文化戦争を経てリアルな市街戦へ

7月中旬以降、オレゴン州ポートランドは、さながら市街戦が繰り広げられる紛争地域のような姿を見せ続けている。2020年7月17日、いまだに続くBLM(BLACK LIVES MATTER)の抗議のラリーの現場に、迷彩服を来て武装した所属不明の部隊が介入し、催涙弾等を撃ってはラリーに集まった人びとを蹴散らし始めた。しばらく経ってその部隊はDHS(Department of Homeland Security:国土安全保障省)から派遣された部隊であることが明らかになった。理由は、連邦所有の施設が破壊行為にさらされているから、というもので、そのために911以後、テロリスト対策用に新設されたDHSが駆り出された。つまり、ポートランドのBLMの抗議活動がテロリズム認定されたことを示唆している。

「トランプ陣営の最後の切り札はまさかの市街戦?:ザ・大統領戦2020(21)池田純一連載」の写真・リンク付きの記事はこちら

続く7月20日、トランプ大統領は、同種の制圧部隊を、ポートランドだけでなく、同じくBLMの抗議活動が続く都市に派遣するつもりであることを公表した。具体的には、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイト、ボルティモア、オークランドなどの名が挙げられた。いずれも、民主党所属の市長が治める都市であり、すでにDHS部隊の介入を受けたポートランド市長のテッド・ウィーラーならびにオレゴン州知事のケイト・ブラウンは、明らかに民主党治下の都市を狙い撃ちした政治スペクタクルとしての不当な介入だと指弾し、部隊の即時撤収を求めた。

実のところ、ポートランドから連日届けられる映像は、ハリウッド映画の撮影現場か何かと思わせるようなスペタクルに仕上がっている。非武装の市民に対して迷彩色武装部隊が襲いかかるという構図であり、警棒による殴打など物理的な暴力も加えられる。そのような「トランプ部隊(Trump Troops)」の横暴に対して、ラリーを行う側は、「母の壁(Wall of Moms)」、「父の壁(Wall of Dads)」、「退役軍人の壁(Wall of Vets)」という具合に、自分たちが非武装の平和な抗議活動を行っていることを強調する人壁を作って対処し、この「政治スペクタクル」を観る者たちに、どちらに正義があるか、を問いかけてくる。

非暴力の抗議ラリーに対して武装した警察部隊が実力行使をする、という構図は、そのまま60年代の公民権運動の再演のようだ。だが、当時と異なるのは、警察部隊の出どころが、南部の地元政府(州や市や郡)ではなく連邦政府である点だ。公民権運動の歴史を紐解けばわかることだが、当時は、南部の人種差別的な白人の州知事や市長、警察署長が確かに存在し、彼らが「非暴力」を掲げた、黒人を中心としたラリー──その提唱者がマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師であり、その忠実な実践者がこの7月に亡くなったジョン・ルイス下院議員だった──を駆逐していた。

つまり、今のアメリカは、あたかも当時の南部の政治家が連邦政府を占拠したようにもみえる。南北戦争で南軍が勝利したアメリカが実現しているようなもの。まさに、作家のフィリップ・ロスが描いた『プロット・アゲンスト・アメリカ』が現実になったような世界といえる。

それにしても、DHS部隊の介入の理由が、連邦施設(=ビル)への破壊行為というのは、いかにも不動産王の大統領らしい発想ではないか。連邦のプロパティ(所有物)への毀損が理由なのだから。そして、それを「法と秩序(ロー&オーダー)」の下で実施するのだから。ホテルやモールの警備員が催涙弾やペイント弾を用いて、壁にグラフィティを描いている子どもたちを追い立てるのと変わらない。もちろん、それが格段にスケールアップされているわけだが。

しかも、その介入先が、ホワイトハウスのある東海岸のワシントンDCからすれば、はるか西方の、北米大陸の対岸である西海岸のポートランドなのだ。まさに反乱は〈辺境〉からやってくる。その辺境の小さな反乱にすら全力で制圧しようとするのは、文字通り『ハンガー・ゲーム』の世界だ。あるいは、その制圧にDHSの資源が利用されるのは、ドラマ『ホームランド』の第6シーズンで描かれた世界そのもの。国外の政府転覆に利用されていた超法規的な諜報/軍用資源がいざ国内に向けられたらどうなるのか?というような悪夢の世界。

