今回のテーマは「今だからこそ、デカイ音で聞きたいアニメソング10選」! 出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2020夏」

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全国1千万人のアニメソングファンの皆様こんにちは。

流浪のベーシスト、時たまDJ転身する出口博之です。季節の変わり目、新クールのアニメ作品が出揃う頃にやってくる主観がすぎるコラムこと「いいから黙ってアニソン聴け!」がやってまいりました。今回は2020年夏版をお送りします。

いまだ先行きが不安な時勢が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

前回の春クールでは新型コロナウイルスにより制作現場が影響を受け、一部の作品が放送延期になるなどこれまでには考えられない事態が発生しました。今期夏クールもその影響は続き、放送されるアニメ作品はおよそ30強。昨年の半分という少なさです。クールごとの放送数は多いのがいいのか、少ないのがいいのか。その辺りはケースバイケースですので一概にどちらかとは言えませんが、こういった事情で放送されるアニメ作品が少なくなってしまうのは心苦しく感じます。

作りたいのに作れない。やりたいのにできない。アニメ業界に限らず、今、どのフィールドでも直面している問題です。なによりもまず、一刻も早い事態の終息を願うばかりであります。

 

そんな厳しい状況の中でも、変わらず新しいアニメが放送されています。制作スタッフの頑張り、労力はいかばかりか。

たくさんの方の思いを感じながら、今期もしっかり10曲選出したいと思います。

 

それでは、張り切っていきましょう。今期選んだ10曲はこちらです!

 

うまよん

ぴょいっと♪はれるや!/スペシャルウィーク(CV.和氣あず未)セイウンスカイ(CV.鬼頭明里)キングヘイロー(CV.佐伯伊織)エルコンドルパサー(CV.高橋未奈美)グラスワンダー(CV.前田玲奈)

 

・炎炎ノ消防隊 弐ノ章

【ED】ID/サイダーガール

 

・彼女、お借りします

【OP】センチメートル/the peggies

 

・GREAT PRETENDER

【ED】THE GREAT PRETENDER/フレディー・マーキュリー

 

・ジビエート

【ED】ENDLESS/SUGIZOfeat.大黒摩季

 

・デカダンス

【ED】記憶の箱舟/伊東歌詞太郎

 

・日本沈没2020

【OP】a life/大貫妙子&坂本龍一

 

・忍者コレクション

【ED】忍び足でウンザウンザを踊る/バックドロップシンデレラ

 

・ノー・ガンズ・ライフ(第2期)

【ED】new world/THIS IS JAPAN

 

・富豪刑事 Balance:UNLIMITED

【ED】Welcome My Friend/OKAMOTO'S

 

以上、10曲を選出しました!

今回は私の現在の気分がはっきり出たかもしれません。

テーマとしても「バンドマンが選ぶ最新アニメソング10選!」みたいなキャプションが付けられそうなわかりやすさ。

今年に入ってからライブやイベントが中止を余儀なくされ、そのフラストレーションからか普段聞く音楽も「生の音」を好んで聞くようになりました。生の音というのは、空気感のある音、というか。なんとも表現しにくいのですが、「この曲をデカイ音で聞いたら最高だな!」と思う音、と捉えていただければ。

 

ライブ、もしくはそれに準ずるイベントに行ってデカイ音で音楽を聞きたい、デカイ音を浴びながら演奏したい。そんな思いが表出した選曲になったと思います。

 

 

まず最初は「彼女、お借りします」のOP「センチメートル」

the peggiesの楽曲は起用されると必ず選出しているのですが、今回の楽曲はものすごくいい。今までの楽曲ももちろんよかったけれども、「センチメートル」は今までのthe peggiesの枠を2つくらい突き破った感があります(あくまで個人的な感想)。

地に足のついたリズム隊にドライヴするギターが絡むアンサンブル。そしてロックから離れた地平のガーリーなボーカルが合わさった、いわゆる3ピースバンドの教科書のようなサウンド構築ですが、メンバーひとりひとりの存在感が今までと比べ物にならないほど増したように感じます。それが楽曲の躍動感につながっている。

特にボーカルの北澤ゆうほさんは、今っぽい女の子の強かさ、みたいなものが備わったように感じ、ボーカルの表情が豊かになった印象があります。いい、素晴らしくいいです。

曲調を展開させるBメロであえて手数を増やしビートを変えるアレンジも気持ちいい。ライブではこの辺りに注目して聴きたいところです。

  

続いては、「炎炎ノ消防隊 弐ノ章」OP「ID」。

サイダーガール、大好きです。ワタクシ、ただのファンです!

