工事現場に至る県道の路肩は大きく崩壊していた

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◆7月の豪雨災害で道が寸断、集落が孤立
 筆者はリニア南アルプストンネルの長野県側の起点、下伊那郡大鹿村に住んでいる。現在、静岡県側での工事開始をめぐって、静岡県知事とJR東海が対立している。そこで指摘されている「工事現場の危険性」や「工事の遅れ」は、長野県側でも進行している。

 今年7月に入ってからの豪雨で、大鹿村内で“最奥”に当たる釜沢集落は、集落に続く道路で地滑りが起きた。そのため7月17日まで9世帯15人に避難勧告が出て、住民は4日間孤立した。この集落の下方に南アルプストンネルの掘削起点が2か所あり、そこに至る道路も不通になった。

 釜沢集落への道路は17日から住民と関係車両のみ通行が可能になり、筆者は21日に自転車で現場に入った。

 地滑り個所は現在、地割れしたアスファルトを撤去し、道路をならして仮復旧している。電柱は倒れ、電気は通じているがライフラインは極めて不安定な状況だ。

◆リニア工事につきまとう「地滑り」のリスク

 車から自転車に乗り換えた個所から、水平方向に集落に続く道と、リニアの工事現場に下りていく道に二股に分かれている。この二つの道をまたがる地面がずり落ちた。畑で農作業中だった女性・Aさんはこう語る。

「集落の川向うの斜面も落ちて、崩壊音がすごかった。1週間集落の外には出ていないけど、いつも覚悟はできていた。米と味噌があればなんとかなる。郵便は、通行止め個所の手前に郵便配達の人が置いて行ったのを、集落の誰かが持ってきてくれた」

「孤立」とはいえ、地域での自給自足的な生活を落ち着いて続けていた。大鹿村内の集落の多くは地滑り地帯の上に発達していて、地滑りはリニア工事のリスク要因の一つだ。

「事業者は『関係車両を今日は2〜3台だけ通させてくれ』と言う。これまでも、なし崩しに増えて行って結局は何往復もすることになった。こんな状況で工事を再開されても困る」(Aさん)

 警戒の矛先はむしろリニア工事だ。「下の道」が通行止めのため、「関係車両」が集落内を通って現場に向かうことになった。

「下の道は県道で、行政による災害復旧では手続きの関係で復旧までに半年かかる。それだと遅れるからJRと鹿島建設で復旧するというけれど、まだ地滑りは続いている。どうなるかわからない」(同)

 上下に家々が立ち並ぶ集落を下り、下の県道の通行止め箇所を見に行くと、ショベルカーでの復旧工事が続いていた。路肩が大幅に崩壊し、石垣が道路に崩れ落ちている。

◆非常口、変電施設、橋梁……すべてが遅れて見通し立たず
 
 集落の下を流れる川の上流にある工事現場を見に行った。現場までの道路は現在、JR東海の工事専用道路になっている。そのため、山道をたどって川の対岸からトンネル掘削地を眺めた。豪雨で流されたのだろうか、工事現場のフェンスがなくなっていて現場が丸見えだった。ほかにもフェンスが倒壊した場所や、フェンス下の地面が崩落した箇所が対岸から見えた。

 被災は見たところフェンス周辺だけに見えるので、掘削工事は再開できるかもしれない。しかし、いくらJRが頑張っても地滑りを止めることはできないし、重機を自由に持ち込める状況ではない。現実は厳しい。

 大鹿村内には4か所のリニア本線トンネルに通じる斜坑掘削地があり、完成後には非常口となる。JR東海は2014年10月の認可後、2016年11月に大鹿村内で起工式を行い、今回見に行った「除山非常口」を2017年4月に、同年7月から「小渋川非常口」を掘削しはじめた。

 釜沢地区にはもう1か所「釜沢非常口」があり、こちらは2020年3月から、そして伊那山地トンネルの「青木非常口」は2020年7月17日に掘削を開始している。