そんなことを想像させられてしまうような事態が、大統領選の投票日を3ヶ月後に控えたアメリカでは生じている。それも見世物としての政治として。だが、それもこれもトランプからすれば、前回指摘したように、7月に入ってから続いている支持率の低迷があるからだ。フロリダやテキサス、アリゾナといった南部のレッド・ステイトを中心にコロナウイルスの感染拡大が進み、とうとうトランプも「マスクの着用」の必要性を認めざるを得なくなった。もはやマスクの着用の是非のような「文化戦争」では、11月の選挙戦につながるような有権者の対立を煽ることはできなくなった。そこで生じたのが、文化ではなく物理的な衝突である「ポートランドの市街戦」だったというわけだ。

再選の目が潰え、もはややりたい放題!?

実際、支持率の低迷という点でトランプにとって最悪なのは、「経済運営」の手腕についてもバイデンの後塵を拝するようになってきたことだ。こうなると、ビジネスマン出身のトランプとしては、挽回できる材料がない状態であり、まさに手負いのトラとして、なにをしでかすかわからない。7月10日に唐突に公表された盟友ロジャー・ストーンの刑の免除などまさにそれで、普通に解釈すればあからさまな大統領権力の濫用にしか見えない。

JOHNNY LOUIS/GETTY IMAGES

ロジャー・ストーンは、いわゆる「ロシア疑惑」──2016年大統領選の際、対立候補だったヒラリー・クリントン陣営に対するハッキング等による選挙キャンペーンへの干渉を、トランプ陣営がロシアに依頼したといわれる疑惑──においてWikiLeaksとの接触を偽証したことから有罪になったのだが、それをトランプ自らが免除した。これにはさすがにロシア疑惑調査の責任者だったモーラー独立調査官も即座に異を唱えている。

ただ、この刑免除の表明も、ただメディアの注目を集めたいがために行っているようにしか見えないところがある。7月になって、トランプ政権での国家安全保障担当大統領補佐官時代の職務内容に触れた本を出版したジョン・ボルトンは、再選のことを考えなくて済む2期目になったらトランプは、1期目以上にやりたい放題のことをすると発言しているが、どうも再選の可能性が下がってきたところで、そのやりたい放題を前倒しにしているようなのだ。もちろん、共和党内部からもミット・ロムニー上院議員らのように、大統領にあるまじき行為として非難の声を上げている者もいる。もっともそのロムニーですら、トランプの再選を確信しているというのだから話はやはり単純ではない。

公衆衛生対策を怠ったツケ

ところで、こうした現状が続くようなら、トランプは、非・政治家としてチャンスを掴み、非・政治家として危機に潰された、ということになりそうだ。トランプは、骨の髄まで「マス消費/マスメディア」の時代に育ったブーマー世代の一人であり、彼がその時代への回帰を夢見る50年代のように、なにかヤバいことがあっても、それはどこかに消し去ってしまい、なかったことにすればよい、と本気で考えてきていたようだ。全てが、ゴミのポイ捨てのようなものだが、それだけ50年代はまだ社会に余裕があったということなのだろう。

確かに、コロナウイルスの前までは、そうして実際にごまかせた。都合の悪いことは誰かに押し付けて(つまり、ババを引かせて)逃げてしまえばよい。逃げ足の速さもビジネスの世界で生き抜くための要件の一つだ。閣僚人事における度重なる「クビ!」の宣告も、トランプがホストを務めたリアリティ・ショーの『アプレンティス』同様、ワナビーの列が並んでいれば問題なかった。使い捨て人事を強行しても、代わりはいくらでもいるのだ。

だが、コロナウイルスはそうではなかった。コロナからは逃げられなかった。アメリカで亡くなった人たちは、見えないところにポイ捨てすることなどできない。その意味では、3月ならまだ言い逃れることもできた。いや、確かに見通しが甘かった、だが、大丈夫、これからは総力を挙げてなんとかする!俺は「戦時大統領」だから!と、宣言したとおりに、まともに公衆衛生対策に尽力すればよかった。