もちろん、好きなバンドだから選んだわけではありません(当たり前だ)。

強靭なダンスミュージックのマナーの上に乗るメロディが抜群にいい。サイダーガールの楽曲の肝はベースにあると思っていて、今楽曲の歯切れがよくうねるようなグルーヴはベースが生み出している。サイダーガールっぽさでいえば弾けるようなキラキラした成分は若干抑え気味に感じますが、アニメのエンディング曲とするならキラキラ成分を抑えた今回の楽曲の方が、親和性が高いと思います。

アレンジの重心がグッと下がって楽曲が全体的に落ち着いたことによって、結果的にメロディが潜在的に持っているエバーグリーンな世界観が際立っています。

  

「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」ED「Welcome My Friend」は、当初、春アニメとしてスタートしましたが、一度放送は中断。2020年夏クールより、改めて1話から再スタートしたとうことで、今回ピックアップします。

図抜けた演奏スキルから楽曲の幅が異常に広いOKAMOTO'S。今回の楽曲はヒップホップのマナーに則りつつも、サンプリングのノリを人力で表現しています。

昨今の日本語ラップの浸透によってヒップホップが身近になり、その影響はアニメ(「Bラッパーズストリート」など)にも現れていますが、ヒップホップをエンタメ方向に広げ裾野を広げるのではなく、より深く、よりストイックにヒップホップという音楽、サンプリングという手法に向き合ってる印象を受けます。サウンド、間のとり方、言葉の選び方など、まとめ方が「2020年のポップミュージック」に着地しているので、ヒップホップとかわからないし……とジャンルに精通していない人でも自然に聞くことができる間口の広いアレンジは素晴らしい。

そして、全ベーシストは必聴&コピー必須です。ベースという楽器の本質を極限まで追求するハマ・オカモト氏のプレイはベースの楽しさであふれています。

最近のベース界隈ではスラップやタッピング、スウィープなどを駆使した超絶技巧のプレイが流行していますが、超絶技巧は超絶技巧でしかなく、リズム楽器の本懐はグルーヴにあり。

超絶技巧はできないよりできたほうがいいけれども、シンプルなフレーズをワングルーヴでつないで人を延々と踊らせる、それがベースという楽器の面白さ、醍醐味だと私は思います。

 

続いては「デカダンス」ED「記憶の箱舟」。

とにかく声。伊東歌詞太郎氏の声の存在感が圧倒的で、耳に残るというより、メロディが強烈に焼き付くような入り方をするのが印象的です。どことなく90年代J-POPの匂いがするコード進行やメロディに、アラフォー世代(もしくはその付近の世代)は懐かしく感じるところがある思います。

逆に10代、20代の方にとっては新鮮な耳ざわりになっているのかもしれません。ヘッドホン、イヤホンで聞くと声の距離感は近いのに目の前に張り付くような鬱陶しさがなく、近いのに空気の振動が感じられる不思議な聞き心地があるので、これが大きなスピーカーで鳴らすとどう聞こえるのか。DJの現場で聞いてみたいところでもあります。

今まで通りDJイベントが開催される日が待ち遠しい次第であります。

  

「GREAT PRETENDER」のED「GREAT PRETENDER」は1987年にリリースされた楽曲。

1987年にフレディ・マーキュリーがリリースした楽曲なので今期アニメソングとするか悩みましたが、「ジョジョの奇妙な冒険」でYESが起用されたことをはじめ、昨今はアニメソングに洋楽の有名な楽曲を起用するのが珍しいことではないのでピックアップ。

1987年はQUEENの後期に差し掛かる時期で、同時に各メンバーのソロ活動が活発化した時期でもあります。その時期にリリースされたこの曲は、MVの内容もこれまでのMVをオマージュしたものになっていたりして、フレディがノリにノッていることがうかがえます。楽曲自体は1955年にリリースされたいわゆるスタンダードナンバー(歌ったのは、アメリカのコーラスグループ「プラターズ」)ですが、これを戯曲的に歌いあげてエンターテイメントに昇華する表現力は圧巻の一言。フレディがいかに不世出のボーカリストだったのかがわかります。

アニメ作品もショウビズライクなエンターテイメント感があるので、その辺の組み合わせの妙も素晴らしくハマっています。

いい曲。とにかくいい曲。こういったスタンダードは、もっと歌い継がれるべきだと思います。

 

続いて「うまよん」の「ぴょいっと♪はれるや!」。

ショートアニメなので放送で聞けるのは30秒ほどですが、賑やかなアンサンブルに疾走感が加わり、最後のリズムを外した着地の仕方はいい意味で予想を裏切られるのでとても耳に残ります。昨今のスタンダードとも言えるアレンジながらもバンジョーの入れ方が絶妙で、これによって「カントリーが他のジャンルを飲み込んでしまった」稀有な曲、という他にはないアイデンティティを獲得しているのが面白い。

最近はショートアニメが多くなっているため、楽曲が30秒でも特に違和感を覚えることも少なくなったように思います。むしろジングル的な役割にもなっているので、スパッと終わる歯切れのよいテンポ感が今の時代にマッチしているのかもしれません。

90秒で人を引きつける名曲を作る。アニメソングに限らず、さまざまな場面で「90秒」が楽曲制作の一つの基準になっていましたが、これからは30秒を極限まで極める。もしかしたらそんな時代が到来するのかもしれません。

 

