のうち日本に上陸する割合が高い、すなわち上陸率が高いということがいえます。


【図4:8月8日の海面水温平年差】出典:気象庁HP

また、海面水温は太平洋側を中心に平年より高くなっています。東日本と西日本付近の太平洋は平年より2℃前後高いです。特に、台風の通り道になりやすい東海沖、四国、沖縄の東、父島近海では、平年よりかなり高い海域が拡大しています。


【図5:8月8日の海面水温分布図】出典:気象庁HP

7月と打って変わって台風が発生・発達しやすい状況に

台風は海面水温が約27℃以上の海上で発生・発達しやすいという特徴があります。27℃前後(赤色)のエリアが東日本や西日本の海域に広がり、東日本と西日本付近の太平洋と沖縄の海域は30℃前後(ピンク色)になっています。

実際、台風4号は沖縄近海を北上中に発達しました。1日で中心気圧が約20hPaも低下し、強い台風の特徴である「眼」も出来ました。

7月とは打って変わって、台風が発生・発達しやすい状況なので、今後は警戒が必要でしょう。