米中貿易摩擦、ついに「覇権争い」へ進展…世界経済の行方は?

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これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第31回は、米国と中国の苛烈な覇権争いで世界経済にどのような影響が及ぶのかを考察します。

貿易戦争から「覇権争い」へと発展した、米中対立

喧嘩には2種類あります。ひとつはガキ大将が弱虫からオモチャを脅しとろうという場合です。もうひとつは、勢力拡大中の副社長派閥を社長派閥が叩き潰そうとする場合です。

最初の喧嘩では、「オモチャをよこさないと殴るぞ」と脅すわけですが、本当に殴ると自分も痛いので、内心では、殴らないですむことを期待しているわけです。

これは、トランプ大統領の得意技です。日本に対しては「米国製の武器を買わないと、日本からの自動車輸入に関税を課すぞ」と脅して武器を売りつけたり、中国に対して「米国製品を買わないと、中国製品に関税を課すぞ」と脅して米国製品を買わせたりしましたね。

ふたつ目の喧嘩は、本気の殴り合いです。やらなければやられるわけですから、手が痛いなどといっていられません。最近の米中関係は、こちらになりつつあります。「中国が米国の覇権を脅かそうとしている。しかも不正な手段を多用している。絶対に許せない、叩き潰そう!」というわけですね。

ポンペオ米国務長官が中国共産党を強烈に批判する演説を行ったり、在ヒューストン中国総領事館を閉鎖させたりしたのは、「本気で戦う」という意思表示でしょう。

じつは、米国議会のほうが先に「ふたつ目の喧嘩モード」に入っていました。中国が嫌がりそうな法案を、共和党も民主党も超党派のほぼ満場一致で次々と可決していたのです。

つまり重要なのは、大統領選挙でトランプ大統領が負けたとしても、米国と中国の覇権争いは終わらない、ということです。

米中の覇権争いは、トランプ大統領の勝敗にかかわらず今後も続く。

カネの話から「覇権と体制の話」へと変質し…

第一段階は、トランプ大統領が主導するカネの話(関税の話)でしたから、交渉の余地も妥協の余地もありました。ただ、米国が圧倒的に優位だったので、中国が一方的に妥協を強いられていました。

理由は単純で、米国は中国から大量に輸入しているため、関税を課すことで中国経済に深刻な打撃を与えることができますが、中国は米国からの輸入量はそれほどでもないため、こちらに関税を課しても、米国経済の規模の大きさも考え併せると、ほとんど有効な打撃を与えられないからです。

そこで、第一段階としての貿易戦争は米国の圧勝に終わりました。米国はほとんど譲ることなく、中国から大幅な譲歩を引き出したのです。

しかし、第二段階は覇権争いですから、お互いに譲れないでしょう。しかも、米国は中国の政治体制を問題にしていますから、中国にとっては「絶対に譲れないところ」が争点になりつつあるわけです。

中国と親しかった国々も「金の切れ目が縁の切れ目」に

第二段階の覇権争いでは、米中の分断が進むでしょう。世界中の国と企業が「米国か中国か、どちらかを選べ」と双方から迫られた結果、米国と中国の経済が分断され、米国経済圏と中国経済圏がそれぞれ独立して存在するようになるかもしれません。米ソ冷戦時代の再来ですね。

そうなると、国も企業もどちらかを選ぶことになり、多くの国や企業に選ばれたほうが覇権争いで有利になるはずです。

これまでは、中国は先進国企業の直接投資によって繁栄してきたわけですが、それが逆回転をはじめ、先進国企業が工場を閉じて自国等へ戻って行ってしまうでしょう。それは中国経済にとって大きな打撃です。

そうなると、中国の経済力に魅せられて仲よくしていた国々も、金の切れ目が縁の切れ目ということになるかもしれません。香港等をめぐる最近の国際政治の動きも、世界各国の中国に対する警戒心を強めることでしょう。

そうしたなか、日本政府は同盟国である米国に与するしか選択肢がなさそうですが、企業はどうするのでしょうか。少なくとも、両方にいい顔をしながら利益を追求するのは容易でなさそうです。そのあたりの認識をしっかり持っておかないと、困難な事態に陥りかねないので、十分な注意が必要でしょう。

問題は、分断の進むスピードですね。20年かけてゆっくり分断が進んでいくとすれば、大きな混乱は起きないでしょうが、短期間で一気に分断が進むと、世界中のサプライチェーンが一気に分断されかねず、大混乱となりかねません。

米中いずれも大混乱は望まないでしょうが、だれも望まないことが起こり得るのが喧嘩というものの恐ろしいところです。今後の展開から目が離せません。

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。

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塚崎 公義

経済評論家