ところがそれにはまったく真剣に取り組まず、むしろ経済活動をリオープンすることを優先し、それを4月にレッド・ステイトの人びとに行わせた結果、6月に入ってから、レッド・ステイトの感染爆発という事態を、多くの専門家が予想したとおり、引き起こした。先述のように、フロリダ、テキサス、アリゾナを中心に感染者は増大している。

それに伴い、それらレッド・ステイトでのトランプ支持率も下がり続け、直近では、下手をすると、テキサスも「トスアップ(=コイン投げのように勝率が五分五分の接戦状態)」になりかねないところまできた。地盤がテキサスだったリンドン・B・ジョンソンとウォーターゲート事件への反動で勝利したジミー・カーターを除けば、テキサスは20世紀後半からこのかた共和党の牙城だったわけだが、そこにすらヒビが入ろうとしている。

共和党支持者たちによる「トランプ非難の広告ビデオ」

実のところこうした逆風に備えて、もともとトランプ陣営は、3ヶ月ぶりに開催した6月20日のタルサ・ラリーで、華々しく選挙キャンペーンをリブートしようと目論んでいた。だがK-POPファンとTikTokユーザーとによる嫌がらせ的なオンライン登録の結果、当日は、6000人程度の支持者しか集まらず、お世辞にも成功したとは言い難い結果であった。しかも後日、タルサ・ラリーの参加者からコロナウイルスの感染者が多数報告され、開催地となったオクラホマ州も、コロナウイルス災禍に苛まされる事態となった。

それでも、このタルサでの失敗を巻き返さんとばかりに、今度は7月4日の独立記念日に、トランプ陣営はラシュモア山国立記念公園で、戦闘機ショーも含む華々しい記念式典を開催した。トランプはその席で、民主党を“left-wing cultural revolution”として非難した。この言葉は字義通りには「左翼による文化革命」だが、英語では“The Cultural Revolution”は、毛沢東時代の中国の「文化大革命」を意味する。当然、スピーチにおける語感としては、この文化大革命の想起も考えてのことなのだろう。

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文化大革命の頃の中国は、密告が横行し大粛清が行われた社会的に不穏な時代だった。その足音が民主党から聞こえてくる、というのがトランプの伝えようとしたニュアンスのようだ。バイデン率いる民主党をそのようにラベリングし、文化大革命を行っているレフト(=左派)と非難する。そうやって、支援者たちの「中国嫌い」の気分に応え、愛国的な共和党支持者を自陣に連れ戻そうとする。そのためにラシュモア上空で戦闘機も飛ばす。ポートランドなどの民主党所属の市長の治める「ブルー・シティ」への介入も、こうした発言の延長線上にある。ポートランドはアメリカ国内でも最もリベラルな都市のひとつであり、「アンティファ」──反ファシズム運動の総称で極左とみられている──の拠点と考えられているからだ。

だが少し考えれば気がつくように、ポートランドへのDHS介入の様子は、そのまま、昨年来の香港と中国の関係を思い出させる。他国における自由の弾圧には非難の声明を出しておきながら、国内ではその非難した内容と同様の介入を行っている。少なくとも、自由化を求める香港の運動を制圧しようとする中国政府を非難したホワイトハウスの姿勢とは全く整合性がない。

実際、現在も連邦議会では、6月のファイエット・スクエア事件の際に市民排除の命令を出したウィリアム・バー司法長官に対する公聴会が開かれているのだが、あの一件でこんなに叩かれるのなら、徹底的にブルー・ステイトやブルー・シティのBLM運動を全て鎮圧して回ってやる、白い生地に黒いシミがついただけで四の五の言われるくらいなら、いっそのこと、真っ黒に染めてしまえば最初のシミなど気にならない、とでもいうような衝動的な判断が、DHS部隊の派遣には働いているようにすら思えてくる。

