恐竜がテーマの『映画ドラえもん のび太の新恐竜』
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 国民的人気を誇る「ドラえもん」の劇場版最新作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(8月7日公開)の今井一暁監督が、作品づくりのために大切にしていることを語った。

 「ドラえもん」の漫画連載開始から50年、『映画ドラえもん』シリーズも40作目を迎え、記念すべき作品となる本作は、双子の恐竜キューとミューと出会ったのび太と仲間たちの大冒険を描く。シリーズ最高興行収入53.7億円のヒットを記録した『映画ドラえもん のび太の宝島』(2018)の今井監督と、脚本の川村元気が再びタッグを組んだ。

 今井監督は『のび太の宝島』の公開初日に、川村や制作陣から「2020年は恐竜をテーマに」と本作のオファーを受けたそうで「数字ではなく、内容を評価していただいたのであればとてもうれしい」と振り返る。

 そんな監督は、『映画ドラえもん』の物語を「子ども向け」にしないとキッパリ。「子どもは難しい話でもちゃんと咀嚼して、大人になっても覚えているんです。だから、『子どもはわからないんじゃないか?』と子どもに寄せいくと、逆に子どもに置いて行かれる」とあえて「子ども向け」を意識しない理由を明かす。

 いざ制作が始まると、川村のなかである程度物語の枠組みが決まっていて、今井監督が映像的なアイデアを入れていった『のび太の宝島』のときと違い、「恐竜」というテーマ以外、ゼロからのスタートだった本作。川村には双子のキューとミューのイメージがあったようだが「どういうストーリーで何を表現するのか」と2人は議論を重ねた。「川村さん、できあがったシナリオを『映像になるのを楽しみに待つだけだから』とニヤニヤしながら渡してきて。映像化するのは、プレッシャーが大きかったですね(笑)」

 恐竜がテーマだったシリーズ1作目となる『ドラえもん のび太の恐竜』(1980)、『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』(2006)では、恐竜のピー助とのび太の絆が描かれたが、今作は卵からかえった恐竜がピー助ではなく、キューとミュー。まったく別の物語が展開するが、「『のび太の恐竜』を踏まえつつ、新しい恐竜の学説を盛り込んで、今、恐竜の物語をつむぐとしたら、どんな作品になるのか」と構成を練ったとのこと。

 恐竜を描くうえで一番の悩みどころだったのは「人それぞれ持つ恐竜のイメージを超える」という点だ。本編では、3Dで描かれたリアルで迫力のある恐竜たちが登場。「いままで通りセルアニメ、手書きアニメだと存在感が足りない。生きた恐竜をまのあたりにしたのび太たちの驚きを子どもたちにも共有してもらうため、実験的なチャレンジでしたが3Dの恐竜にしました」と明かす。

 今井監督にとって「ドラえもん」の魅力とは、「ドラえもん、のび太、スネ夫、しずか、ジャイアンの5人のキャラクターがいること。彼らさえいてくれて、性格と関係性が変わらないでいてくれれば『ドラえもん』になる。時代が変わって、徐々に新しくなりながら、ちゃんと『ドラえもん』になってくれる」。そして、「ドラえもんの秘密道具でいろいろなことができる」ことだという。「『ドラえもん』は本当に懐が深い。この時代に大冒険を描くのは難しいことですが、ドラえもんだとできる。すごくありがたい存在で、子どもにとってはすごい大事な、ずっと続いてほしい作品」とドラえもん愛を熱弁していた。(編集部・梅山富美子)