ショートアニメからもう一曲、「忍者コレクション」のED「忍び足でウンザウンザを踊る」。

私事で大変恐縮なのですが、楽曲を担当された「バックドロップシンデレラ」とは、私が上京した直後に小さなライブハウスで対バンしており、その後の活躍と昨今の大型フェスでの快進撃を続ける姿に胸のすく思いであります。

衝動的なエネルギーの塊のような楽曲を矢継ぎ早に繰り出す、振り切ったテンションのライブが持ち味のバンドですが、その辺をグッと抑制して「底の方で静かに渦巻く狂気」を表現しています。すごい。こんな引き出しがあったのか、と思うのは私だけじゃないはず。

こちらもショートアニメなので本編で聞ける楽曲は30秒ほどとなりますが、それでも十分すぎるほどに様子のおかしいさまが伝わります。耳ざわりはいいのに、まとわりつく得体のしれない「何か」がいる。それが恐怖ではなく、楽しい何かだと期待させるのがバックドロップシンデレラの求心力。フロアを踊らせる、本能に直接作用する高機能なダンスミュージックだと思います。

 

続いて「日本沈没2020」のOP「a life」。

昨今流行している「シティポップ」、その源流といえるバンド「シュガー・ベイブ」に在籍していた大貫妙子と、シュガー・ベイブ解散後から今日まで長くタッグを組んで多くの楽曲を送り出してきた坂本龍一。アントニオ猪木を「さん」付けできないのと同じく、お二人とも偉大すぎるので敬称略。この二人から生まれる音楽は、今のJ-POPの最先端かもしれません。孤高すぎる。

アニメ作品(と原作)の根底には「日本人とは?」というテーマがあり、生き方や日本のあり方を考える場面は期せずして今の時代にシンクロするところが多くあります。

「日本人とは?」「日本はどうあるべきか?」そういったことが一般の生活レベルに視点を落とし、ミクロな規模感の中で大きなテーマが描かれる。

「a life」の歌詞は、驚くほど言葉が少ないです。しかし、少ない言葉から今の生活=a lifeが浮き彫りになる。何を思って今を生きるか。自分のこと、家族のこと、大切な人のこと、国のこと。未来は今の生活の先にある。ということを考えさせられる曲です。

 

タッグつながりで「ジビエート」のED「ENDLESS」。これもすごいタッグの楽曲です。

大物クリエイターの集結が話題の「ジビエート」ですが、音楽でもビッグネームが集結。SUGIZOと大黒摩季のタッグということで、我々アラフォー世代は大興奮ではないでしょうか。まさかこんな日が来るとは。

ちなみに、ドラムはLUNA SEAのドラム・真矢。90年代に青春を過ごしたおじさんおばさんの「おおおーー!すげー!!」という声が聞こえてくるようです。

楽曲については、もういい意味でそのまんまです。好きなものが合わさったら2倍の好きなものになったような。カレーにトンカツ合わせたら最強じゃん!という安易な表現しか思い浮かびませんが、そういう感覚に近い強烈なスパークと化学反応が起こっている。

あ、この曲でも敬称略で失礼します。

大黒摩季の声はパワフルで押し出しが強いので、特にリズムが強調された楽曲との相性が抜群。ビートの支配力が強ければ強いほど相乗効果でボーカルが躍動しているのが大黒摩季のすごさ。ジャンルを選ばないボーカリゼーションも見逃せない。その魅力が余すところなく発揮されているこの曲は、組み合わせの妙もありますがSUGIZO(敬称略)のプロデュース力によるところが大きいと思われます。

サビで一気に彩度が高くなる広がり方をするのに対し、テンションを追従させずあえて抑制気味に歌うボーカルのディレクションは見事。その後の転調からの抑制の解放まで一つの物語になっているのがわかります。

突出した個性がぶつかり合わずに高次元で融合した、コラボのお手本のような楽曲です。

 

最後に、今期の優勝はこれしかないだろ!の楽曲を発表します!

それが「ノー・ガンズ・ライフ」ED「new world」です。

ちょっとビックリするくらいかっこいい。すごいバンドが出てきた。

グランジやオルタナの質感もあり、80年代のジャパコアの匂いもあり、昭和の強烈なアングラ感もあり、ポストパンクもあり、他にもいろいろな要素がまぜこぜになっていながら全然古臭くなくて、むしろめちゃくちゃ新しい音楽として確立されているのに驚きます。どこまで狙っていて、どこまで本気なのか。偽悪的なのか天然なのか。どんなバンドか知りたいので、今一番ライブが見たいバンドです。

とにかくかっこいい、の一言。衝動的なエネルギーが渦巻くバンドの、衝動的なサウンドは必聴です。

 

というわけで、いかがでしたでしょうか?

冒頭にも書きましたが今回はデカイ音で聞きたい!をテーマに選出しています。

家にいる時間が増えて気持ちがふさぎがちになること多いかと思われますので、そんなときは今回ピックアップした楽曲を可能な限り大きな音で聴いて、疑似的にライブ体験をしてストレスを発散してもらえたらいいなと思った次第であります。

次回は秋の季節に登場を予定しております。それではまた!


(文/出口博之)


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