もともと、過去20年余りの間の共和党の選挙キャンペーンは、人びとの間に恐怖や怒りといった強い感情を生じさせるような扇情的なメッセージを放つことで組み立てられてきた。その筆頭が、この2月の一般教書演説の席でトランプ大統領から大統領自由勲章を授与されたラッシュ・リンボーであり、彼のトークラジオの流儀は、タッカー・カールソンらがコメンテーターを務めるFox News、あるいはBreitbart Newsのようなウェブメディアにも伝播し今に至っている。

なにより、そうした共和党の性格がよく現れていると思えるのが、前回も少し触れたリンカーン・プロジェクトが用意するトランプ非難の広告ビデオだ。NeverTrumperの中核で、今回の大統領戦ではバイデン支持を早々に表明した共和党員の組織であるリンカーン・プロジェクトだが、彼らのつくる映像におけるトランプ非難は実にえげつなく、さすがにここまでのものは民主党では作れないと思わせるものが続いている。しかも、7月中旬以降、ほぼ毎日のように新しいトランプ非難の映像が公開されており、その執拗さに驚かされる。むしろ、製作スタッフが毎日ノリノリで非難/罵倒のアイデアを出し合っている姿が目に浮かんでしまうほどだ。そうした「怒りへの信頼」が共和党の選挙手法の根底にある。

トランプは戦々恐々としているはず

そんな中、7月15日、トランプ陣営は、タルサ・ラリーの際に、事前に「100万人も参加登録があったぜ!」と豪語していたキャンペーン・マネージャーのブラッド・パスカルを降格させた。もっとも、選挙直前でのスタッフ総入れ替えは、トランプ陣営にとって日常茶飯事のことであり、いまさら騒ぐことでもない。前回の2016年大統領選でも、8月に入ってスティーブ・バノンが抜擢されていた。

そもそもトランプ陣営の真のキャンペーン・マネージャーはトランプ本人であり、ツイートの連投──1日に200ツイートも投じることもあるのはさすがに尋常ではない──でソーシャルメディアを起点に炎上物件をジャーナリストに拾わせている点では、彼自身がプレスセクレタリーも兼ねているのは周知の事実。最近では、ローズガーデンでの発表など、ホワイトハウス番の記者を前にした公的な発言の機会ですら、途中からキャンペーンの場に変え、バイデンやオバマの批判、さらには中傷を繰り返している。

したがって、今回のキャンペーン・スタッフの刷新にしても、とりたてて騒ぐ必要はない。むしろ、一見すると、キャンペーン戦略に混乱が生じているように見せるのが、トランプの常套手段だ。そうして、相手がトランプ陣営の出方を見定めようと身構えているうちに電光石火の奇襲をかける。つまり、混乱があるようにみえても、それはあくまでも相手に向けた煙幕に過ぎない。そのことさえ気にかけておけばよい。その点で、ヒラリー敗退の経験値のある今回のバイデン陣営は冷静だ。

実のところ、トランプは、内心、戦々恐々としているのではないか。さすがに共和党の足並みも乱れ始めている。そのような兆候が増えている。ラファイエット・スクエアの一件で、軍の将校たちから批判が出ていたことはすでに記した。ウォール街のエコノミスト/アナリストも、バイデンの勝利を前提に、経済予測や市場予測を行い始めているが、それはむしろ、勝ち馬に乗った未来シナリオの策定なのだ。そして、期待が期待を呼び込むのが経済界、とりわけ金融界の基本特性である。

このような足並みの乱れの中で最も多くの人びとを驚かせたのが、トランプが指名した2名の判事──ゴーサッチとカバノー──によって、保守派が多数派を占める最高裁となったはずのジョン・ロバーツ最高裁から、トランプのホワイトハウスの命令を覆すようなものが続いたことだ。LGBTQの労働の自由を6対3で認める一方、DACA撤廃は5対4で否定した。特に前者については、トランプが指名したゴーサッチも賛成にまわっていた。

