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 私たちは、2025年問題に直面している。これはベビーブームのときに生まれた世代が75歳に達して、急激に多くの人が医療や介護を必要とするようになる年が2025年なので、「2025年問題」と呼ばれているのだ。そうすると、社会保障費などの財源や介護従事者がさらに必要となるが、私たち現役世代はそれを支えるだけの十分な余力があるのだろうか。

◆想像以上に深刻な介護問題

 私はこの問題について、介護従事者の労働環境にフォーカスを置きたい。なぜなら、私の母が介護従事者として10年以上働いていたということと、介護従事者の労働環境は、既に私たちの想像以上に改善の必要がある状態であり、多くの人が認知しておく必要があると考えたからだ。

 我々は2025年までに十分な介護従事者の人材を確保、育成できるのだろうか。そして、2025年以降、介護従事者が安心して継続して働ける労働環境になっているのだろうか。

 厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や「業務上疾病」と認定し、労災保険給付を決定し、その請求件数や給付件数を業種別などで公開している。

 平成30年に発表された精神障害における労災請求件数によると、社会保険・社会福祉・介護事業がトップだった。飲食店や情報サービス、医療業よりも高い数字となっている。

 このような点においても、今後、介護を受ける必要がある人が増えていくなかで、まだ十分に社会問題としてフォーカスがあたっていないのが現状だ。

◆ストレスを押し殺すための「笑顔」

 また、離職率を見ると産業計よりも介護従事者のほうが若干高く、離職した理由を見てみると、「職場の人間関係に問題があったため」というケースが最も多い。職場の人間環境という問題は、一般的に多そうなイメージがあるが、その割合は介護以外の仕事を辞めた人のそれよりも多い。

 人間関係で発生するトラブルにおいては様々な原因が考えられるが、そのなかでも介護の仕事が「感情労働」であることが、問題の要因のひとつではないかと考えられる。
 
 感情労働に関する詳しい内容は過去に書いた記事を参考にしていただきたいが、簡単に説明すると、相手の感情を誘導するために、自分の感情を管理、抑圧することを伴う労働のことを指す。

 例えば、介護の仕事で入居者に暴力を振るわれてイラッとしても、介護従事者は入居者に落ち着いてもらうために、怒りの感情を押し殺して笑顔を作るといった本来の感情を抑制する感情のコントロールを行う。

◆「理不尽」の仕組みを理解するべき

 しかし、このような感情の抑制作業は、心の風船のなかに感情を溜めていくことになる。苦しくてどこかで溜まった感情を解消しようとしたり、溜め続けると心の風船が張り裂けてうつ病などを発症してしまう。人間は自分に余裕がないと、周りに対しても攻撃的になってしまう。それは、自己防衛のための発散である。

 このような状況下では、些細なことにも心が敏感に反応してしまうので、怒りの感情を引き起こしている根本的原因については盲目的になってしまう。そして、それが目の前で起こる同僚の些細な仕事のやり方の違いが原因なのか、感情労働によって心に溜まったストレスが原因なのか正しく判断できない。

 また、その矛先が職場の同僚に向かってしまい、職場の人間関係悪化へと繋がっている可能性もある。決して、入居者に対する感情労働が全ての原因であると断言しているわけではなく、もちろん介護従事者間だけによって発生するストレスもあるだろう。 しかし、介護従事者の持つ優しさや、誠実さ、プロフェッショナルさから、不満や不安を周りに打ち明けられないままでいる環境も多いはずだ。