集合写真に収まる最高裁判事たち。前列左からスティーブン・ブライヤー(リベラル)、クラレンス・トーマス(保守派)、ジョン・ロバーツ(保守派)、ルース・ベイダー・ギンズバーグ(リベラル)、サミュエル・アリート(保守派)。後列左からニール・ゴーサッチ(保守派)、ソニア・ソトマイヨール(リベラル)、エレナ・カガン(リベラル)、ブレット・カバノー(保守派)。THE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES

このように6月のラファイエット・スクエア騒動以降、トランプ陣営は、クリスチャン、軍関係者/退役軍人、経済界、そして法曹界といった、社会の各方面から、疑問視され始めている。

さらにこの傾向に追い打ちをかけるのが、暴露本の出版だ

まずは冒頭でも触れたジョン・ボルトンの“The Room Where It Happened: A White House Memoir”。ホワイトハウスは、機密情報漏洩の阻止という理由で、司法省を通じて連邦裁判所にこの本の出版の差止めを求めていたのものの、判事はそれを認めず、結局、ボルトン本は出版された。

同書によれば、ボルトンの最も危惧することはトランプが再選されることなのだという。1期目と違って、2期目は再選に差し障るという制約がなくなるため、今まで以上に衝動的にやりたいことを行うに決まっており、それはアメリカという国の破壊につながると考えている。つまりは、一種の内部告発だ。長年に亘り保守派として、安全保障や外交について取り組んできた愛国者のボルトンなだけに、彼がアメリカ存亡の危機というのは無視できない。

このボルトン本に続き出版されたのが、姪のメアリー・トランプによる“Too Much and Never Enough: How My Family Created the World’s Most Dangerous Man”。不動産王時代のトランプの脱税スキームを明らかにしているという触れ込みだ。また、トランプ一族の内部におけるいわゆる「血の確執」がテーマということで、こちらも出版されると告知された時点で広く注目を集めた。

このように、かたや国家安全保障に対するトランプの基本姿勢の暴露、かたや一族という身内におけるトランプの行動原理の開示であり、コロナウイルスの災禍が全く収まりそうに見えない今というタイミングで、しかも大統領選投票日を数ヶ月後に控えたタイミングで、トランプの行動と内面の両方を描く本が、彼の関係者から出版されたというのは、興味深い。

ここのところ、アメリカの報道ではよく耳にするようになったのだが、再選を逃し1期で終わった20世紀後半の大統領としては、ジミー・カーターとジョージ・H・W・ブッシュの2人がいる。今のトランプの失速は、このカーターや父ブッシュの時に似ているというのだ。いずれも、選挙の前に想定外の大きな事件があった。カーターには、1979年のイラン・アメリカ大使館事件──ベン・アフレックが監督・主演した映画『アルゴ』(2012年)で扱われた事件──が、父ブッシュには1990年の湾岸戦争の後で明らかになったアメリカ経済の低迷があった。そして、トランプにはコロナウイルス災禍が襲った、という理解だ。

リアリティ・ショー・スターのホストが、想定外の「リアリティ」に翻弄されているのは皮肉なものだが、実際、歯車は狂い始めている。

だが、それでも安心できないのが2016年の大統領選から民主党が学んだ教訓だ。トランプは現職大統領であり、ロムニーがトランプの勝利を確信しているのもまさに現職大統領の強みからなのだ。もっとも、それはロムニー自身が2012年大統領戦で現職大統領のバラク・オバマに敗北した経験からくるもので、その分、割り引いて考えないといけないのかもしれない。それでもロムニーの見るところ、支持率調査でどれだけ高い評価を得ようとも、大事なのは、実際に人びとが投票するかどうかにかかっており、その点で若者を中心に有権者は気まぐれであることに注意しなければならないのだという。

だが、この話を聞くと、前回触れたようにバイデン陣営がバーニー・サンダースと共同協議を行い、プログレッシグの取り込みに積極的になっていることも理解できる。そうして若い有権者の支持を取り付けようとしているのだ。

気がつけば、大統領選本戦の開始を告げるレイバーデイ(9月の第1月曜日、今年は9月7日)まで1ヶ月あまり。投票日までも100日を切った。最終コーナーの目前である。

CLIFF HAWKINS/GETTY IMAGES